編集部イチオシ

【悪堕ちシナリオ】敵幹部でありながら終盤まで主人公に寄り添ったヒロインの末路

主人公と共に旅をしていたヒロインが悪堕ちするというのもいいのですが、自分が「最終的に主人公に倒されるべき存在」であることを知った上で、主人公と一緒に旅をしていた状況の方が、より良いと思うのです。
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悪堕研究機構 @utakuochi

ヒタヒタと、一歩ずつ彼に向かって歩みを進める、その一歩を踏みしめるごとに、心の奥底から湧き上がる感情に、私の心が塗り替えられていく。 目の前にいるのは、私が好きだった彼。 私を受け入れてくれた彼。 私を信用してくれた彼。 私の笑顔を何より喜んでくれた彼。 彼のために尽くしたい。

2017-11-04 21:27:15
悪堕研究機構 @utakuochi

彼に私の身体を捧げたい。 彼と私は一つになりたい。 彼を愛したい。 彼の全てを手に入れたい。 彼を 「食べたい」 私が彼に向かって突き出した鉤爪を、彼は動けるようになった身体でかわした。 だけど彼は完全にかわすことができず、彼の左肩を私の右手が少しだけかすめた。

2017-11-04 21:34:16
悪堕研究機構 @utakuochi

私の右手を少しだけ染める、彼の血。 その彼の傷は、治療魔法を掛ければすぐにでも塞がるような軽傷だったから、この後の戦闘に支障はないだろう。 私の不意打ちを受けて後ずさった彼の目の前で、私は右手に付着した彼の血をぺろりと舐めた。 「ああ……美味しいわ……身体が蕩けてしまいそう」

2017-11-04 21:40:59
悪堕研究機構 @utakuochi

思い……出してきた。 首領が私にくれたのは、悪魔をベースにした怪人の姿。 この翼も、この角も、この尻尾も……人体を切り裂くこの鉤爪も。 首領の下にいたときに、この力で敵対する何人もの人々を殺害した。 首領は私の力を褒めてくれた。 血に染まった私の身体を美しいと言ってくれた。

2017-11-04 21:49:44
悪堕研究機構 @utakuochi

血をすすり、肉を喰らい、臓物に顔を埋めたいと思う衝動は、私の中の悪魔がそうさせ、更には私が好意を向けている人物ほどその衝動が高まるのであろう。 首領は……私が無意識に対象から外しているのか、それとも首領がそう私を改造したのかは分からないが、捕食の対象ではなかった。

2017-11-04 21:55:17
悪堕研究機構 @utakuochi

だからこれが、私の本当の、人間の愛し方。 愛する故に、その存在の全てを喰らい尽くしたいと思う。 私の怪人としての、悪魔の身体がそうさせる。 やっと見つけた。 本当に、本当の私を曝け出せる相手が。 彼が……彼の優しさがそうさせる。 目の前の彼の全てが、一挙手一投足が愛おしい。

2017-11-04 22:03:20
悪堕研究機構 @utakuochi

その反面、私は安堵している。 ここまでくれば、彼も本気を出さざるを得ない。 本当の姿を見せた私が、人間らしく愛しようとするのならともかく、自分を殺そうとしてくるのであれば、なおさら抵抗しなければならない。 ここまで紆余曲折あったけど、当初の目的は達成されそうだ。

2017-11-04 22:08:14
悪堕研究機構 @utakuochi

「どう? これで私があなたに嘘偽りを言っていないこと、私が本気であなたと戦いたいこと、信じてくれた?」 「ああ、信じるさ。だからこそ目を覚まさせなきゃいけないって思う」 「あら、私は正気だって、この姿が本当の私だって言っているのに、どうやって目を覚まさせるのかしら?」

2017-11-04 22:15:53
悪堕研究機構 @utakuochi

「そりゃ、お前を一発ぶん殴ってみてから考えるよ」 ふふ……やっぱりあなたは、面白い人。 これまで十分に楽しませてもらったよ。 でも……私はここまでかな。 あなたが勝っても、私が勝っても、人間としての私はいなくなる。 後のことは本当の私に任せて、私は眠るよ。 おやすみなさい

2017-11-04 22:20:50
悪堕研究機構 @utakuochi

……… …… … 結末がどうなったかって? ふふ、あなた達はどうなったと思う? 私が語り部になっているから、私は生き残ったと思う? でもこの語りは、もしかしたら私が死ぬ間際の走馬灯だったのかもしれないでしょ。 あなた達が信じれば、もしかしたら結末が変わるかもしれないよ……

2017-11-04 22:30:28

上記アンケートで「主人公とヒロインが相討ちになった」が選ばれたため続きます。

悪堕研究機構 @utakuochi

それはもう、俺と彼女との「決闘」という、言葉で定義できる戦いを超えていた。俺が彼女の命を奪うか、彼女が俺に勝って俺の全てを喰らってしまうか、どちらかの命が終わるまで決して決着がつかない戦い。 「お前を一発ぶん殴ってみてから考えるよ」 そうは言ってみたものの、状況は悪化していった。

