「人工生殖の法律学」から考える「家族」について

読みながら要約しつつ感想を呟いていくスタイル。更新終了です。 他に読んだ本→ https://togetter.com/li/1144604
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波島想太 @ele_cat_namy

以後優生学的利用(要するに「優秀な男性の精子」を求めるようになるのではないか)、男女産み分け、精子提供者の選別を誤ったことによる遺伝的障害児が出生したときの責任、一人の精子提供者が何人に提供できるか、などの問題提起があるが割愛。

2017-09-15 11:14:41
波島想太 @ele_cat_namy

子がアイデンティティを知る権利として、自分がAIDで生まれたかどうかを知る権利を認めるかどうか。スウェーデンでは精子提供者の記録を少なくとも70年残すものとしている。イギリスでも婚姻する予定の相手と血縁関係があるか否かの情報を求めることができる(精子提供者の特定はできない形で)。

2017-09-15 11:19:12

代理母

波島想太 @ele_cat_namy

男性不妊の救済策がAIDとすれば、女性不妊の救済策が代理母である。妻(正室)に代わって妾(側室)が子を生むというタイプの代理母は聖書の時代からあったというが、これは性交渉を介するものである。

2017-09-15 11:27:44
波島想太 @ele_cat_namy

現代の代理母は人工受精によって懐胎するもので、全くの他人を養子にするよりは、せめて夫の血を継いだ子が欲しいという需要がある。アメリカには営利の代理母斡旋業者もあるといい、日本人が利用した事例もある。

2017-09-15 11:30:12
波島想太 @ele_cat_namy

代理母は出産者であり母としての権利を持つ。しかし精子提供者は夫ではないため、その子の親権を持つことは容易ではない。手続き上は養子縁組ということになるが、ここでトラブルが起きる。代理母が引渡しを拒む、あるいは障害児だったりして双方が引取りを拒む事例がある。

2017-09-15 11:37:05
波島想太 @ele_cat_namy

数分しかかからない精子提供と比べて、10ヶ月近くかかり、心身への負担が大きい代理母には問題も多い。精子提供者が精液感染する病気を持っていれば代理母に感染するし、代理母の妊娠中に精子提供者が離婚し、出産可能な女性と再婚するなどして気が変わるかもしれない。

2017-09-15 11:47:18
波島想太 @ele_cat_namy

妊娠出産に際して後遺症が残った場合の補償はどうなるか。代理母が精子提供時期に別の男性と性交する等して、提供者の血を引かない子供を出産してしまったらどうなるか。AIDでは精子提供者は父ではないと統一親子関係法で定めているのだから、代理母の考え方とは矛盾する。その他様々に予想できる。

2017-09-15 11:51:31
波島想太 @ele_cat_namy

また代理母契約において、精子提供者が金銭を払うことで代理母に親権を放棄させるわけだから、養子縁組に際して金銭の授受を禁じている米英の思想とも対立する。子供が後に自分の出生の経緯を知った際に、「自分は売られた子供なのか」とショックを受けるかもしれない。

2017-09-15 11:55:59
波島想太 @ele_cat_namy

金銭を介しない、例えば不妊の姉に代わって妹が代理母を引き受けた場合、親族内に複雑な関係が生じることになり、メロドラマとしては面白くても現実ではかなりの配慮を必要とする。 ちなみに韓国では代理母を容認する風潮があり、韓国に渡って代理出産を利用した日本人もいるという。

2017-09-15 11:59:45
波島想太 @ele_cat_namy

夫婦の受精卵を別の女性に移植する「借り腹」については別途考察する。

2017-09-15 12:00:59

体外受精

受精卵は、いつから「人」になるのか。

波島想太 @ele_cat_namy

人工受精からの非配偶者間精子提供(AID)、代理母を見てきたが、次は体外受精である。人工受精と体外受精を混同している人も少なくなさそうだが、人工受精は精子を子宮に注入することで、体外受精は子宮から卵子を取り出し、精子と受精させて子宮に戻すものであり技術的にも大きく異なる。

