- schsch_schwein_
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@carnevans215 悪寒が背筋を駆け抜ける、間も、なく。 黒の装甲を纏った腕が、高速で射出されて、腹部に迫る。 「っ――あ゛、あっ……!」 不随意的に避けなければ、こちらの薄い腹部など貫通、もしくは臓ごと抉り取られていただろう。↓
2016-08-06 02:04:52@carnevans215 それでも、完全に躱したとは言い切れずに、脇腹の肉が圧倒的な膂力によって削ぎ落とされる。ごぼ、と傷口が、鮮血を溢れさせていく。 【HP:85→76】↓
2016-08-06 02:05:50@carnevans215 ぞっとする程の痛苦。けれども、すぐに体内の熱源にとろけて、飲み込まれる。彼女の双眸が燃える月だとしたら、差し詰め己は、夜の灼陽か。 「……は……っ、あは、は……」 膨大な混沌から成される、漆黒の小手。 それ程の代物と、素直に斬り合うつもりは、ない。
2016-08-06 02:06:54@carnevans215 意地悪げな表情を浮かべて、踵で、足元の影水に波紋を立てる。 「――“ウルリクムミ殺し”」 応えるように、足元に広がる影の海から、武骨な歯車が現れる。 混沌を餌に疾駆する、巨人殺しの銘を冠した処刑鋸。
2016-08-06 02:07:12@carnevans215 鋸は、大きく跳ね上がると突貫した。無粋な音を立てながら、混沌を重ねた装甲に鋸の刃が食い込み、火花を上げる。 がりがりがりがりがりがりごりごりごりごりごり——! 禍つ音を奏でて、鋸が忌み歌をうたう。 貰いものである為、発動時間は、ほんの僅かな間のみ。↓
2016-08-06 02:07:31@carnevans215 けれども、今はそれで充分だろう。 生身の肉ならば、たちどころに挽いてしまえる鋸の動力歌は、果たしてあの装甲にどれ程通じるだろうか―― 【鋸刃は歌う:17 】6,4,2,5 (01:17:27)
2016-08-06 02:07:42@schsch_schwein_ 不安定な体勢からの一噛みは脇腹を掠めるに至った。 此れなるは四肢を余さず獣と化す禁忌の法。混沌を紡ぎ喚び出す現象の中でも特別に危険な、狂気を孕む魔爪の召喚。 そう、危険、なのだ。その脅威とは破壊力であり、斬撃力であり、突撃力だが…↓
2016-08-07 01:56:24@schsch_schwein_ 何よりも、術者とは別の自我を持つ一個の獣であることが、異質さに拍車をかけている。 ――視界の奥、世界の向こう側で、黒い獣が低く唸る――↓
2016-08-07 01:57:00@schsch_schwein_ 軸足一つで土を掴み、反り返りながら腕を振るう。残った暗殺者の刃は鎧の生成で押し弾き、肉を抉る感触と微かな歓喜の声を聞き届け背後へ跳躍した。 まずは距離をとらなきゃ、そう思ったから。 (距離……何、から?) 無意識の疑問、おそれ。しかしそれは、↓
2016-08-07 01:58:58@schsch_schwein_ 「――"――殺し"」 より確実な目の前の危機にあっさりと姿を眩ませた。 頭部も覆う鎧の隙間、夜が唸るのを聞く間から、厭に物騒な名前が聞こえる。↓
2016-08-07 01:59:46@schsch_schwein_ それは鎌だった。首を狩り命を蒐集する死神の大鎌、それを何本も、何本も何本も重ねて絡み合わせた虚月の断頭刃だった。 一時的に混沌へ繋がった本能が叫ぶ。 あれは、いけない。 持 っ て い か れ る 、と――!↓
2016-08-07 02:00:21@schsch_schwein_ 判断は、恐らく正しかった。 おどろおどろしいものを目にすると人は一瞬我を忘れる。 その刹那は踏み出す足をほんの僅かに遅らせ、 夜を駆ける刃には畏怖こそ致命となり得る。 水底のように暗く昏い歯車はまさしく断頭台の如く落ち来たり、↓
2016-08-07 02:00:58@schsch_schwein_ (あ――) 「あああああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」 いけない、いけないいけないいけない! 足が、落ちる!!! 厭な予感は確信へ変わった。↓