2017-11-05 21:35:26
悪堕研究機構 @utakuochi

一発殴る毎に、一太刀浴びせる毎に、彼女の狂気はエスカレートしていった。 最初は戦闘中であっても、かつての彼女の片鱗が見られるような言葉を交わしていたが、痛みを伴う毎に理性の皮が一枚ずつ剥がれ落ちていくかのように語彙力を失い、同時に攻撃が激しくなっていった。

2017-11-05 21:43:22
悪堕研究機構 @utakuochi

理性は失っていったが、彼女の行動を支える軸の部分は決して失われていなかった。 愛する人の全てを喰らうという衝動。 俺の血、俺の肉、俺の臓物……もちろん俺が死んでしまうからそんなものは渡せない。 激化する彼女の攻撃を紙一重で避けながら現状を打開する方法を探っていた。

2017-11-05 21:50:43
悪堕研究機構 @utakuochi

「ア……アア……オイシイ……」 彼女はというと、彼女の両手に付着した血や、返り血を美味しそうに舐め取りながら、あろうことか俺の目の前で自分の豊満な胸を揉み、自分の秘部を弄くり回しながら身悶えていた。 なんだ、これは。 もう、食欲と性欲の区別もついていないのではないか。

2017-11-05 21:54:36
悪堕研究機構 @utakuochi

もう何年も彼女と旅をしてきた。 何回も寝食を共にして、彼女のことは十分に理解していたつもりだった。 でもそれは、「人間」という枠組みの中に収まっていた彼女を理解していたに過ぎない。 彼女の存在意義に関わる、根底にある人知を超越した部分まで、人間の俺は理解できていなかった。

2017-11-05 21:59:28
悪堕研究機構 @utakuochi

思うに、彼女はそういう存在として首領に生み出されたのだ。 首領、ただの一人を守るための存在として……だから、それ以外の命は彼女にとって全く等価ではない。 なんなら、首領さえ無事なら組織のすべてが崩壊してもいい、くらいに考えていたのだろう。 唯一の例外が、俺とその仲間たちか。

2017-11-05 22:02:56
悪堕研究機構 @utakuochi

彼女と首領は、愛し、愛される関係であることは間違いない。 でもそれは、例えば親が子を愛し、子が親を信頼するようなもので、彼女が感じていたのは忠誠心に対する首領の寵愛、だったのだろう。 だから、決して彼女は首領を喰らおうとはしない。 首領が生きている事自体が、彼女の存在意義だった。

2017-11-05 22:07:44
悪堕研究機構 @utakuochi

首領が、彼女を一人の女性としてこの世に送り出したのは、恐らく、首領の下にいるだけでは理解できない、人間としての感情を知って欲しかったからだろう。 そうやって普通の人間として成長した彼女を再び首領は組織に受け入れたかった。 従順な機械や羅刹といったモノではなく、等価な人間として。

2017-11-05 22:15:57
悪堕研究機構 @utakuochi

果たして彼女は、俺との旅の中で、いい意味で等価な愛を知った。 与えられるだけの愛ではなく、愛に対する見返りも必要ない。 ただ他人を好きになって良いという、他人との一体化。 でもそれは、彼女の奥底にある「本当の彼女」と結び付いて、人間としては歪な形で、いまここで発現してしまった。

2017-11-05 22:24:50
悪堕研究機構 @utakuochi

でも……逆に考えれば、これが「本当の彼女」。 等価な愛を知ることで、真に覚醒することができた彼女。 だから目の前の彼女がどんな怪物であれ、俺はその現実を受け入れる必要がある。 まぁ……いま俺が対峙しているのは、まさしく“鬼神”という表現が相応しいほどの怪物なのだが。

2017-11-05 22:31:58
悪堕研究機構 @utakuochi

「私を倒したいという気持ちは、その男と同じかね?」 首領のこの問いが、いまになって重くのしかかってくる。 首領は、本当にどういう回答が返ってきても受け入れるつもりだったのだろう。 でも、彼女は「はい」とは答えなかった。 「いいえ」でもなかった。 俺との決闘の結果で決めると。

2017-11-05 22:39:55
悪堕研究機構 @utakuochi

自由意志を得て、俺と旅をして、俺の気持ちを汲み取ってくれていたとしても、彼女の中には首領を倒すという選択肢がなかったのだ。 だから、首領の命が助かって、俺の目的を果たせるように首領に提案した。 首領は、どっちが勝っても運命を受け入れるつもりでいた。 俺が勝ったら組織は解散する。

2017-11-05 22:46:37
悪堕研究機構 @utakuochi

それは、最高戦力である彼女を失う事実からもそうなるし、何より彼女が自ら与えた自由意志でそう渇望したのだから受け入れざるを得ない。 もちろん彼女が勝てば、筋書き……望み通り一人の女性として自分の下に戻ってくる。 だから後悔しないよう、その勝敗はお互いが全力で、という条件が付く。

2017-11-05 22:50:42
悪堕研究機構 @utakuochi

首領は、彼女が鬼神と化すことを知っていた。 だから自分がその覚醒の邪魔にならないように退避して、俺と彼女の二人をこの空間に預けた。 ここまで来ても奴の筋書き通りだったのかと思うと反吐が出るからこれ以上考えないことにする。

2017-11-05 22:52:48