2017-09-19 10:08:40
波島想太 @ele_cat_namy

体外受精の受精方法も色々あり、精子を直接振りかける方法や、卵子の外殻に穴を開けて直接精子を送り込む顕微授精という方法もある。通常子宮に入り込んだ精子は卵子の待つ卵管まで泳いでいくわけだが、運動力が低いとそこまで辿り着けなかったり、辿り着いても卵子の中に侵入できないことがある。

2017-09-19 10:15:01
波島想太 @ele_cat_namy

これにより従来子供を持てなかった人(夫婦)にもその道が大きく開かれた。その一方で従来生じ得なかった倫理的、社会的、法的問題も生じている。 日本では1983年に東北大学で体外受精の第一号が出生し、1989年には凍結胚からの出生も成功した。

2017-09-19 10:19:59
波島想太 @ele_cat_namy

mainichi.jp/articles/20160… 「2014年に国内の医療機関で実施された体外受精の件数は39万3745件で、その結果4万7322人の子どもが生まれ、いずれも過去最多」「総出生数は約100万3500人で、体外受精で生まれた子どもの割合は約21人に1人となった」

2017-09-19 10:22:20
波島想太 @ele_cat_namy

1990年には1048人だったから、24年で45倍にまで増えたことになる。 生命の発生過程を細かく観察できるようになったことで、「生命とはなにか」が問われるようになったのである。

2017-09-19 10:26:04
波島想太 @ele_cat_namy

胚は、遺伝的には人となる要素をすべて持っており、順調に育てば人になる。そのため受精した瞬間、胚から人であると見る考えもある。ただ法的には、胚が子宮に根付いたとき、つまり着床以降を胎児として堕児罪の保護法益と見る考えが多い。胚と胎児は違うし、胎児と出生後の人も違う。

2017-09-19 10:31:08
波島想太 @ele_cat_namy

たとえば緊急避妊法(アフターピル) は排卵とともに着床も抑制するため、避妊に失敗し受精してしまっても、受精卵(胚)のまま排出することになり、法的には堕児、中絶ではないということになる。

2017-09-19 10:36:09
波島想太 @ele_cat_namy

体外受精に先だって採卵をするが、通常は採卵回数を減らすために排卵促進剤を用いて、通常よりも多くの卵子を取り出す。これらを受精させて成功したものが胚になるが、できた胚を全て戻すわけにはいかない。多胎は母子ともに負担が大きく、経済的にも受け入れが難しくなるからだ。

2017-09-19 10:39:43
波島想太 @ele_cat_namy

体外受精をする女性は妊娠率が低いこともあり、確実性のため複数の受精卵を戻すこともあるが、全部着床してしまい、四つ子のうちの二児を中絶するといった減数中絶が行われることがある。1988年に減数中絶は優生保護法で定められた中絶に当たらず違法とする見解を発表したが、その後も残っている。

2017-09-19 10:44:39
波島想太 @ele_cat_namy

ちなみに優生保護法は1996年に「母体保護法」に改正されている。

2017-09-19 10:47:35

「冷凍胚」の登場

波島想太 @ele_cat_namy

複数できてしまった胚を全て戻すことはできないが、残りは捨ててよいかというとそうでもなく、凍結保存方法が登場した。これによって一回の採卵で複数回の移植ができるようになったが、「余剰胚」を実感に使いたいという科学者や、「胚養子」を望む第三者に売却される可能性が出てくる。

2017-09-19 10:53:58
波島想太 @ele_cat_namy

イギリス、スウェーデンなどでは胚の売買を禁止している。精子に関してはアメリカでは精子バンクがあり、日本でも有償の精子提供が行われているが、胚はそのまま人になる存在であり、人身売買と同等とは言えないまでも似た問題がある。

2017-09-19 10:56:30
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