北野勇作さんの【ほぼ百字小説】その2

【ほぼ百字小説】 https://togetter.com/li/898026 が1000篇を超えましたので、その2に移行しました。 『じわじわ気になる(ほぼ)100字の小説』2018年9月1日発売です。 https://www.amazon.co.jp/dp/4909689060/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_hA-HBbC861M8J 続きを読む
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北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

いつからか、日記を書くように小説を書きたいと思うようになって、それは別に私小説みたいにということではなく(いやまあそれでもいいのだが)、そういうことと関係しているのかもしれないのだが、なんかおもしろいなあと思う。路地みたいなものが書きたい。路地を舞台にした、とかではなく。

2017-08-04 18:22:50
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

そういうのは、たぶん本にも金にもならんと思うけど、どうせ書きたいものしか書けないだろうしなあ。

2017-08-04 18:25:23
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1023) 妻と娘は今日からまた登山。いつも二人で行く。お守りに蛙のフィギュアを渡す。なんで? と娘。無事にカエル。そう言うと娘は大笑い。帰るって、今から帰るところなのに。しいっ、と妻。それでも蛙は持って行った。

2017-08-04 19:05:57
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1024) 幸せな結末を与えてはやれなかった亀が、人形と役者に置き換えられて旅に出る。結末こそ変わらないが、いろんな場所で繰り返し再生されるそれは、亀にとってもきっと幸せな旅になるだろう。少し救われた気分になる。

2017-08-06 00:09:37
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1025) 路地の奥の二階で不気味で綺麗な展示を見てから、そのすぐ近くの小屋で長い旅に出る一座を見送り、そこで彼らの旅の最終日の公演がさっきの展示場所だと知って、この世はなんと奇妙な双六かと感心しつつ賽を振った。

2017-08-06 01:09:53
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1026) いけないとはわかっていたのについ目を合わせてしまい、後をついてきたからそのまま家まで連れ帰ることに。もう電源を見つけて勝手に充電を始めているし、置いてやることにするかな。最近はこんなロボットが増えた。

2017-08-06 22:53:30
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1027) 妻と娘はしばらく留守。で、妻と出会ってもいない頃によく聴いた曲を再生中。そうだ、ここでひっくり返していたなあ。今はひっくり返さないけど昔はひっくり返していたよ、としつこく思い続けるのも含めての再生か。

2017-08-07 23:09:58
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1028) すたとんてんとたんととんとん、すたとんてんとたんととんとん。雨だれがリズムを刻んでいて、トタンというのは、この音からきてるのかな、などと考えながら、雨の日にだけ現れる小さなものたちの踊りを眺めている。

2017-08-08 23:06:32
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1029) ベランダに出ると亀が盥から飛び出してくる。真夏の亀はいつも腹を減らしている。植木に水をやるときも洗濯物を干すときも、亀がまとわりついてくる。煮干しを撒いて、その間に用事を済ませる。まるで三枚のお札だ。

2017-08-12 00:30:50
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1030) メールが届く。妻と娘が山のてっぺんで笑っている写真が添付されている。メールが届く。妻と娘が水の底で笑っている写真が添付されている。メールが届く。妻と娘が昨夜見た夢の中で笑っている写真が添付されている。

2017-08-12 00:31:09
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1031) 出口はあいかわらず見つからないが、出口を求めてじたばたする方法がいくつか見つかったことにほっとしてしまうのは、本当の目的は脱出ではなくじたばたすることなのだ、と頭のどこかで知っているからなのだろうな。

2017-08-12 00:31:25
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1032) 長いトンネルを抜けた先にある空中庭園は、今もちゃんと空中にあった。あれはいったいどういう原理で浮いてるんだっけ。たしか前に聞いたのだが忘れてしまった。なんだか地に足のついてないような理屈だったと思う。

2017-08-12 00:31:57
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

ということで、現在は1032でした。ぎょうさん書いたなあ。とりあえず100×1000か100×1001で一冊にしたいなあ。おもしろいと思うんだけどなあ。

2017-08-12 00:34:24
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1033) いい気持ちで酔っ払っていたら、道の向こうに信じられないほど大きな月が出ていて、これは狸からのメッセージに違いないと道端の看板などにタを抜ける文章を探したが見つけることはできず、少し残念少しほっとする。

2017-08-12 23:57:04
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1034) 月も星もない夜で、対岸からでも見えるだろう。海に突き出た先の先、今夜はそこで火を灯す。線香だけでは寂しかろ。海を隔てた彼方の岸から、迷わず渡ってこれるよう。これがお盆のハイライト。線香花火でお出迎え。

2017-08-13 21:49:55
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1035) 秘密を教えてあげよう。内でも外でもないところがあるだろう。ほら、縁が張り出してるところ。つまり、縁側だね。縁側を通れば別の縁側に行けるんだよ。縁側と縁側はつながってる。そうやってどこへでも行けるんだ。

2017-08-14 23:12:54
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1036) 白い行列が通過していく。足を引き摺る音がするから、足はあるらしい。年にいちど、数時間で終わることもあれば、ひと晩中続くことも。前を通られるくらいならいいが、突き当りの家みたいに入ってこられるのはなあ。

2017-08-15 22:18:32
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1037) そのかめは自分がほんもののカメではないことを知っている。小説として記述されたそのかめが、形を変えて旅に出る。そのかめは旅先のいろんな場所で再生される。それは小説の最後でそのかめがして欲しかったことだ。

2017-08-17 00:01:05
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1038) アスファルトの上に赤や青や黄色で複雑な図形が描かれている。ガスや水道の工事をするための目印だと思っていたのだが、その数メートルほどの範囲だけ。このあいだの夜通りかかったら、いくつかの図形が光っていた。

2017-08-17 21:50:30
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

@yuusakukitano かめもそうなのですが、不思議な情緒性――懐かしいような怪しいような、切ないような怖いような――が、北野さんだなあと。

2017-08-17 22:06:20
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@ShindyMonkey まあ今起きていることそのまんま、というか、ようするに私小説ですからね。形を変えたあのかめを乗せた車が北海道に着いた、ということを今さっきツイッターで知りました。

2017-08-17 22:13:44
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1039) 拾ったり貰ったりした骨を地面に埋め、忘れた頃に掘り出して、はてこれはいったい何の骨だろう、と組み立てる。まあやっていることはアホな犬なのだが、埋めた場所を忘れない程度にはカシコな犬である必要があるな。

2017-08-18 20:59:55
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

【ほぼ百字小説】(1040) 五人そろって何の役にも立たないありもしないお話を立ち上げる。やれるとは思えないがやるしかないのだ。普段はダメな人達だが、こんなときは意外に頼りになるのは不思議。しかしまあ役に立たないことには違いない。

2017-08-20 00:16:16
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