「人工生殖の法律学」から考える「家族」について

読みながら要約しつつ感想を呟いていくスタイル。更新終了です。 他に読んだ本→ https://togetter.com/li/1144604
セルフまとめ 人工生殖 避妊 中絶 育児 出産
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⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
【本棚登録】『人工生殖の法律学―生殖医療の発達と家族法』石井 美智子 booklog.jp/item/1/4641037… #booklog
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(本書もまた20年以上前の刊行で現状とはそぐわない部分もあるかと思うが、まずは読んでみる。近年の状況については別に候補があるのでまたいずれ。)
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予習 不妊症治療に関連した親子関係の法律 law.tohoku.ac.jp/~parenoir/peri… 精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書 www1.mhlw.go.jp/shingi/s0012/s… 家族法講義録 (補遺) sekidou.com/law/lives/faml…
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予習その2 一般社団法人日本生殖医学会|倫理委員会報告「第三者配偶子を用いる生殖医療についての提言」 jsrm.or.jp/guideline-stat… 人工授精×法的親子関係|親子関係のバラエティ | 東京・埼玉の理系弁護士 mc-law.jp/rikon/18498/
はじめに
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一方に切実に子を望む夫婦がいて、他方に望まない妊娠に悩む人がいるのは、昔も今も変わらない。だが現代(本書は1994年出版)では医療技術の進歩により、子を持てなかった夫婦が子を授かることができ、より安全な避妊薬や中絶法が存在する。
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しかし倫理的、社会的、法的問題はまた別に存在している。特に「家族」についての考え方が大きく変わろうとしている。ここでは家族法の観点から人工生殖の問題を検討する。生殖は家族の重要な機能のひとつである。可能になった生殖のコントロールを誰が行うのか。そもそも家族とはなにか。
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本書では、人工生殖を狭義には人工受精や体外受精のように子の出生を人為的に可能にする行為をいい、それを主題とするが、広義には人為的に子の出生を妨げる行為(避妊、中絶)も含め、人為的にコントロールされた生殖全般をいう。
「人工授精」について

夫の精子を用いる方法と、夫以外の男性の精子を用いる方法がある(いずれも卵は妻のもの)。精子は冷凍することもできるため、夫の死後に妊娠することも可能である。可能であるが、その子の法的位置づけはどうなるか。

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精子を子宮あるいは卵管に人工的に注入する「人工受精」には、夫の精子を用いる配偶者間人工受精AIHと、夫以外の男性の精子を用いる非配偶者間人工受精AIDがある。技術的には何ら違いはないが、社会的な意味は大きく異なり、特に後者は多くの問題を生じさせている。
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AIHについては倫理、安全性の問題はあっても、夫婦間であり法的な問題はないように思われる。だが、1949年にイギリスで起きたエル事件は婚姻における性と生殖の意味を問いかけた。当時のイギリスでは夫婦間に性交が成立しない場合、婚姻が無効とされた。離婚を禁じていたための救済手段だった。
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婚姻後三年間、夫の不能のために性交渉できなかった夫婦が心理療法としてAIHを受けたが、その後夫婦関係は破綻し、妊娠に気づかないまま別居を始めた。そして子供を出産するが、妻は性交渉がなかったことを理由に婚姻無効を訴え、裁判所もそれを認めたため生まれた子供は非嫡出子になってしまった。
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また、精子の冷凍保存が可能になったために、夫の死後にAIHを行うこともできるが、これには法的な問題が生じる。1984年のフランスで、未亡人が死亡した夫の精子の返還を精子バンクに求めたが、拒否されたため訴えを起こす。裁判所は返還を認めたが、人工受精は失敗に終わったという。
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アメリカでは自殺した男性の冷凍精子を巡り、前妻の子供と後妻が争った(ヘヒト事件)。ここでも裁判所は死後の人工受精の可能性を残した。 日本で夫の死後のAIHで生まれた子供はどうなるのか。本書出版後に判例があるのでそちらを紹介する。 hounokiso.blog97.fc2.com/blog-entry-352…
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要約すれば、最高裁は死後懐胎子と亡父の親子関係を認めなかった。民法772条1項の「妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」に該当しないからである。787条の認知の訴えも、父が生前に「認知」していたとしても、現行法はこれを想定しておらず、該当しないものとした。
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
民法886条で、妊娠中に父親が死亡した場合、胎児も相続権を持つことを認めているが、精子はそれに該当しない。死後受精は技術的には可能であっても、法的に保護されないので、認めるべきではないという指摘もある(2009,栗原由紀子「凍結精子を用いた死後懐胎子による認知請求」)。
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また、精子の取り違え、または意図的なすり替えで生物学的に夫の子ではない子が生まれてしまう事例もある。 参考:イギリス:不妊治療施設の院長が600人の子供の親に!? | Topic for tomorrow date gamp.ameblo.jp/cometoknow/ent…
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最初のAIDの報告は1909年に遡る。日本でのAID第一号は1949年に慶応大学病院で生まれた女の子である。本書の時点では公的にAIDを行っていたのは慶応大学病院だけだったようだが、現在は他にもある模様。 参考: haramedical.or.jp/content/artifi…
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
AIDには法的にも道徳的にも多くの問題を含むが、1994年時点でもすでに一万人近い事例があったようで、最近でも年間160人程度はいるらしい。 人工授精(AID)│Drと患者の声 34項目│不妊治療情報センター funin.info/check/check09
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
当初に問題になったのは、AIDが姦通になるかどうかだった。日本では初のAIDより前の1947年に姦通罪は廃止されていたので問われなかったが、1921年のカナダでAIDが姦通とされた判例がある。ドイツでも成立はしなかったが1960年にAIDを犯罪とする刑法案が検討されていた。
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
現在ではAIDを姦通とされることはないだろうが、夫の同意を得ないAIDは背信行為として離婚事由になる可能性はある。 夫の同意はあっても子の法的地位は問題になる。日本では本書時点ではAIDでの父子関係をめぐる訴訟はないとされている。認知により嫡出子と認められているのだろう。
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
アメリカでは1968年に、AIDでの出産後に離婚した父が養育費を払わず、刑事訴追したところ自分はその子の父でないと争った事例がある。その後にAIDで生まれた子の父は夫とし、精子提供者ではないとする統一親子関係法が示され、多くの州がそれにならっている。イギリスにも同様の法がある。
同性愛カップルにおける人工授精

女性同士の同性愛カップルにおいては、第三者の精子を用いることで「妻」が子を産むことが可能である。可能であるが、その子供の法的位置づけは、「父」との関係はどうなるのか。

⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
AIDが認められるのは原則既婚者であって、独身者や同性愛カップルには応じていない医療機関がほとんどである(一部には独身者に提供している団体もある模様)。現状法的には女性は「父親」になれない。性同一性障害であれば法的にも男性になれるが、女性として女性を愛する場合は不可である。
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy
同性愛カップルの「母」が死亡したとき、残された「父」は子に対する監護権を有するのか、子は「父」に扶養を求めることができるのか。別れたあとに「父」は子を訪問する権利を主張できるのか。本書の時点では否定されていたようだが、現在はどうだろう。
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コメント

nekosencho @Neko_Sencho 2017年9月14日
理詰めだけでどうにかなるものでもないしな、こういうものはさ
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy 2017年9月14日
.Neko_Sencho それでも理は理で整理しとかないと、という話かなと思います。法律学者らしく、情緒的な話はあえて除外すると断っています。
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy 2017年12月1日
全体感想を付けて小タイトルを付け整理しました。これで更新終了です。