ストレイトロード:ルート140(28周目)
- Rista_Bakeya
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その村の復興には崩れた沢に代わる新たな水源の確保が欠かせなかった。住民の大半が山を下りた後に幾度も調査が行われたが、手掛かりの一つもないという。「お前さんが風を読むなら、水の在り処がわかる子供もどこかにいるのかねえ」藍を見る老人の呟きは深刻で、しかしどこか夢を語るようでもあった。
2017-06-14 18:45:57藍は高い柵の向こう側をどうしても覗きたいらしい。背丈の不足を持ってきた木箱で補えず、柵の縁に指先を掛けて背伸びをしている。その懸命な後ろ姿は何を求めているのか。「お手伝いしましょうか」「いらない」彼女を支えるつもりで背後に立ったが、即答と同時に蹴られた。断るというより拒絶だった。
2017-06-15 19:10:45「素材が良くなきゃ旨い料理は作れない」狩人は森の中へ猟銃を向けた。近辺の野生動物を心配した藍が割り込むも、指一本で前進を封じられた。「食ってみたのか?」突然の逆質問に私達は言葉に詰まった。「何だって何かの素材になる。誰かが試したから判ったことだろ」銃声の後、怪物の反撃が始まった。
2017-06-16 19:36:27「もうちょっと買い物したかったけど、予定変更」藍が紙袋を私に押しつけながら小声で告げた。探偵が私達を尾行しているらしい。「普通に歩いて」恐らく対象は藍の方だろう。やり過ごす方法も道順も彼女が決めた。しかし探されたくない事情を抱える身には、落ち着かない時間があまりに長く感じられた。
2017-06-17 19:39:16行方知れずの知人を探していたという男に藍が詰め寄る。「接点ほとんどないのに。わたしたちのこと探る意味あった?」私は今にも雨風を呼びそうな藍を宥めながら、言葉を替えて説明を求めた。彼はホテルの客室に侵入して何を探していたのか。「奴が匿われてるって聞いて」「何か後ろめたい事情でも?」
2017-06-18 19:10:26藍が海岸で拾った動物の口には釣り糸が絡まっていた。それがクリーチャーではないと判った途端に藍は奮起し、携帯端末と魔女の力で弱った動物を助ける手段を探し始めた。「すぐ来るって」専門家の救援を得て一安心と思いきや、今度は釣り糸を調べ始めた。それを海に流した人間を探してどうしたいのか。
2017-06-19 19:36:11藍がお気に入りの髪留めをなくしたと車内を探し回っていた。特徴を聞いた私も捜索を手伝っていたが、ふと彼女の手元が気になった。まさに条件を満たす物が細い手首に通されている。「これと同じものを探してるの。わかる?」厳しい目と肩に掛かる髪を見て失敗を悟った。藍には髪留めが二つ必要なのだ。
2017-06-20 19:18:05芸術品のような菓子が並ぶケースの前で藍が悩んでいた。「また食べたいなって思うものがあるんだけど、どこのお店にもないのよ」幼い頃ホームパーティで出会った品で、名称は覚えていないらしい。特徴を一つずつ訊いていくうち、近くにいたパティシエが難しい表情になった。特注だったのかもしれない。
2017-06-21 19:39:45少年少女の一団が途方に暮れていた。こっそり保護していた生き物を親達に取り上げられ、奪還した時には既に息絶えていたという。せめて亡骸は安全な場所にと悩む彼らに、藍が困った顔で尋ねた。「この子どこで拾ったの?」街を襲った怪物の幼体が街の片隅にいたなら、黙っていないのは親だけではない。
2017-06-22 19:08:15藍の不注意のせいで逃げ出した犬を追って、私達は繁華街から離れていった。後ろ姿の記憶を頼りに角を曲がると、特徴ある匂いが鼻先をかすめた。「どこかでお肉焼いてる」藍の一言に無言で同意した。食いしん坊だというその犬が無視できる匂いではない。それからは犬の名前も呼ばず、競うように走った。
2017-06-23 19:16:06布の問屋に立ち寄った。藍は気になる色柄を見つけては私に布地の端を持たせ、鏡の前で自分との相性を確かめている。車に積む衣装ケースが増えたばかりなのに、また一着仕立てたいのか。「先週の騒ぎが撮られてたの。とにかく映りが最悪で!」少女の目で訴えられた。怪物との戦闘の為に衣装が要るとは。
2017-06-24 19:18:39似通った白のブラウスが幾つも棚に並ぶ。しかし藍が手に取った一着は他と明らかにデザインが違った。他の問題にも気づいた藍は店員を呼んだ。「この服の値札はどこにあるの?」店員は深く頭を下げ、跳ね飛ぶように店の奥に消えた。店長の子息が叱られた腹いせに親の私物を持ち出し商品に混ぜたらしい。
2017-06-25 18:52:51