日本学術会議臨床医学委員会放射線防護・リスクマネジメント分科会の報告「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題」に紹介されていたロシア語論文:チェルノブイリ事故後のロシアにおける甲状腺癌検査の検証

日本学術会議臨床医学委員会放射線防護・リスクマネジメント分科会の報告「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題-現在の科学的知見を福島で生かすためにー」 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h170901.pdf にチェルノブイリ事故後のロシア南西部の甲状腺検査結果(1991-2013年)を検討し、スクリーニング効果の存在を指摘したロシア語論文が紹介されていたので読んでみました。 (英文抄録) http://www.radiation-and-risk.com/en/year2016-en/issue2/969-1 続きを読む
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nao @parasite2006

「そのままでも一生涯自覚症状が出ることがなかったのに検査で発見され患者に分類された人」が過剰診断で、「スクリーニング効果」という言葉はより厳密に「将来自覚症状が出るはずが発症前に前倒しで発見された人」に限って使うべきという考え方ありd.hatena.ne.jp/NATROM/20151120

2017-09-14 10:48:25

「将来自覚症状が出るはずが発症前に前倒しで発見された人」を言い表す言葉として、厚生労働省の「第19回がん検診のあり方に関する検討会」(2016年9月23日開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000141281.html
で大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座の祖父江友孝教授(癌の疫学研究の専門家)が「先取り効果」という言葉を使っています。2通りの意味で使われ混乱を招きやすい「スクリーニング効果」と比べると、誤解の少ないよい表現だと思います。

nao @parasite2006

このまとめtogetter.com/li/1146577 のロシア語論文は「そのままでも一生涯自覚症状が出ることがなかったのに検査で発見され患者に分類された人」(過剰診断)と「将来自覚症状が出るはずが発症前に前倒しで発見された人」の合計を「スクリーニング効果」としているので要注意

2017-09-14 11:02:57

要はこの論文の著者たちの頭には「過剰診断」という概念はなく(そこまで考えていない)、被曝線量の大小では説明できない自然発生率との差全体を単純に「スクリーニング効果」と呼んでいるのです。

(補足注意ここまで)

nao @parasite2006

前ツイートの推定式を1991-2013年のデータに適用して推定したチェルノブイリ事故のロシア南西部における甲状腺癌のスクリーニング効果と過剰相対リスクが表1。事故時年齢0-17歳の集団については検査開始直後の5年間(1991-1995年)に限りスクリーニング効果が倍に pic.twitter.com/LUJsMJKn6x

2017-09-03 12:53:43
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nao @parasite2006

表1 twitter.com/parasite2006/s… でもう一つご注目いただきたいのは、事故時年齢18歳以上のグループでは甲状腺被曝線量1 Gyあたりの過剰相対リスクが負の値になっている、すなわちこのグループの甲状腺癌発生率はチェルノブイリ事故時の放射線被被曝の影響を受けていない

2017-09-03 12:58:52

(↑上のツイートではTwitterの字数制限の関係で「放射線被曝の影響を受けていない」と書いてしまいましたが、「放射線被曝の影響は統計上検出できない(ほど小さい)」と書くべきでした)

nao @parasite2006

表1の左半分の結果=事故時年齢0-17歳のグループのスクリーニング効果と検査時期の関係をグラフ表示したのが図4。赤い線は全期間(1991-2013年)を通じた平均値。 pic.twitter.com/FCEXiuHNnQ

2017-09-03 13:03:22
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nao @parasite2006

図4 pic.twitter.com/FCEXiuHNnQ でスクリーニング効果(自覚症状が出る前から絨毯爆撃的に検査したことによる放射線と無関係な検出率上昇)が初めて縮小した1996-2000年は、チェルノブイリ事故の10-14年後。事故時ゼロ歳の子も10歳に、14年後には14歳に

2017-09-03 13:13:57
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nao @parasite2006

チェルノブイリ事故のロシア南西部で1991-2013年に甲状腺癌と診断された316例を4つの年齢群に分け、そのうちどれだけが放射線被曝由来かを推定した結果が表2。事故時年齢が10歳を超えると放射線由来と見られる甲状腺癌の割合は激減。 pic.twitter.com/EGlDgnw81s

2017-09-03 13:20:09
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4つ→3つ
ちなみに事故時0-17歳の診断例全体に占める放射線により誘発された甲状腺癌の割合は
(52+23+4)/316=79/316=0.25
すなわち25%です。

nao @parasite2006

ここからは、チェルノブイリ事故後のロシアの結果を使って、福島県民健康調査の甲状腺検査の受検者(2011年3月11日に福島県下に住んでいた年齢0-18歳のこども)の中から放射線と無関係に何人が甲状腺癌と診断されるか推定する話になります。推定に使う式がこちら。 pic.twitter.com/rwFwF36jT1

2017-09-03 13:31:18
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nao @parasite2006

式5 の計算を実行するには、λi ( Japan)=日本における甲状腺癌の自然発生率の値を4つの年齢群(0-4、5-9、10-14、15-19歳)のそれぞれについて知る必要があります。図5は2004年における日本人男性の人口10万あたりの甲状腺癌発生率 pic.twitter.com/6SwYTByLfd

2017-09-03 13:38:46
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nao @parasite2006

自然発生の甲状腺癌は男性より女性に多く、10代に入ると発生率が上がってきてあとは当分年齢とともに上がり続けるのが特徴です。twitter.com/parasite2006/s…

