- schsch_schwein_
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【お知らせ】本日これより、アルトゥーク条約所属、シュシュ・シュヴァイン殿(@schsch_schwein_)との模擬戦を開始します。TLをお借りすることご容赦頂きたく。
2016-08-05 19:11:24【ルール】 ・HP100スタート/5ラウンド制 ・3D6から1Rごとに1D6を追加。任意のタイミングで+3D6 ・HP0にてKO ・その他:状況に応じて相談とか、ロール続く際は矢印で合図など
2016-08-05 19:13:16――同盟領のほど近く、条約との境界に接する位置に、緑豊かな森がある。 夏の日差しを受けて鬱蒼と茂るそこは昼でも薄暗く涼やかだ。まして、それが夕刻ともなれば、薄く差し込む西日は容易く遮られ影の輪郭も曖昧にぼやけている。 そこに近づく、ささやかな足音が一つ。↓
2016-08-05 19:22:34(…………) 獣の魔女は動かない。森の中、大樹の腕の中、足音に気づいているのかいないのか、小さく何かを口ずさんでいる。祈りのような、旋律のような、小さな歌を奏でている。 宵の森はこれから始まることを知らないでいるように穏やかだ。↓
2016-08-05 19:27:42@carnevans215 条約領と同盟領の境界に、綺麗な森があった。 その森の小道は、最近通い始めた戦場への近道として、使うようになったものである。とろりと湿度を帯びた夏夜の空気も、清浄な森の気の中では成りを潜めており、街中よりもずっと過ごし易く感じられる。↓
2016-08-05 19:59:57@carnevans215 いつもなら散策気分で通り抜けるだろうその小道。 けれども、今日はどこか心地良く張り詰めるような、刃の尖りを磨き上げるような心地で、黙々と歩いていく。 森へ足を踏み入れた時から。否、その前から。 己の鼻は、剣呑な匂いと甘やかな利の馨りを捉えていた。↓
2016-08-05 20:00:39@carnevans215 ――ひたり。 足を止める。 歌が聴こえた。 腰から双牙を引き抜くことなく、濃い混沌と、けものの匂いの方角へ向けて、笑み混じりに囁く。 「ねえ」 鬱蒼とした森の宵の中では、こちらの姿は黒一色に見えるだろうか。↓
2016-08-05 20:02:45@carnevans215 宵の帳に覆われても、唯一ぼやけず、鮮明に浮かび上がる夜魔の影のように。 「出ておいでよ、お姉さん」 そこにいるんでしょう、と。
2016-08-05 20:03:00@schsch_schwein_ 足音が止み、声が一つ。 甘やかで、けれど油断ならない、ねえという声。 艶のある呼びかけに心臓が脈打つのを自覚する。 なぜなら―― 「お待ち申し上げておりました」 ――ある種、私はこの狩人に懸想しているとも言えるからだろう。↓
2016-08-05 20:31:16@schsch_schwein_ 樹状の枝から地へ、柔らかな土が爪先を受け止る。 馬車の往来が出来る程度の小道へ進み出れば、白い衣が幽鬼のように夜へ浮かんだ。 見通せない闇に、金の瞳。 地の一対の満月は、夜魔の笑みに相対した。 無風。仄涼やかな夜の空気が、ぴりと肌を刺していく。↓
2016-08-05 20:32:28@schsch_schwein_ 「大工房同盟ディザ領所属。カルネ・エヴァンスと申します。ご挨拶は初めてでしたね?」 「本日は一つ、お話がありましてお待ちしておりました」 「単刀直入に申し上げます」 「――"柘榴の掌"の瞳を持ち去ったのは、貴方ですね?」↓
2016-08-05 20:32:44@schsch_schwein_ 呼吸を止めて一息に。 そうでもしないと頭が真っ白で、とても立っていられなさそうだから。 ぐらぐらと一定しない視界の中心にかの影を捉え、今更、分かりきったことを問う。 ……返答次第では、その身八つ裂いて野火にくべてやろうと、視線に熱を込めながら。
2016-08-05 20:33:07@carnevans215 ふわり。 樹上から地に降り立つ、皓月の姫君。 先程まで歌を紡いでいただろう、白い喉から、丁寧な名乗りが零れる。 夜風がふと凪ぎ、枝葉の騒めきや風音に遮られることなく、声がこちらに届いた。 努めて軽く、犬猫をからかうような口調で、己もそれに応える。↓
2016-08-05 21:14:27@carnevans215 「丁寧にどうもね、カルネお姉さん。僕ぁ、条約の“黒豚”シュシュ。しがない戦場漁りさ」 最後の問いは、頭の片隅で予想していたもの。 「……“柘榴の掌”ね。ディザ領所属、ということは、あいつのお仲間さんか」↓
2016-08-05 21:15:16@carnevans215 ――“柘榴”を思い出す。生と死を湛えた宝石を、双瞳に嵌め込んでいた屍兵。最後に顔を合わせたのは、いつぞやの死闘だったか。 真白の姫君から、耐え難きを耐え忍ぶような、熱孕みの鋭い視線が突き付けられる。月二つに、火が放たれる。↓
2016-08-05 21:15:52@carnevans215 最近ではもう、他者から向けられることが少なくなった、ともすれば激情や激昂と呼べるだろうそれを、久方ぶりにまともに食らう。 懐かしい。悪くない。むしろ、好ましい。 その感情を晴らしに来たのならば、ならず者らしく振る舞おうか。 厭らしい笑みを唇に乗せて、↓
2016-08-05 21:17:59@carnevans215 「綺麗だったなぁ、柘榴石と紫水晶。そう、その通りだ。持ち去ったのは僕だよ。この指で抉り出して、持ち去ったのさ」 炎を抱く月に、薪を、くべた。 「返せと言われても、もう返せないけれどね……大層な、値が、ついたよ?」
2016-08-05 21:18:18@schsch_schwein_ どくん、と鼓動が一際強く跳ねた。 思わず目を覆い俯く。ああ、そうか。やはり、そうだったのだ。 (この青年が、この人が) (ストラベリーさんを)↓
2016-08-05 22:18:22@schsch_schwein_ この指で、と言った。 その指で 指で 。 抉り 、触れて 値、と言ったか。 値。価値。値段。 売り払って 値 、 が つ い 、 た。 ↓
2016-08-05 22:19:37@schsch_schwein_ 絶音の叫びは混沌を揺らがせる。 夜気が震えるのを感じるか。それは波となり、森へ伝播し、潜む獣を呼び寄せる。 元よりこの森に居たものではない。己が喚んだ、狼にも似た漆黒の獣である。 それが二匹、三匹と、檻から解き放たれたようにぞろ集まってくる。↓
2016-08-05 22:21:49