ストレイトロード:ルート140(28周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、掌編という名の習作。 今回は1351~1400+おまけ。 終盤のリクエストコーナー以外は「さがしもの」がテーマになっています。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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今回の本編

Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車の鍵を隠されたと藍が憤っている。「絶対どこかに隠してあるはず。そこなんか怪しい」疑いの目が向く先は棚の最上段。少女の手では届かない。代わりに私が探してみたが、空き箱が並ぶだけだった。「あら、なかったの。残念」風の魔女は空気に触れたものを感知する。だが箱を開ける術までは持たない。

2017-06-02 18:51:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1351。空き箱。 大人がいると便利。

2017-06-02 18:51:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

応接間を飛び出した藍を追って外に出た。庭の片隅で発見した彼女は犬小屋の前に座り込み、休息中の大型犬と見つめ合っていた。「どうしました」「この子に一度席外してもらいたいの」犬小屋の中を怪しんでいるらしい。「でも餌で釣る作戦はなしよ」「飼い主の方にお願いしては」「それじゃ意味ないの」

2017-06-03 19:02:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1352。犬小屋。 おとなしい気質が逆に手強い、そんな場面もある。

2017-06-03 19:02:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

厳重な警備態勢に守られた展示物を持ち出すなど容易ではない。それを奪うと何者かが宣言した為に、私達は博物館の入口で足止めされた。「表がダメなら裏口から」諦めきれないのか藍が建物の裏へ回ろうとした。すぐ止めたが、怪しまれても結構と青い瞳が訴えた。「だって犯人はもう中よ。今止めなきゃ」

2017-06-04 19:27:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1353。裏口。 伝える順番の問題。

2017-06-04 19:27:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が訪問先でティーカップを割った。弁償で話がまとまり、代替品の調達は私に託された。「大きなピンクのバラが描いてあって」「念のため現物を確認させてください」割れた品を調べてから店に行くと、多種多様な花のカップが揃っていた。藍の大雑把な説明だけでは同じ絵柄を見つけられなかっただろう。

2017-06-05 18:54:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1354。絵柄。 よくあるモチーフほど代わりは多い。時に多過ぎる。

2017-06-05 18:54:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「この中に写っているかもしれないの」藍は使用人にアルバムを用意させ、端から調べ始めた。彼女の両親は各地への家族旅行の記録を電子媒体だけに留めず、写真としても残していたのだ。「面白がってないで手伝って」大量の写真を眺めていたら藍に睨まれた。その手の一枚には確かに彼女の面影があった。

2017-06-06 19:18:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1355。面影。 過去と現在を繋ぐもの。

2017-06-06 19:18:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

飼主の元から逃げたらしい犬に出会った。紐を引摺り気ままに歩く姿を見ていた藍が、ゆっくり近づき紐の先端を拾った。すると犬が怯えた様子で突然駆け出した。「どこ行くの!?」強い力に引っ張られた藍も走り出した。私も後を追おうとしたが、犬の名を呼びながら走ってくる飼主を発見して足を止めた。

2017-06-07 19:15:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1356。飼主。 大事な絆だけは手放さないで。

2017-06-07 19:15:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

交換条件としてある植物を指定された藍は、古い情報を頼りに自生地とされる山へ入った。世界の異変の後、物資不足の中で薬効目当てに採り尽くされ、今では希少な種類らしい。「あれでしょ?」藍は風に聞いたのか、一輪の花を難なく見つけた。だがそれは人が立ち入れない急斜面で私達を見下ろしていた。

2017-06-08 19:35:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1357。希少。 みんなが欲しがるとき、人は未来の取り分を忘れがちだ。

2017-06-08 19:35:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「見てください。みな無事でしたの」葡萄畑は怪物に食い荒らされたが、近くの蔵は襲撃を免れた。献上品を探す女主人と共に中を歩く。静寂の中に眠るワインの樽を見上げ、藍が呟いた。「来年はどうするの」窓の外には暴虐の痕跡しかない。だが女主人の表情は曇らない。「この子達を育てていくだけです」

2017-06-09 19:21:29
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1358。蔵。 また時間をかけていくだけ。出来ることなど一つしかない。

2017-06-09 19:21:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍がラウンジを歩き回っていた。隣室の老婦人がなくした毛糸玉を探しているという。私は直前に見た光景を思い出し、入口を指した。「お探しの色はあちらですか」一本の毛糸が廊下を縦断している。「そうかもしれない」毛糸の道筋を辿って歩くと、ホテルに迷い込んだ子猫が毛糸玉と戯れる姿を見つけた。

2017-06-10 18:52:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1359。毛糸。 小さな幸せが転がる先に。

2017-06-10 18:52:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍の携帯端末が消えた。目撃情報から近所の少年達の関与が浮上したが、藍は警察を呼ばず主犯格の家に自ら出向いた。あの手この手で問い詰める彼女の一歩後ろから庭の隅を見ると、土を覆う苔が不自然に浮いている場所が一つだけあった。「ねえ、あれは何かしら」藍に尋ねられた少年達から笑みが消えた。

2017-06-11 19:09:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1360。苔。 経験は力になる。

2017-06-11 19:09:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

繁華街では常に注意を払っているが、今日は運が悪かったらしい。一瞬の隙に懐の財布を抜き取られた。「何か盗まれたの?」人混みを抜けてから被害を察した私を、藍が何故か期待の目で見上げている。「預けた財布?なら大丈夫」彼女のバッグから全く同じ物が出てきた。私は空の財布を守っていたらしい。

2017-06-12 19:18:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1361。財布。 割と危なそうな橋を平然と渡る子供がここに一人。

2017-06-12 19:19:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

荒野の片隅、道路から少し外れた岩場の陰に今夜の宿を定めた。エンジンを止めた車の外で私が火を起こす間、藍は車内に二人が横たわれる場所を作っていた。「ゼファールは毛布だけでいい?」藍の手元を見て質問の意図を察した。シートの上に敷物を被せようとしたが、積荷には一人分しかなかったらしい。

2017-06-13 19:02:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1362。敷物。 少しでも暖かく。せめて自分だけでも。

2017-06-13 19:02:55
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