ゴールデンカモイ #5

金色の狼人間に返信できるナチス残党のゾルダーゲン大佐 4:https://togetter.com/li/1132318 6:https://togetter.com/li/1132856
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-07-22 21:01:22
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#5

2017-07-22 21:02:06
劉度 @arther456

「ほっぽちゃん、よりにもよってここにいましたか……」目的地の洞穴から這い出てきた北方棲姫を見て、不知火は頭を抱えたくなった。どうしてこの深海棲艦は、騒動の真っ只中にひょっこり顔を出してくるのだろうか。「ぬい、どうしてここに?」「仕事です」「えらいっ」「はあ……」1

2017-07-22 21:03:08
劉度 @arther456

「不知火さん……」うめき声。振り返ると、神威が杉坂にもたれかかっていた。「どうしました?」「それです、その箱、いえ、棺です……!」「……大当たりですか」どうやら神威を呼んでいた声の主は、この箱の中にいるらしい。「ほっぽちゃん、中に何が入ってました?」「開かないの」「ぬい……」2

2017-07-22 21:06:11
劉度 @arther456

「なら、蔵王に持って帰って調査を」「おい、みんな伏せろ」そう言ったのは杉坂だった。坂の下に目を向けている。「ロシアンマフィアだ。10人以上はいる」かなりの数だ。洞窟の中に身を隠す。茂みの中から坂の下の様子を伺うと、スコップやつるはしを持ったロシア人たちがうろついていた。3

2017-07-22 21:09:09
劉度 @arther456

「バレてる?」「いいえ」気付いているなら、銃を取り出すはずだ。「こちらに向かってくるようなら、お願いします」拳銃を抜いた不知火は、杉坂を見た。杉坂は無言で頷き、ライフルの安全装置を外した。その時、眼下のマフィアたちがどよめいた。彼らの前に、2人の男が姿を現したのだ。4

2017-07-22 21:12:04
劉度 @arther456

「誰だあいつら?」軍人のようだが、日本軍ではない。不知火は、彼らの服が鎮守府にいるビスマルクのものに似ていることに気付いた。ロシアンマフィアと制服男たちは何か言い合っているようだったが、そのうち、マフィアの内の1人が、懐から銃を取り出して撃った。5

2017-07-22 21:15:05
劉度 @arther456

その瞬間、制服姿の男たちが動いた。弾丸を避け、一瞬でマフィアの群れに飛び込んだ彼らは、その爪を振るって周囲の敵を斬り裂いた。そう、爪だ。制服男たちの手が、獰猛な鉤爪に変化していた。「あいつら……!?」「とにかく、ここを離れましょう。気付かれる前に」6

2017-07-22 21:18:03
劉度 @arther456

不知火たちは洞窟を出て、坂を駆け下りる。「待ちたまえ」その前に、左目を眼帯で隠した白人が立ちはだかった。さっきの男たちと同じ制服だ。杉坂は問答無用で銃を撃つ。男は跳躍、杉坂の頭を軽々と飛び越え、背後から爪を振り下ろす!杉坂は振り返り、銃剣で爪を受け止めた。7

2017-07-22 21:21:09
劉度 @arther456

「いきなり撃ってくるとは、野蛮なものだ」杉坂の目の前で、男の顔が変貌する。鼻と口が伸び、金色の体毛が生え、隻眼の狼人間となった。狼人間は杉坂から一旦離れる。「人狼!?」「ニホンワーウルフか!?」魔法が再発見された現代において、人狼のような獣人は決して架空の産物ではない8

2017-07-22 21:24:15
劉度 @arther456

「いや、ニホンワーウルフではないよ。ドイツ生まれのドイツ育ちだ」人狼は姿勢を低くし、獰猛な構えを取った。「つまり――本場のヴァラヴォルフだ。理解したまえ」人狼は再度突撃!不知火の撃った拳銃を避け、杉坂に迫る!杉坂はライフルについた銃剣で、人狼に鋭い突きを繰り出す!9

2017-07-22 21:27:08
劉度 @arther456

人狼は銃剣を避け、刃の横腹に掌底を繰り出した。鈍い金属音が響き、銃剣が折れた。杉坂はそれにも構わず、今度はライフルの銃床を人狼の顎めがけ振り上げる!人狼はそれを軽々と避け、杉坂の横を駆け抜けた。そして、後ろで身構えていた神威の喉に鉤爪を突きつけた。10

2017-07-22 21:30:21
劉度 @arther456

「きゃっ!?」「では、大人しくしてもらおうか」「てめえ!卑怯だぞ!」杉坂が吠え、不知火が狙いを定めるが、人質をとられては身動きできない。「生憎、これはピクニックではないのだよ」人狼は神威の喉に爪を当てたまま、北方棲姫と護衛棲姫が持っている箱に目を向けた。11