2017-09-03 13:49:58
nao @parasite2006

@hkemo1 1枚目のグラフは甲状腺癌の男女別罹患率が年齢ととともに変化する様子です。このグラフを作って初めて知りましたが、米国の白人と黒人には罹患率の大きな差があり、日本人は男女とも白人より黒人に近いことがわかります pic.twitter.com/yiG17038lV

2015-11-11 16:29:08
nao @parasite2006

図6は日本のがん統計に基づく人口10万人あたりの年齢群別甲状腺癌発生率(「男女別」でなく「男女計」で公開されているもの。2000-2010年の平均値)。がん統計のデータはあくまで自覚症状が出てから検査して診断確定した件数に基づくものです。 pic.twitter.com/NMaylbIn9j

2017-09-03 14:06:48
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論文の最後の引用文献一覧には、このがん統計データを国立がんセンターの英語ホームページ
http://www.ncc.go.jp/en/index.html
から入手したと書いてありますが、このページから行ける英語の統計データコーナーはなく、国立がんセンターのがん情報サービスのがん登録コーナー
http://ganjoho.jp/reg_stat/index.html
には英語版がありません。
日本人ならがん登録・統計のグラフデータベースコーナー
http://gdb.ganjoho.jp/graph_db/index?lang=ja
から「甲状腺」を選択し、切り替わったページで「罹患(全国推計値)」と年度を選んで「データを表示」ボタンを押すのが一番手っ取り早いデータ入手法でしょう。

探してみるとグラフデータベースコーナーに限り英語トップページ
http://gdb.ganjoho.jp/graph_db/index
がありました。

nao @parasite2006

表3は福島県民健康調査の1巡目(2011年度-2013年度実施分)の結果の受検者数(と年齢分布)に図6の発生率と式5を適用して放射線によらない甲状腺癌の発生件数を推定し(右端の列)、実際の悪性+悪性疑い例数(中央)と比較したもの。実数はいずれも推定値の95%信頼区間内にあります pic.twitter.com/9U8QtNNJDY

2017-09-03 14:15:31
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表3の福島県民健康調査の1巡目データは、1巡目検査結果の最初の確定版(2015年6月30日現在、2015年8月31日公表
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/219703.pdf
と比較すると2013年度実施分(対象地域は線量の低い会津といわき、相馬)の数字が合いません(この時は受検者数119,328、悪性/悪性疑い例数42)。この次に出た平成27年度追補版(2016年3月31日現在、2016年6月6日公表。2013年度受検者数119,326、悪性/悪性疑い例数45)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/167944.pdf
は論文に書いてあるデータ閲覧日付2016年5月19日に間に合わなかったのは明らかなものの、この時すでに公表されていたはずの最初の確定版のデータを使っていないのはどうしてしょうか。論文の引用文献一覧に引用されている福島県民健康調査結果が英語で公表されているページ
http://fmu-global.jp/fukushima-health-management-survey/
を調べると、検討委員会が開催された翌日には当日配布された日本語資料の英訳が公表されていますから、英訳作成のタイムラグは理由になりません。

表3の2013年度実施分の数字は、1巡目の結果の最初の確定版公表の半年前の集計結果(2014年12月31日現在、2015年2月12日公表
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101599.pdf
と一致します。

まさか2013年度の悪性/悪性疑い例の実数として最終確定値の45を採用すると、予測結果の95%信頼区間上限40.1を超えるのでまずいと考えたわけでもないでしょうが。もっとも1巡目全体の悪性/悪性疑い例の実数が116になっても、予測結果の95%信頼区間上限は116.3ですからぎりぎりおさまることになります。

ロシア語論文の推定計算を検算後、甲状腺検査1巡目の確定版結果に適用

nao @parasite2006

先日来ご紹介しているチェルノブイリ事故後のロシアのデータを使って福島県民健康調査の甲状腺検査1巡目の受検者の中から放射線と無関係に何人が甲状腺癌と診断されるか推定した論文radiation-and-risk.com/images/pdf/rr_… では、1巡目の二次検査結果が全部確定する前の数字を使用(続く)

2017-09-05 08:53:21
nao @parasite2006

(続く)そこで二次検査結果確定後のデータに同じ方法を適用して推定してみたいと考えて、まず論文に掲載されていた結果twitter.com/parasite2006/s… の検算にとりかかりました。

2017-09-05 08:56:26
nao @parasite2006

まず日本のがん統計に基づく人口10万人あたりの年齢群別甲状腺癌発生率(「男女別」でなく「男女計」で公開されているもの。2000-2010年の平均値)を確認。((論文の図6と見比べると、図の縦軸は実際には10万人あたりではなく100万人あたりで表示されていたことが判明)) pic.twitter.com/SEJwXSJMsJ

2017-09-05 09:04:04
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nao @parasite2006

さらに論文で使われたのと同じ福島県民健康調査1巡目の結果(2015.2.12公表、2014.12.31現在の集計)pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attac… を使い、論文の式5に従って計算を実行(続

2017-09-05 09:08:35
nao @parasite2006

(続き)結果がこちら。計算ポイント:(1)年齢群別の検査時平均年齢は、事故時平均年齢に2012年度なら1、2013年度なら2を足す。2011-2013年度全体の場合は重みつき平均値を使う;(2)県民健康調査とがん統計では年齢群の区切りが違うがさしあたって無視した pic.twitter.com/T7JHMTLBDg

2017-09-05 09:16:22
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