日本における奴隷制度について 糸満売り 加えて売春について 波島 さんの意見と書籍の紹介

日本で行われた奴隷労働、売春と現代に続く問題について
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波島想太 @ele_cat_namy

東大法学部の川島武宣は借金を前提とした年期奉公を「家父長制的権力によって労働を強制され、それによって人心を留置されているところの奴隷」ととらえ、虐待がなければ人身売買を許容するという考え方を厳しく批判した。

2017-08-15 16:36:25
波島想太 @ele_cat_namy

一方で地理学者の長井政太郎、中央大学の田村五郎は奴隷的存在であったことを否定。ここでも幼少期から漁業などに従事することは職業指導であり、労働力確保のための里子確保は伝統的習慣などという説を披露する。

2017-08-15 16:40:56
波島想太 @ele_cat_namy

そうした人身売買擁護の主張は、一部の学者や権力者だけでなく、一般層にも通用するものであった。

2017-08-15 17:02:23
波島想太 @ele_cat_namy

人身売買を早期に発見するために、長期欠席児童の調査を徹底した。その他様々な調査により多くの事例が発覚するが、相変わらず人身売買そのものを取り締まる法律はなく、労基法や児童福祉法などで場当たり的に対処するのが精一杯であった。

2017-08-15 17:05:41
波島想太 @ele_cat_namy

(続きはまた明日にでも)

2017-08-15 17:39:42
波島想太 @ele_cat_namy

さて1951年に児童憲章が制定される。この背景には子供の人身売買があったと思われるが、制定後も人身売買はなくならなかった。同年に警視庁四谷警察署が新宿二丁目の「特殊飲食店」二軒を検挙する。人身売買が絡んでいたためだが、四谷署長は徹底的な取締りで街を浄化すると宣言。

2017-08-16 10:40:41
波島想太 @ele_cat_namy

同じ頃、ひとつの司法判断が問題になった。1949年に未成年者を含む9人の女性を熱海の特殊飲食店に売った事件に関するもので、児童福祉法で検挙、送検されたが足立区検察庁は罰金7,000円の略式命令、足立簡易裁判所も命令通りの判決を下して確定。買った業者は不起訴になった。

2017-08-16 10:45:17
波島想太 @ele_cat_namy

これに対し東京都児童福祉審議会はこんな悪質な業者が罰金たった七千円、買った業者も責任なしはありえない。これが児童を守るための法かと問題提起した。 以後も詐欺的な求人広告で人を集め数十人、数百人単位で売り飛ばす事件が立て続けに発生。売られる先も農家より特殊飲食店が多くなっていた。

2017-08-16 10:50:11
波島想太 @ele_cat_namy

※特殊飲食店:公娼制度廃止後、風俗営業が認められた地域内(通称「赤線」)で営業したいわゆる風俗店。カフエー(他に待合、料理店など)と名乗り勤務する女性は女給と称したが、現在のカフェとは異なる。余談だがこのカフエーは現在も風営法第二条の中にその名称が残っている。

2017-08-16 10:57:05
波島想太 @ele_cat_namy

法務府検務局検事の石井春水は人身売買の取締りについて、需要(特殊飲食店)と供給(貧困にあえぐ人々)を考えずにその間の取引だけ考えても根本的な解決にはならないと現状を批判した。 法案制定に向けた動きが進む中、衆議院行政監察特別委員会は調査において、二つの事件に注目する。

2017-08-16 11:13:05
波島想太 @ele_cat_namy

ひとつが山形県から神奈川県高座郡へ六百人余の女性や子供が売られていた「高座事件」である。本書には詳しくあるが貧しい農村からの身売りであり前出の事例に近いのでここでは割愛し、印象的なコメントを引用する。

2017-08-16 11:43:46
波島想太 @ele_cat_namy

買った農家によれば子供を買う理由は、(土地を相続できない)自分の次男以降が農業をやりたがらないこと、公共職安は工場のような大量募集は一生懸命やるが、自分のような数人の募集はまともに相手をしてくれないことを挙げている。人買いが違法という認識は乏しい。

2017-08-16 11:50:51
波島想太 @ele_cat_namy

山形市役所の職員が生活扶助の相談に来た戦争未亡人に「職がなかったらパンパン(街娼)になったらどうだ」など発言したことが発覚。衆議院から山形県へ調査官を派遣すると通告したところ、県側は「本件は神奈川県があまりに煽り立てたことであって、対策しようにも予算がない」と開き直る始末。

