ライオンハート・ザ・ブレイブハート #2

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えみゅう提督 @emyuteitoku

よく分からないからこそ、ガネーシャはスクトゥムの話しに乗る。「ふむ、君の求める公平とは?」「えー、その…ほら、俺は中身見せただろ?こっちだけ奥の手晒した状態でってのは、アレだと思わないか?」勝手に切り札切ったのは俺だっつーの!再びジブン・ツッコミ。完全に混乱していた。26

2017-09-13 21:59:27
えみゅう提督 @emyuteitoku

「いいだろう、全てを明かそう」ガネーシャこれに乗る。「お、おお!そうそう、急がなくていいからさ、色々聞かせてくれよ。ガネーシャ=サンみたいなカラテ極めた深海棲艦がさ、どーしてフューリアスみたいな奴に仕えているのかとか、気になってしょうがなくてなー。ハッハッハ」27

2017-09-13 22:02:23
えみゅう提督 @emyuteitoku

「深海棲艦か…確かに今の私はそう見えるだろうな」「んあ?」妙に引っかかる言い回しにスクトゥムは眉を上げた。「何だよ…その言い方。まさかあれか?あんたは――」「そうとも、この身は元より、深海棲艦ではないのだからな」信じがたい事実、されどそれが真実である。「――人間、なのか?」28

2017-09-13 22:03:46
えみゅう提督 @emyuteitoku

これがヒト?一体何が?何をどうすればこんな形に?「に、人間だっていうならなおさらだ!何で星をぶっ壊すような奴に、オールドワンに協力しているんだ!?」時間稼ぎという目的を忘れてスクトゥムはまくし立てた。うろたえるスクトゥムに対し、ガネーシャはあえてゆっくりと語り出す。29

2017-09-13 22:05:04
えみゅう提督 @emyuteitoku

「深海棲艦という言葉が世界に広がる前、140歳の誕生日を迎える時の事だ」(その時点ですでに人間じゃない気がすんだが)スクトゥムは疑問を口に出さずに飲み込む。ガネーシャは続ける。「その日の朝日と共に、私は寿命を迎えるはずだった。故郷の海岸で眠りについた時――歌が聞こえた」30

2017-09-13 22:07:09
えみゅう提督 @emyuteitoku

「思い出せはするが、口にはできない不思議な律動だ。歌と共に目を覚ますと、体は若返り、新たな腕が生えていた」水底に沈むことなく姿を変えた者。赤色の血潮が流れる人間。「…目の前に魔女が立っていた。彼女に言われたのだ、フューリアスを遊ばせてやれ、とな。私は、それに頷いてしまった」31

2017-09-13 22:08:14
えみゅう提督 @emyuteitoku

魔女との約束が、慈母と称えられた人間が鬼の眷属を師と呼ぶ理由。「これが私の真実だ。これで公平だな、スクトゥム=サン。では――」「いや、ちょっと待ちな」スクトゥムが目を細めた。「一人のエンジニアとして聞きたいことがある。…その女、周りに無数の糸を纏っていなかったか?」32

2017-09-13 22:09:12
えみゅう提督 @emyuteitoku

「む…何故それを」ガネーシャの反応が答えだった。「自分の体格を丸ごと変える、ってのは俺もやってたんでな。色々調べている内に知ったのさ。夢で不思議な歌を聞き、目覚めると異形となっていた…肢体形異配列現象。ガネーシャ=サンを見て分かった、これは生物の最良の形を作る実験」33

2017-09-13 22:10:14
えみゅう提督 @emyuteitoku

「このイクサ、オールドワンはフューリアスだけじゃない。いるんだな、もう一人!おそらくは【快気】。そいつが裏で糸引いてやがんだな!」イクサの真実、敵にオールドワンは二人いたのだ!「ご明察だ、スクトゥム=サン。快気の蛇が建造した衛星基地の護衛、それが我らの任務だ」34

2017-09-13 22:11:36
えみゅう提督 @emyuteitoku

ディープオーダーは、道化と蛇が用意した舞台で踊っていたのだ。…だが、「それが何だというのだ」ガネーシャは肩部装甲を投げ捨てる。「師の演目も、ライオンハート=サンの理想も、今は関係のないことだ。眼前に、全力を振うべき相手がいる。事はそれ一点、そうだろう、スクトゥム=サン」35

2017-09-13 22:13:06
えみゅう提督 @emyuteitoku

「いや俺はそうとは――」「何故、カラテパヤットが魔技と呼ばれたか…いや、魔技にしか至れなかったのか。それは、四足獣では真の演武に至る腕が足りなかったからだ」「あの、全力なんて別に――」「今こそ140年に渡る鍛錬の果てを、この六肢を以って振おうではないか!」もう話聞いてない!36

2017-09-13 22:14:22
えみゅう提督 @emyuteitoku

海に花が咲いた。沸き立つ泡はつぼみとなり、波の飛沫は光となる。「ワオ…ミヤビだな、おい」「カラテパヤットは“魔技”にあらず」蓮の花は散れども枯れず、花弁は光の波に乗り煌びやかに輝いた。ここはサンサーラの境界の先、ガネーシャが作り出したのは、カラテパヤットの神域。37