2017-07-22 21:33:20
劉度 @arther456

「さて、お嬢さん。それで、その箱の中には何が入っているのかな?」人狼は北方棲姫に聞いた。「わかんない!」「開かない!」北方棲姫と護衛棲姫が交互に答える。「おっちゃん開け方知ってる?」「開けて!お宝!」「開かないのか。……いや、おっちゃんもわからんなあ」12

2017-07-22 21:36:08
劉度 @arther456

不知火と杉坂は人狼に銃を向けたまま、挟み撃ちにしようと動く。「それは困るな。フランク!シュタイナー!こっちに来い!」人狼が仲間を呼ぶと、その足元に何かが転がった。全身の骨を砕かれた2人の人狼の死体だった。「……何!?」初老の人狼が茂みに向かって身構える。13

2017-07-22 21:39:03
劉度 @arther456

続いて、茂みの中から、黒いトレンチコートを身に纏い、襟とフードで顔を隠した大男が姿を表した。「なっ……!?」不知火が、驚愕に目を見開いた。「どうした!?」杉坂が聞くが、返事はない。「貴様……!」一方、人狼は仲間の仇を睨みながら、腰に提げていた鞭を手に取った。14

2017-07-22 21:42:03
劉度 @arther456

「死ねぃっ!」ヒュンッ、と鋭い音を立て、鞭が黒コートの巨人の腕に巻きついた。すると、巨人の体が跳ね上がった。「インド象も一撃で殺す電撃鞭の威力、味わうがいい!」しかし巨人は電流に耐え、人狼へタックルを繰り出した!「何ィッ!?」隻眼に驚愕の色が浮かぶ。15

2017-07-22 21:45:03
劉度 @arther456

人狼は巨人の頭に手をつき、タックルを飛び越える。空中で上下逆さになりながら、腰の拳銃を抜き放ち発砲!全弾、巨人の背中に命中した。だが巨人はまったく意に介さずに振り返り、人狼に拳を放つ!人狼は身を捻ってこれを避ける。後ろにあった子供ほどの太さがある木が殴り折られた。16

2017-07-22 21:48:02
劉度 @arther456

「なんだあいつ、人間じゃねえ!」「ええ、人間ではありません」不知火はあの巨人と一度、トラック島の地下施設で戦ったことがあった。ライフル弾を意に介さず、五十鈴のトラックによる突撃を抑え、心臓にナイフが突き刺さっても平然と戦い続ける怪物だ。今の不知火たちに勝てる相手ではない。17

2017-07-22 21:51:03
劉度 @arther456

「ほっぽちゃん!お友だちと一緒に、幌筵まで急いで帰りなさい!」「えっ、ぬいはどうするの?」「船があるから、それで帰ります!」「ぽっ!いくよ、ごーちゃん!」「おー!」北方棲姫と護衛棲姫は、箱を掲げて海岸へと走り出した。「大丈夫なのか?」「平気です。下手な艦娘より頑丈ですから」18

2017-07-22 21:54:07
劉度 @arther456

「ウラー!」「サヴォーイ、サヴォーイ!」林の向こうからロシア語の雄叫びが響いてきた。ロシアンマフィアの第2陣だ。どうやら、あの巨人が連れてきたらしい。「っと、まずい!」杉坂と不知火は、神威たちを守りつつマフィアたちに応戦する。1人1人の練度はそれほどでもないが、数が多い。19

2017-07-22 21:57:05
劉度 @arther456

一方、人狼は跳躍して巨人の拳を避けながら、木の上に飛び乗った。「分が悪いか……!」人狼は木から木へと飛び移り、逃げていく。「おい、逃げんじゃねえよオッサン!?」杉坂が叫ぶが、それで戻ってくる訳がない。獲物を逃がした巨人は、続いて不知火たちの方へと向き直った。20

2017-07-22 22:00:24
劉度 @arther456

「来るか……しょうがねえ!」杉坂はライフルの弾倉を交換した。「お前ら!ここは俺が食い止める!先に逃げろ!」「待ってください、杉坂さん!」神威が叫んだ。「安心しろ、俺は不死身だ!」「違います!何か……来ます!」「あぁ!?」神威は坂の方に目を向けていた。杉坂もそちらを見た。21

2017-07-22 22:03:08
劉度 @arther456

山が動いていた。それは見間違いだったが、そう錯覚するほど巨大な影があった。影は木をへし折りながら、こちらへと近付いてくる。銃声など気にも留めていないようだった。ズン。影が近付くにつれ、地響きが始まった。まさか、足音なのか。杉坂はゴクリと唾を飲んだ。22

2017-07-22 22:06:09