【アイドル・ポリス26】#5

0
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ネオサイタマ警視庁ビル。「平和」「秩序を愛する」「叩いて棒で練る」などのショドーが飾られた優雅な部屋。その最上階が元は誰のものだったかは、もはや誰も覚えていない。今ではハイデッカー長官の専用室となっている。物憂げな顔で壁一面の窓ガラスから世界を見下ろす彼女の名は、シズカ・モガミ。

2017-08-02 20:10:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

彼女の鎧か装甲めいた黒いマッポコートの下は、深い紺色のアイドル装束。ハイデッカー長官たるシズカもまたアイドルであった。彼女はネオサイタマで最も高い警視庁ビルのこの部屋から街を眺めるのが好きだった。ウシミツ・アワー。ネオサイタマ。眠らない街。痩せた月が見下ろす彼女のゲーム盤。

2017-08-02 20:15:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

下界は喧騒に満ちた猥雑さを感じさせるが、それは一定の規則性を保っている。物の流れ、人の流れ、そして命の流れ。それら全てを彼女が整えた。無駄のない整理された世界。ただ力で抑え付けただけでは美しくない。ハイデッカーという駒を用い、如何に盤の上を支配するか。それが彼女のゲームだった。

2017-08-02 20:20:15
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

その為に秩序を乱す不穏分子は悉く排除してきた。だがシズカはそれに心痛めたことはない。ハイデッカー、即ち秩序の番人の当然の責務である。そうして築き上げた夜の静寂。それが今、犯されている。シズカの見守る先でまた火柱が上がった。あれは確か偽装したヤクザのアジトであったか。

2017-08-02 20:30:25
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

街を騒がせた強盗団の存在は黙認した。一定の遊びが無ければパズルはすぐに崩れ去る。ネズミは子猫を引っ掛ける。出過ぎた真似をする厄介者をピックアップするにはお誂え向きの玩具だ。特に39課のような釘を叩くには。最近まではそう考えていた。更なる危険分子が現れるまでは。また火の手が上がる。

2017-08-02 20:35:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

側近のナオが謎のアイドルに始末されてから、次々と手持ちの駒が破られていった。ケチの付き始めは、そう、あのライブハウスに踏み入った時からだ。あの思想犯の護送が失敗した時から彼女の計算に綻びが生じ始めた。放っておいた結果がこれだ。シズカは反省した。彼女のネオサイタマが燃えている。

2017-08-02 20:40:23
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

爆発炎上する建物は全て彼女の駒だ。下手人はそれを理解している。明らかなるシズカへの挑戦状だ。そして今夜、これはただのテロではない。流してもいない緊急警報により、各地にマッポやハイデッカーが急行している。丁度いいので護衛のアイドルも現場へ行かせた。無駄な犠牲を払う必要はない。

2017-08-02 20:45:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「火や銃って嫌いなの。ただの破壊の道具よ。そう思わない?」シズカは背後に問い掛けた。「…貴女を倒すのには事足りる。それで十分よ」「そう」振り向くと、そこには白いアイドル。銃口が二つ、シズカを睨んでいる。「貴女が例のバンドの生き残りね。アイドルになっているとは予想外だったわ」

2017-08-02 20:50:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「答えて。どうして私達を襲ったの?」シズカは深く溜息を吐くと片手を上げ、ガラス越しの街を指し示した。「ネオサイタマは昔から酷い有様だった。まさにマッポーめいて。それを知っている?」「……」「ネオサイタマ警察に入って、表の汚さしか知らなかった私は生きて行くことを諦めかけた。」

2017-08-02 20:55:03
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

背後で窓ガラスが巨大なモニターに変わり数十に区分けされ街の様子を映し出す。全てのモニターの中でハイデッカーを忙しくパトロールし、少しでも治安に障りそうな存在を引っ立てている。画面の中で路上歌手が殴られた。シホは銃を握り締める。「でも私はアイドルになった。そして、支配すると決めた」

2017-08-02 21:00:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「この街の平和を守る。その為に私が街の全てを采配する。ハイデッカーは秩序の象徴。その長たる私は平和の支配者。私こそが、偶像支配者となる!」シズカは両手を広げ熱く宣言した。「…狂ってる」シホは吐き捨てた。「私は正常よ。むしろ貴女のような思想犯が異常なの。今すぐに消えなさい」

2017-08-02 21:05:12
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

シズカはコートの前を閉じ、メンポを取り出して顔に着けた。整った字体の『秩序』の文字が威圧的に輝く。腰に吊っていたスタン警棒が構えられると、並みのプロデューサーであれば一瞬で感電死する程の電流が火花を散らした。「ドーモ、クレシェンドブルーです」「ドーモ、ルーントリガーです」

2017-08-02 21:10:12
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

両者はアイサツし、シズカが駆け、シホは銃を撃ち放った。

2017-08-02 21:15:03