渋谷すばる×朱(あき)3

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えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【26】 話をしながら、何度も言葉につまり、今にも叫び出しそうな表情を浮かべ、こぼれ落ちる言葉は、今にも血がしたたりそうな重さを持っていた。 それでも、彼は、その闇を最後まで私に伝えてくれた。 そして、 「お前がおったから、生きてられるんかな、俺は」 と呟いた…

2014-02-04 20:49:25
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【27】 だけど、私の秘密は、なかなか話すことができなかった。 話せば、目の前の人がたちまち消えてしまいそうで、やっぱり自分は1人で取り残されることになりそうで怖かった。 幸せを求めてはいけないことを思い知らされそうで、言い出せなかった。 すばるを失いたくなかった。

2014-02-04 20:49:31
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【28】 すばるは、そんな自分を知ってか知らずか、何度も言いかけてはやめる私に、何も聞かずにいてくれた。 でも、思いがけない出来事で、彼にその秘密はあっけなく知られてしまうことになった。 あの日、私はいつものように、店の準備をしていた…

2014-02-04 20:51:23
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【29】 たまたま、その日は、すばるもオフだったので、カウンターの端に座って、私のすることをじっと見ていた。 初めて店に来た時に座った席が、気に入ったらしく、いつ来ても、その席にしか座らなかった。 入口から上手い具合に死角になるのも理由の一つらしいけど…

2014-02-04 23:11:15
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【30】 静かだけど穏やかな空気が流れるその時間を、開いた扉が遮った。 「すみません、まだ準備中…っ⁉︎」 そこに立っていたのは、もう二度と会うことのないはずの元夫だった。 「…久しぶり…ここで店をやってるって、聞いたから…」

2014-02-04 23:11:23
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【31】 「何を…しに来たの?」 「つれないな…別れたとは言え、結婚した仲だろう。もう少し、こう、優しい言葉かけてくれてもいいんじゃない?」 「勝手に家を出て、勝手に離婚届送ってきたくせに、今さら優しくなんて…」 「それは悪かったと思ってるさ。けどさ…」

2014-02-04 23:11:30
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(・_・)【32】 「いきなり子供ができない体です、って言われたら、誰だって驚くだろ。親もさ、そんな女とはさっさと別れろってうるさいしさ、しょうがなかったんだよ」 ガタン‼︎ その時、大きな音がして、振り向くと、すばるが立ち上がって、目を見開いていた。 聞かれた…私の闇…

2014-02-04 23:11:39
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【33】 元夫が訪れた衝撃で、今の今まですばるがそこに居たことを忘れていた。 聞かれてしまった…知られたくなかった私の秘密を… 「何だ、人がいたのか。あんた、誰? こいつの新しい彼氏? こいつ、子供が産めないって知ってて付き合ってんの? まさか隠してたとか?」

2014-02-04 23:11:47
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【34】 その後も何かいろいろ言ってたようだったけど、頭が真っ白になってしまっていた私は、正直よく覚えてない。 その時、私が考えていたのは、もう終わってしまう、ということだけだった。 ようやく手に入れた穏やかな日々だったのに… もう少し夢を見ていたかったのに…

2014-02-04 23:11:54
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【35】 「もう…やめて…」 そのまま、カウンターの中で崩れ落ちるように座り込む。 「もう、許して…お願いだから、終わらせて…お願いだから」 その姿を見た元夫は、 「今日のところは、帰るわ。また、改めて来るから。それじゃ」 と、扉を開けて出て行った。

2014-02-04 23:12:00
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【36】 元夫が出て行ってから、しばらくしても立ち上がれない私に、すばるが近づいてくる。 そして、目の前にしゃがみ込むと、黒く大きな瞳で、じっと私を見つめてきた。 その視線に責められているような気がして、思わず視線をそらす。 緊張した空気が流れていく…

2014-02-04 23:12:08
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(・_・)【37】 「ごめんなさい…隠すつもりじゃなかった…話そうとは思ってたの…本当に」 すばるからの返事はない。 その沈黙がこわくて、 「ごめんなさい…ごめんなさい…」 そればかりを繰り返す。 すばるは、そんな私を、ただ、静かに見つめ続けていた。

2014-02-04 23:12:14
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(・_・)【38】 「今日は、臨時休業やな」 いきなり、そう呟くと、私を立ち上がらせ、片付けをはじめる。 店の鍵を閉め、貼り紙を貼り、私の手を引いて家に連れ帰る。 部屋に入ると、私をソファに座らせ、キッチンに向かう。 私は、その姿を、ただ目で追いかけるだけだった。