2016-08-07 02:01:59@schsch_schwein_ もう思考は言葉の体を成さない。手負いの獣が必死で暴れまわる様に即興で混沌を変質させる。 混沌を贄とする刃……それが混沌そのものに近い鎧に触れれば、鎧はたちまちに瓦解し、貪られ、刃が内なる肉を裂いて回るだろう。そうなれば、人の身など。↓
2016-08-07 02:02:55@schsch_schwein_ 言うまでもなく断絶してそれまでである。 故に死と対面しながら抗った。ギロチンに据えられた足の鎧に混沌を注ぎ込み、補修しながら少しずつ別のものを織り交ぜる。 刹那に浮かんだイメージは鎧に対して布。歯車の両側を押し狭め侵入を拒みながら、↓
2016-08-07 02:03:37@schsch_schwein_ 同時に鎧と足の隙間に柔らかな布切れを大量に喚び出していく。 拮抗する鋼と刃。摩擦は熱を生み夏夜に火花を咲かせるが、同時に足は耐えかねて燻り肉の焦げる臭いが漂い出す。 (止ま、れ、止まれ止まれとまれとまれとまれとまれとまれとまって……!)↓
2016-08-07 02:04:10@schsch_schwein_ 肉を抉る痛みと焼ける痛みに意識を明滅させながら刹那に祈る。永遠か、無限か、果てに手が掛かりそうに思った頃、低い唸りを残しながら刃はようやく簒奪の手を止めた。 【HP:91→74】↓
2016-08-07 02:06:08@schsch_schwein_ 脂汗が髪を張り付かせる。 目眩を覚えながら息を吐くと、白熱した足から痛みがフラッシュバックした。 「…………っっっ、!!」 状況を、観察する。黒豚との距離は数m、追撃の手は今は、無い。↓ 「……嗚呼、ええ、流石、と評すべきでしょうか……」↓
2016-08-07 02:07:28@schsch_schwein_ 影中からの死の刃。 鎧がそれを受入れたのは、己が精製した核を混ぜ込まれていたからだろうか。 「簡単には、参りませんねえ……」 笑う。笑みを作る。もちろん強がりだ。 追撃がないことは、悪くない。一息つける。 そう安堵した。 安堵、してしまった。↓
2016-08-07 02:09:39@schsch_schwein_ パァン、と破裂音。見れば鎧が弾けている。 爆ぜたのは丁度『巨人殺し』で断たれた腿の部分。膝上を起点に萌芽し無数の槍枝が夜へ向かって伸びていく。 大きく広がる混沌の梢は、さながら炭化した大樹の様。 それが樹木の形に見えないとするならば、それは、↓
2016-08-07 02:10:51@schsch_schwein_ 「――待って!違う、そうじゃなくて……ああもう!」 「避けて!この子は『暴走』してる!」 数百に別れた槍の如き枝先を、貴方に殺到させているからだろう。 【魔鎧暴走/それら全ては猟犬の御意思にて:20】[5D6] 6,1,6,3,4
2016-08-07 02:13:27@carnevans215 (ただでは落とされない、とは踏んでいたけれど、成程……!) 四肢を落とすというよりも、生ける装甲を引き剥がすつもりで嗾けた、処刑鋸。どうやら想定以上に効力はあったようで、このまま無力化に至るかとも、脇腹の滴りを押さえながら考えた。 ……が。↓
2016-08-07 03:41:55@carnevans215 混沌喰らいの刃が、予想せずに、調律操作によって喚び出された布に絡め取られていく。くらやみの中、赤に、白に、火花が散り、くらめく。 装甲には及んだが、ついには肉を食らうことができぬまま、鋸は力を失って、再び地表の影水の中に沈んでいった。↓
2016-08-07 03:42:20@carnevans215 あの白磁の足もお高いのだろう、との貪欲な思考は職業柄で、同時に内心で舌を巻く――鋸牙に喰いつかれながらも、迅速に混沌で編み出した布を咬ませて対応し、堪え切ったとは。 感嘆の口笛を吹き、距離を取った獣の魔女の元へ、一歩踏み出す。↓
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