ゴールデンカモイ #5

金色の狼人間に返信できるナチス残党のゾルダーゲン大佐 4:https://togetter.com/li/1132318 6:https://togetter.com/li/1132856
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劉度 @arther456

やがて、それが姿を現した。岩のように頑強な肉体。純金の輝きを思わせる黄色の毛皮。ナイフよりも太く鋭い牙と爪。心臓を縮こませる唸り声。「ネオヒグマ……!」神威がその名を呟いた。ネオホッカイドウの生態系の頂点に立つ、最強最悪の魔獣の名前を。23

2017-07-22 22:09:11
劉度 @arther456

弾幕が止んだ。全長7mを超す巨大生物は、ロシアンマフィアをも驚かせていた。「おい、何だあれ……」「クマか?」「デカすぎるだろ……」ロシア本土からやってきたマフィアたちは、ネオヒグマを知らない。ただ、巨人だけは足を止め、クマに向かって静かに身構えていた。24

2017-07-22 22:12:08
劉度 @arther456

ネオヒグマは牙を剥き出し、周りを威嚇している。不知火は銃を構えるが、それを杉坂が止めさせた。「やめとけ。そんな銃じゃ効かねえ」猟師である彼には、ネオヒグマの恐ろしさをよく知っている。「音を立てないで。ゆっくり下が……」火薬の破裂音が響き渡った。マフィアの一人が撃ったのだ。25

2017-07-22 22:15:04
劉度 @arther456

「やめてっ!」神威が叫んだが、もう遅かった。ネオヒグマは大きく吠え、ロシアンマフィアの群れに飛び込んだ。その腕の一振りで、立木もろとも4人が血煙に変わった。「やべえ!」「撃て、撃て!」泡を食ったマフィアたちが銃を撃ちまくるが、弾は毛皮に弾き返される。26

2017-07-22 22:18:01
劉度 @arther456

ネオヒグマが腕を振り降ろし、真下にいた3人が消えた。そこに巨人が飛びかかった。丸太のような腕から繰り出されたストレートが、ネオヒグマの頬にめり込んだ。だが、ネオヒグマは怯まない。巨人の腕を咥え、人形のように軽々と振り回し、そして投げ捨てた。27

2017-07-22 22:21:09
劉度 @arther456

「くそっ、さっさと逃げるぞ!」自分が勝てなかった巨人が圧倒される様子に呆然としていた不知火だったが、杉坂の一言で我に返った。ネオヒグマがマフィアに気を取られている今が逃げるチャンスだ。「すみません。行きましょう」神威とやましろを守りながら、不知火たちはその場から逃げ出した。28

2017-07-22 22:24:13
劉度 @arther456

ガングートは眼前にそびえる火山を睨み上げていた。アトラソフ島。ここに『アメリアの棺』がある。何としてでも、あれを先に上陸した陸軍よりも早く見つけ出さなければいけない。「隊長。沿岸警備隊より連絡。占守、国後、択捉の配備が完了したとのことです」「わかった」30

2017-07-22 22:27:06
劉度 @arther456

ここにいるのはガングートだけではない。幌筵泊地に連れて来たロシア極東軍、さらにネオホッカイドウ共和国の沿岸警備隊を動員し、蟻一匹通さない哨戒網を作り上げている。仮に陸軍が『アメリアの棺』を手に入れても、島から出ることはできないだろう。31

2017-07-22 22:30:12
劉度 @arther456

「日本軍の様子はどうだ?」「山の中に逃げました」「山岳戦になるか……」部隊編成を考えていると、前線が急にざわついた。「どうした?」無線で呼びかけると、困惑した返事が帰ってきた。《はい、あの、子供が走ってくるんですけど……?》「なに?」ガングートは山の方を見た。32

2017-07-22 22:33:22
劉度 @arther456

双眼鏡で見てみると、確かに、箱を担いだ2人の子供がこちらに向かって走ってくる。「何だあれは?」すると、別の部隊から無線が入った。《大変っす!深海棲艦っしゅ!》沿岸警備隊の艦娘からだ。「何っ!?どこにいる!」《その島っす!そっちに向かってるっす!》33

2017-07-22 22:36:09
劉度 @arther456

ガングートはもう一度双眼鏡を覗いた。子供が2人、こちらに走ってくる。その他に動くものはない。「……砲兵隊に通達」「はい?」「前方の子供を砲撃しろ!あれは深海棲艦だ!」「りょ、了解!」正気を疑う指示だが、命令は命令である。すぐに砲撃が始まった。走る子供の周りで砲弾が爆発する。34

2017-07-22 22:39:03
劉度 @arther456

子供たちは泡を食ったようにその場でぐるぐる回った後、山に向かって逃げ出した。途中、砲撃で吹き飛んだ岩の破片が頭に命中したが、気にもとめていなかった。やはり人間ではない。「深海棲艦が潜んでいたとは……」この島は幌筵泊地の目の前だ。放置しておくわけにはいかない。35

2017-07-22 22:42:02
劉度 @arther456

「極東軍本隊はこのまま前進。日本軍を制圧し、『棺』を確保しろ。深海棲艦を見つけたら連絡せよ。そちらは、我々が相手をする」命令は各所に伝わり、軍勢が動き出す。ガングートは続けて部下に命令を下した。「私の艤装を準備しろ」36

2017-07-22 22:45:03
劉度 @arther456

少女はロケット砲を背負って、潜水艦のハッチから飛び出した。岸に目を凝らし、砲口を向ける。間もなく木立の間から黒いコートを着た巨人が姿を現した。そして、それを追って信じられないぐらい巨大なネオヒグマが、木々をなぎ倒しながら現れた。すぐさま少女は引き金を引く。38

2017-07-22 22:48:00
劉度 @arther456

ロケット弾が発射され、ネオヒグマの顔面で爆発を起こした。流石のネオヒグマもこれには怯む。その隙に巨人はジャンプし、常人では決して届かない走り幅跳びを決め、潜水艦の甲板に着地した。敵を逃したネオヒグマは、恨めしげに彼女たちを見ていたが、やがて森へ戻っていった。39

2017-07-22 22:51:02
劉度 @arther456

「危なかったあ……」少女は安堵のため息をついた。ネオヒグマの噂は知っていたが、あれほどの怪物だとは思わなかった。「だいじょうぶー、アレクセイ?」巨人のコートは爪と牙でズタズタになり、その下の肉体も傷だらけだ。それでも、動くのに支障はないようだ。40

2017-07-22 22:54:07
劉度 @arther456

爆発音が聞こえてきた。島の南の方からだ。「あら。ドンパチ始まっちゃったかあ……」武装勢力が次々と上陸し、雇ったマフィアも全滅。埋蔵金探しはもう無理だろう。「うーん……勿体無いけど、逃げるしか無いか」少女は巨人と共に、残念そうに潜水艦の中へと戻っていった。41

2017-07-22 22:57:04
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#5おわり#6へ続く

2017-07-22 22:58:03