乳幼児に見るアクティブ・ラーニング
- ShinShinohara
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今朝、改めて数字の9を見せたら、口をとがらせて「きゅう」と言った娘。 ただし4を見せても7を見せても「きゅう」。 どうやら数字っぽいものは認識していて、それらを代表して「きゅう」と呼ぶことにしたらしい。これはこれで「認識」のステップが分かって面白い。
2017-10-05 09:22:57娘はどうやら線のクネクネのうち、比較的シンプルに書かれたものが数字であり、数えるときに使われ、それらには読み方がある、というところまでたどり着いているらしい。数字の概念に近いところまで来ているのだが、それを「すうじ」とは呼ばず、親しみのある「きゅう」で代表することにしたらしい。
2017-10-05 09:26:02思えば息子もそうだった。どの色を見ても「あお!」と叫んだ。色には呼び名がそれぞれついていることに気づき、色の概念が息子の中に育っていたのだが、まだ色の名前を覚えきれていない。そういう場合、最初に覚えた色の名前「あお!」で色の概念を代表させることにしたらしい。
2017-10-05 09:28:35子どもが言葉を覚えていく順序が、ここから垣間見える。子どもは「9、7、4…」等の連なりに共通する特徴があることに気づき、青や赤、黒、白といった色味に何か共通する特徴があることに気づく。それぞれ数字や色という概念の存在が、おぼろげに見えてくる。
2017-10-05 09:33:02そして初めて言い当てた名前「きゅう」で数字の概念の存在に確信を持ち、初めて言い当てた「あお!」で色彩の概念の存在に確信を持つ。以後、しばらくは数字の概念を「きゅう」、色の概念を「あお!」で代表させて呼ぶことにするようだ。
2017-10-05 09:36:36そして次第に「きゅう」の中には「よん」とか「なな」と呼ぶものが含まれていることを識別し、「あお!」の中には赤とか黒とか別の名前を持つ色があることを識別していく。「きゅう」には「すうじ」、「あお!」には「いろ」という呼び名があることに気がつくのは、しばらく後。
2017-10-05 09:39:34赤ん坊が言葉を獲得していく順序がこうしたものであるならば、学校教育での学習の仕方もその方式をとった方が頭に入りやすいのではないか。印象に残ること、ものを先に伝え、実はそれに似た現象がたくさんあることを伝えて概念の存在に気づかせ、その後に概念の総称を伝えるのだ。
2017-10-05 09:43:17小学校では結構そのような授業が行われているが、中学以降の学習ではいきなり「概念」から教えようとすることが多い。「三人称単数のエス」なんていう概念の名称をいきなり教えられても、子どもはその難しそうな名前のために、自分には分からない呪文を唱えられた気分になる。
2017-10-05 09:46:58「ひーとかしーとかが最初にきたとき、2番目の言葉には何が必要だっけ?」それでよい。「あ、尻にエスをつけるんだったね」と答えられたら上等。そのうち、「いっと」とか、一個のものが文の最初にきた(主語)ときも「2番目の言葉」(動詞)にエスをつける、という体験を蓄積していく。
2017-10-05 09:51:06「ひーとかしーとかのときに2番目の言葉に付けるエス」の概念が子どもの中で成熟してきたと見えてきたら、「実はこのエス、名前があるねん。さんにんしょうたんすうのエス、って言うねん。長ったらしいな」と笑って伝えればよい。「でも俺たちの間ではひーとかしーとかのエス、と呼ぼうか」でよい。
2017-10-05 09:54:15「ちなみになんで「三人称」って言うかとゆうとな、私、って言うのが一人称言うねん。んなもん、わざわざそんなん言わんでも「俺」でええやんなあ。で、二人称は「あなた」。これだって「お前」って呼べば済むのになあ。で、私でもあなたでもないのを三人称、って言うわけや。面倒くさいなあ。」
2017-10-05 09:57:20「で、あいつ、ってのが三人称なわけだけど、「あいつら」って場合もあるやん。一人じゃなく二人以上。一人のことを単数、それより多い数を複数、って言うねん。面倒くさいなあ。単数はいっこ、複数はたくさん、って言えば済むのになあ。なんでわざわざ難しい言葉にしたんやろなあ。」
2017-10-05 09:59:45「だから三人称単数つうのはあいつ、こいつ、それ、これ。私でもあなたでもない、一個のもの。三人称複数やったら、あいつ、はどうなる…?そう、あいつら。で、こいつら、それら、これら。ああ、ややこしいなあ。」
2017-10-05 10:02:06「正式な呼び名は三人称単数のエスなんやけど、俺たちの間では「ひーとかしーとかのエス」と呼んでおこう。ただ、他人に言うと分からんから、そういうときだけ知ったかぶりして三人称単数のエス、って言ってやったらいい。」 こんな風に順を追って教えると、子どもは納得しやすい。
2017-10-05 10:04:11実は教科書も、分かりやすい実例を先に示し、それらの特徴に共通するものの名称として、概念の総称を伝える。絶対値とか三人称単数のエスとか。しかしどうも授業では、概念の中身が子どもたちの中で成熟する前に概念名を教え、さっさと応用に入ろうとする。これでは頭がついていかない。
2017-10-05 10:07:21本当は教えずに本人に発見させるのが一番。たとえば黒板にI, You, He, Sheを主語にした文章をたくさん列挙する(ただし動詞や目的語は共通にしておく)。そして「何か気がつくかな?」とだけ言っておく。隣同士で「あれだよな?」とざわつき、どうやら全員が気がつくまで待つ。
2017-10-05 10:17:16「ひーとかしーには、2番目の言葉にエスがついてる!」と答えなら「大正解!よく気がついたね。じゃあ、この文章は?」IとかSheとかの主語の文章を書いて、エスがついた方がよいかどうかを考えさせる。「ひーだからエスが要る!」子どもは法則性に気づいて、すぐ答えられるようになるだろう。
2017-10-05 10:21:12こうしてHeとかSheが主語の時にはエスがつく、という体験が十分に蓄積したら、ItとかA dogとかにも手を広げていく。子どもは法則の延長線上にあることにすぐ気がつき、クイズに答える気分ですぐにマスターできるだろう。
2017-10-05 10:23:29体験を十分に蓄積し、子どもの中に概念が育ってきたと見たら、そのとき初めて、その概念には名前があることを教えてやればよい。しかしどうも教科書で習う言葉はしかつめらしくて覚えにくいから、「ひーとかしーとかのエス」というアダ名で呼ぶことにしたらよいと思う。その方が正式名も覚えやすい。
2017-10-05 10:26:51自分で法則性を見つけ、体験を蓄積し、概念が子どもの中で育ってきたら初めてその概念に名前をつける。ただし名前は正式名でなくてもよく、「とりあえずのアダ名」で構わない。正式名はずっと後で知ればよい。その方が応用力がすぐ身に付くからだ。
2017-10-05 10:29:23