2014-02-04 23:12:20
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(・_・)【39】 やがて、手にカップを2つ持って、すばるが戻ってくる。 私の隣に座ると、一つをテーブルに置き、もう一つを私の手に握らせる。 中を覗くと、ミルクのたっぷり入ったカフェオレだった… すばるは、 「あの時と、反対やな…俺は、猫扱いはせんけどな」 と笑った。

2014-02-04 23:12:26
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(・_・)【40】 「…何も言わないんだね」 「正直…俺も混乱してるからな。何か隠してるとは思うてたけど、さすがに予想外やった」 「呆れたでしょう…こんな大切なこと隠して、何もないような顔して、偉そうなこと言って…私、ずっとすばるのこと騙してた…」

2014-02-04 23:12:32
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(・_・)【41】 「俺は騙されたとは思うてない。できれば、あんな男の口からじゃなくて、お前から聞きたかったけどな」 「すばる…」 私の手からカップを取り上げテーブルに置くと、私を引き寄せて抱きしめる。 その腕から伝わる温もりが嬉しくて、哀しかった。

2014-02-04 23:12:37
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(・_・)【42】 この温もりは、いつかきっと消えていってしまう。それを考えると、このまま消えてしまいたかった。 「優しくしないで…これ以上、優しくされたら、離れられなくなっちゃう」 「何で離れるん? 俺は、離すつもりはないで」 「私じゃ、すばるは幸せにできない…だから…」

2014-02-04 23:12:43
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(・_・)【43】 「俺が幸せかどうかは、俺が決めることや。俺は言うたはずや、お前がおるから生きてられるて」 「でも…」 「今日は何も言わんでいい。お前、あん時の俺よりボロボロやないか。離したら、俺の前から消えてしまいそうや。それだけは許さんし」 そう言うと、腕の力が強くなる。

2014-02-04 23:12:48
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)【44】 「今日は、ずっと俺の腕の中におれ。余計なことは何も考えんでいい。ただ、この腕の中から消えんな。俺を一人で置いていくな。明日のことは、明日、また考えればいい」 その明日が来るのが怖い… すばるの腕の中で、すばるの声を聞きながら、私はただ怯えていた…

2014-02-04 23:12:53
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(・_・)×朱【45】 「…き、あき、朱、起きれるか?」 優しく呼びかける声で、ゆっくりと意識が浮上する。 窓からは明るい光が射し込んでいた。 あのまま、眠ってしまったらしい。 いつの間にかベッドに運ばれていたけど、昨夜と同じように、私がいたのはすばるの腕の中だった。

2014-02-24 10:38:56
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)×朱【46】 「寝てるとこ起こしてすまんけど…仕事、行かなあかんから…」 「ごめんなさい」 と起き上がろうとすると、すばるに止められる。 「起きらんでもええ…ただ、言うとかなあかん事があるだけやから…」 「…っ!」 息を飲む私に、 「そんな不安そうな顔せんでええ」

2014-02-24 10:49:51
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)×朱【47】 「昨夜も言うた通り、俺はお前を離す気はない…それだけは忘れんな、いいか。仕事終わったら店の方に行くから、俺が来るまで待っとれよ。勝手に何処にも行くんやないで。誰が来ても、や。ええな?」 そう言って、唇にキスすると、ベッドを降りて準備を始める。

2014-02-24 10:49:59
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)×朱【48】 その背中をぼんやりと見つめながら、夢と現の世界を彷徨っていた私は、また眠ってしまったらしい。 再び目が覚めた時には、昼過ぎだった。 もちろん、すばるの姿はどこにもない。 あれはいつの事だったんだろう。 もしかしたら、私の勝手な夢だったのかも…

2014-02-24 10:50:42
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)×朱【49】 もう…どちらでもいい。 どうせ壊れていくのなら、夢でも現実でもかまわない。 いつか離れていくのだから… とりあえず起きてみたものの、何もする気が起こらず、ソファに座ったままボーッとする。 ただ、時間だけが過ぎていく、静かな昼下がり…

2014-02-24 10:52:51
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(・_・)×朱【50】 店を開けるなら、そろそろ準備を始めないといけないけど、体は動かない。 動きたくない… 店…やめちゃおうかな… ここも引き払って、何処か遠いところに行っちゃって… そしたら、夢を見たまま終われるかも。 私には、もったいない夢を見たまま…

2014-02-24 10:53:25
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