2017-09-13 22:16:04
えみゅう提督 @emyuteitoku

「今ここに、印の国二千年の歴史の極地を!“神技”カラテパヤットをお見せしよう!」ガネーシャが身光を纏い神技を構える。これより先は神話の世界、美しく華咲き乱れる海で、慈母神のカラテを前にしてもなお、スクトゥムは――(やっべ、俺やっぱ死ぬかも)諦めていた!38

2017-09-13 22:17:12
えみゅう提督 @emyuteitoku

スクトゥムの心は折れた。しかし、単なる恐れか、仲間が背を押したのか、スクトゥムはジュージュツの構えをとった。目の前にある真のカラテパヤットと比べれば、余りに拙いカラテだが、堅い意思がある構え。心の柱が折れても心頭は健在なり!「だああああ!!死んでたまるかってんだ!」39

2017-09-13 22:18:55
えみゅう提督 @emyuteitoku

ヤバレカバレの咆哮!だがそれでいい!奮い立つならばそれでいい!「俺には!やりたいことがある!約束もある!お前が魔技を越えた先なら、俺も盾にあらず!今の俺は、皆を守る城壁だ!崩れてたまるかってんだ!仲間を守って、俺は生きる、それが俺のイクサだ!生きて帰って、そんで――」40

2017-09-13 22:19:51
えみゅう提督 @emyuteitoku

「この配置考えたコールドレインの奴をぶっ飛ばしてやるぅーー!!イヤーッ!ヤライデカー!」スクトゥムは両手を振り回して突撃!勝ち目はないけどがんばれスクトゥム!コールドレインをぶっ飛ばすために!「行くぞスクトゥム=サン!ハァァアイヤッ!」「アイエエエ!無理無理無理無理!」41

2017-09-13 22:21:09
えみゅう提督 @emyuteitoku

最も厳しい配置を引いたのはスクトゥム、その事実に相違はない。しかし、四つに分かれたこのイクサに、有利な戦況は一つたりともなかった。コールドレインとチェルノボグは、難敵マンモスを相手に苦戦を強いられていた。「イヤーッ!イイヤーァ!ッ、まだかコールドレイン!」「まだだ!」43

2017-09-13 22:23:08
えみゅう提督 @emyuteitoku

マンモスの懐に潜り込むのはチェルノボグだ。「イヤーッ!」「グハハ!何度やっても無駄だ!フンッ!」チェルノボグのチョップがマンモスのモスト・マスキュラーにはじかれる。死神のカラテでもセルフ・コリ・ジツは斬り裂けない。「イヤーッ!」続けざまのパンチもシャーベット装甲に防がれる。44

2017-09-13 22:25:15
えみゅう提督 @emyuteitoku

「チィ…」「無駄だ無駄だ!俺の体は俺自身わからんがムテキ!アティチュードが無ければトーフのヤツらとはモノが違うのだ!フンヌー!」マンモスのビッグパンチを、チェルノボグはブリッジ回避!「あいつをトーフといったか…!マンモス!」チェルノボグの心頭が怒りに燃える。45

2017-09-13 22:27:20
えみゅう提督 @emyuteitoku

しかし、チェルノボグは怒りの熱を心にとどめ、冷静にバク転で適切な距離を取る。彼女らしからぬ守りのイクサだ。「グッフッフ、怖気づいたか。氷河期小僧と変わらん臆病者だな、グハハハハ!」「ヌゥ…!コールドレイン!」秘策ありと言った友はコリ・バルカンをポツポツと撃つだけだった。46

2017-09-13 22:29:59
えみゅう提督 @emyuteitoku

「まだだ…!」マンモス撃破作戦の要であるコールドレインは、あろうことか距離を離して安全圏で豆鉄砲を放つだけ、全員が苦境に立たされる中で、彼女は最も安全な場所にいた。――それが勝利の鍵。(決して違えるわけにはいかない!私の合図で、全てが決まる)それは耐えがたい重圧だった。47

2017-09-13 22:33:02
えみゅう提督 @emyuteitoku

命とは、これほどに重い物だったのか。(私はライオンハートのようにはできない)彼女は悩む。幸か不幸か、決断のタイミングは今ではない。(フッドよ…やはり、私は皆を見捨てる事はできない)真なる王は言った、お前だけが仲間を見捨てられる、と。(仲間――)あの仲間という言葉、仲間とは――48

2017-09-13 22:36:36
えみゅう提督 @emyuteitoku

「まだかコールドレイン!」「隙だらけだ!フンヌー!」マンモスのビッグハエタタキだ!チェルノボグは俊足を生かし懐に潜り込んだ。「イヤーッ!」彼女は飛び込みの勢いをそのままに、双掌打を放つ。しかし、平面の打撃はシャーベット装甲に受けきられる!「グハハハハ!効かん効かん!」49

2017-09-13 22:38:22
えみゅう提督 @emyuteitoku

「――今だ!イヤーッ!」コールドレインが腕を振り降ろす。その瞬間、海が凍り付きコールドレインとマンモスを繋ぐコリ・ロードが現れた。同時に彼女は足の裏にコリ・ブレードを装着、コールドレインは薄氷の道を、スケートのように滑走!「私だけが見捨てられる…犠牲にできる仲間とは――」50

2017-09-13 22:39:00