2017-08-16 11:59:45
波島想太 @ele_cat_namy

かように特殊飲食店が身売りの温床になることを警察その他も認識していて重点的な警戒など行ってはいたが、特殊飲食店そのものの是非を問うまでには至らなかった。人身売買を「慣習」「伝統」としかとらえていないことのあらわれである。

2017-08-16 13:24:52
波島想太 @ele_cat_namy

1952年、第三次吉田政権下において、新潟事件についての証人喚問が行われた。ここで数多くの人身売買の実態と、警視庁などの危機感のない認識などが公式に明らかにされる。特殊飲食店業者は人身売買にならないようやっていると言いながら前借金を当然のように語り、事実上人身売買を自白している。

2017-08-16 13:33:12
波島想太 @ele_cat_namy

(「前借金がある」という理屈で人身売買をも正当化してしまう。「理由があれば殴ってもいい(その理由の正当性、妥当性は問わない)」という現代にも連なる誤った正義感がここにも見える)

2017-08-16 13:35:36
波島想太 @ele_cat_namy

厚生事務次官は「国民の人権尊重意識が足りない」と責任転嫁し、文部事務次官は「女性の性道徳の欠陥に問題がある」などとのたまう。 これらの証言を受けて、買い主、売り主への処罰も厳重にすべきと結論付けている。ここに来てやっと人身売買への処罰法が主張されたのである。

2017-08-16 13:40:41
波島想太 @ele_cat_namy

しかし、しかしである、それでも「特殊飲食店」そのもの、つまり売春への取締りは否決されてしまう。さらに人身売買取締法について「近く国会に提出」としていた法務府が、いつの間にか「いずれ」に変わり、うやむやになってしまう。特殊飲食店における売春容認が国策だったためである。

2017-08-16 13:47:24
波島想太 @ele_cat_namy

婦人少年局の調べで、1952年7月~翌年6月の18才未満の人身売買被害者は1883名に及び、うち女性が1756名と93.3%を占め、その中で売春系は1243名にもなる。

2017-08-16 13:55:51
波島想太 @ele_cat_namy

農漁村の人身売買は社会批判にさらされ減少していくが、一方で売春目的の女性の売買が主流となっていく。農漁村に売られた子供は同情されるが、売春目的で売られた女性は「堕落した女性」の烙印を押される。特殊飲食店で働くのは「あくまで自由意思」と言い張ったことも影響しているだろう。

2017-08-16 13:59:26
波島想太 @ele_cat_namy

(特殊飲食店に通う男性にとっても、そこで働く女性が「自由意思でやっている」という幻想は心地よいものであっただろう。罪悪感など持たずに済むのだから。ある種の共犯関係がそこにある)

2017-08-16 14:07:25
波島想太 @ele_cat_namy

繰り返される冷害、凶作や、エネルギーシフトによる炭鉱の閉鎖で東北や北海道は深刻な貧窮にあえいでいた。一方で朝鮮戦争特需は都市部での雇用を生み、それによる集団就職は多少は人身売買を抑制する効果があった。しかし人口集中が特殊飲食店の需要を増し、人身売買もまた増えていく。

2017-08-16 14:16:34
波島想太 @ele_cat_namy

1953年国会の法相犬養毅の発言に「農村の空気というものが又我々の想像外のものがありまして、本人が都会に行っていい着物を着ることをなぜ邪魔するのだというような空気もあるのでございまして」とある。(著者は議員に批判的だが、そうした国民の選ぶ国会議員の限界というものもあるだろう)

2017-08-16 14:21:28
波島想太 @ele_cat_namy

職安では「女給さん百名募集!」などという景気のよすぎる怪しい案件は断っていたが、そうすると怪しい業者が職安で順番待ちをしている女性に話しかけ、甘言で誘い出してしまうということもあったという。行商を装って農村をめぐる周旋屋もいた。

2017-08-16 14:32:06
波島想太 @ele_cat_namy

町に売られた「先輩」が着飾って帰郷し、他の女性を呼び寄せようとする事案もあった。差別から貧困に陥り、売られていく少女もいた。 売られる側の道徳心の欠如に責を求めるということを、政府だけでなく一部の報道も行っていた。これが変化するのは1956年の売春防止法を待たなければならない。

2017-08-16 14:48:44