ストレイトロード:ルート140(28周目)
- Rista_Bakeya
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町はずれで野兎を追う少女を見かけた。数時間後、私達は彼女が町を挙げて探されていると知った。「兎穴にでも落ちてたりして」藍の冗談に、着飾った婦人が本気で怒り出した。「だからお外に出てはダメって言い聞かせてきたのに!」「そのせいじゃない?」私は慌てて藍の口を塞いだがもちろん手遅れだ。
2017-06-26 19:13:36手負いの怪物を探しに入ろうとした登山道の前で、深紅の女と鉢合わせした。どうしてよりによって、と魔女の目が私に訴えてくる。「あなたなら直接ここに来ると思ったから」恐らく同じ情報を掴み、藍の発想を見抜いたのだろう。文句を堪える顔に女は語りかけた。「どうせなら一緒に登る?」「絶対イヤ」
2017-06-27 19:26:28140文字で描く練習、1376。鉢合わせ。 マザー・フレイムは藍が最も相手にしたくないおばさま。これまでにも時々出てきました。そして本にも。
2017-06-27 19:26:58魚の鰭らしき物体が道路の中央に落ちていた。その幅は私達の車に匹敵する。私は何かの見間違いを疑い、藍は先日見た祭の山車を思い浮かべ、車を降りた。作り物だが確かに腹鰭だった。「どうする?」「とにかく道を空けなければ」二人でそれを道路脇に運び、地面に差した。荒野に奇妙な光景が生まれた。
2017-06-28 18:41:33私の手帳を盗んだ少年を探し、目抜き通りの噴水近くに出没するとの情報を得た。だが肝心の噴水が見当たらない。通りを一往復しまた戻りかけたとき、藍が広場の一角に群がる子供達を見つけた。「何か待ってるみたい」藍が近づいた瞬間、足下の石畳から水が噴き上がった。同時に一人の少年が逃げ出した。
2017-06-29 21:06:25初めて藍の実家を訪れた日、彼女は私にどの部屋で寝泊まりするかを尋ねてきた。「どっちがいい?」客室に通すか、使用人に与える階層で空き部屋を探すか。その選択はこの家における私の位置付けと同義だった。「早く決めて」屋根さえあれば十分と頭を下げる私に、藍はそれ以上を選ばせようとしてくる。
2017-06-30 19:53:59小さな宿で出会った老人から、蛍の群生地を目指した長旅の話を聞いた。彼が当時の写真を見せると言って鞄の中を探す間、藍は携帯端末で検索を始めた。耳慣れない地名が気になったらしい。「おお、あったよ」古い写真は端末に表示された観光地の画像より色褪せてはいたが、その構図はずっと美しかった。
2017-07-01 19:34:38すれ違いざまにバッグがぶつかったと絡んできた若い男達を、藍は一人で撃退した。発端には謝罪を、怒声には反論を。突然の暴力には突然の砂煙を。視界を奪われた相手は次第に青ざめ、負け惜しみを探す暇もなく退散した。「わたしのこと知らなかった目だった」彼らの目に風の魔女はどう映ったのだろう。
2017-07-02 19:44:31役場の前に詰め掛けた住民は村の人口の半数を超えていた。報道よりも忌まわしい噂を信じる目で藍を待ち構えている。この中から限られた時間で味方を探し出すなど容易ではない。「心配しすぎ」藍は車を降りようとした。私はドアをロックして強引に止めた。「まずここにいる味方に作戦を教えてください」
2017-07-03 18:53:16手掛かりとして一枚の集合写真を得た。しかし整列した人数があまりに多く、特定の人物を探すのは明らかに困難だ。藍はしばらく写真を直接睨んでいたが、やがて肉眼での判別を諦め、虫眼鏡を持ち出して調べ始めた。「全然見えない!」端末の画面上で拡大表示するのとは勝手が違う、と今気づいたらしい。
2017-07-04 19:45:17廃屋は雨風と人の手で荒らされ、残っているのは壊れた家具やゴミばかりだった。ここに誰が暮らしていたか素人には特定できそうにない。日焼けしてほとんど色を失ったカレンダーをめくると、辛うじて解読できる数字が現れた。私達は遠い過去の日付を読み上げ、全く揃わなかった声に少しだけ笑い合った。
2017-07-05 21:04:29藍は車から出発点が見えなくなるまで手を振り続け、その後は村で教わったレース編みの練習を始めた。最初は順調に模様を編んでいたが、次第に最近の疲れが眠気となって彼女を包んだ。しばらくの後、助手席が悲鳴と混乱で騒がしくなった。眠ったまま編み続け謎の模様が混ざったレースを戻せないらしい。
2017-07-06 19:32:00謎の球状生物の目撃情報を得た私達は、真偽を確かめるべく雨上がりの森へ入った。昼過ぎまでの探索で成果が得られず、山道を引き返す途中、昨夜の強風で折れたらしい倒木を見つけた。よく見ると折り重なった枝に宿木の株が混ざっていた。「見つからないわけね」その形状を見た藍がおかしそうに笑った。
2017-07-07 19:58:30ある名家の当主に招かれた私達は広い屋敷を見学した後、仲が良い一家と晩餐を共にした。客室に移る途中、藍が廊下の暗さを指摘した。案内役のメイドが答えた。「彼らはこれが落ち着くそうなので」屋敷に同居する幽霊の為だという。興味津々の藍が幽霊探しを提案する前に、私は明日の予定を読み上げた。
2017-07-08 19:48:25