2017年11月5日

ことさんによるサイモン・シン「代替医療解剖」書評・解説

すっかり読んだ気になってしまう書評(ほめ言葉) サイモン・シンほどの人でも、やはり代替医療についてはついつい怒りが先にきてしまうのかなとも思いました
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こと @coto_labo

【読了】『代替医療解剖 (新潮文庫)』サイモン シン ☆3 booklog.jp/item/1/4102159… #booklog

2017-11-04 19:01:04
こと @coto_labo

というわけで『代替医療解剖』を読了。代替医療の問題についてはかなり前から気になっていて、一度時間をかけてしっかりした本を読んでひと通りの基本事項を頭に入れたいとおもっていた。そして代替医療を批判をするにしてもどういうロジックの組み立て方があるのかを見ておきたかった。

2017-11-04 19:04:08
こと @coto_labo

科学的なデータに基づいて代替医療を分析した一般向けの書物はきっとたくさんあるんだろうけど、文庫でお手軽に手に入り評価も高い本となるとやはり『代替医療解剖』だろう。サイモン・シンといえば自然科学の話題を一般向けにわかりやすく解説した数々の著作で本邦でもすっかりおなじみである。

2017-11-04 19:06:19
こと @coto_labo

期待通り、本書のクオリティは高い。医療の有効性を適切に評価するには一体どのような試験が必要なのか、医療の歴史をひもときながら初心者にもわかりやすく解説されている。最初に「科学的根拠に基づく医療(EBM)」の基本を解説した上で具体例を見ていく構成なので、なにより明快である。

2017-11-04 19:11:17
こと @coto_labo

また著者にエツァート・エルンストが加わり、科学的なデータの取り扱いや分析など専門性が要求される場面での情報の確度、信頼性を一段高いものにすることに貢献しているとおもわれる。そして代替医療に対して本書が下している評価も十分納得できるとおもう、「科学的な視点に限定すれば」。

2017-11-04 19:13:45
こと @coto_labo

実際科学的な分析についてはまったく申し分ない。といっても素人のわたしが厳密に判定できるわけではないけれど、科学的な分析に重大なまちがいがあれば辛い評価がつけられているはずで、その点はひとまず信頼してよいだろう。しかし、この「科学的な視点に限定すれば」というのが相当曲者。

2017-11-04 19:16:35
こと @coto_labo

たしかに代替医療の有効性や安全性に論点をしぼるなら、本書の結論は妥当である。仮にわたしが主流の医療に不満を持ったとしても、有効性や安全性の不確かな、あるいはプラセボ以上の効果が見込めなかったり危険があったりする代替医療に手を出したいとはおもわないだろう。その点に異論はない。

2017-11-04 19:19:41
こと @coto_labo

しかし本書の主張は「医療はどうあるべきか」にまで射程がおよんでいる。そうなると「代替医療の有効性や安全性を検証したらこうなりました」という科学的な視点だけで「だからこうすべき」と結論を急げば当然無理が生じてくる。事実、本書の6章はかなり議論が粗いと言わざるをえない。

2017-11-04 19:23:59
こと @coto_labo

たとえば著者らは「効果が証明されていない、または反証された医療を広めた責任者トップテン」と題して、さまざまな人たちを批判する。メディアを「代替医療に対しては、あまりに肯定的、かつ素朴な見方を示す傾向」がある一方で「通常医療のリスクをセンセーショナルに報道する」と批判している。

2017-11-04 19:25:29
こと @coto_labo

メディアに対する本書の指摘はたしかに当を得たものである。しかしそもそも「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる」と言われるように、ニュースの価値は必ずしも内容の正確さだけで決まるとは言えず、情報の意外性やもの珍しさで決まる面も多分にある。

2017-11-04 19:28:31
こと @coto_labo

この前提に立てば、メディアが代替医療を肯定的、通常医療のリスクを批判的に報じるのだとすると、それは代替医療が(よくて)玉石混淆、通常医療は信用できるというのが世間の相場だという状況の裏返しと解釈すべきことであり、それは著者らにとっても悲観すべきことではないはずである。

2017-11-04 19:30:25
こと @coto_labo

ところが著者らは「(主流の医療に対して)新聞や放送局はいたずらに攻撃的」「小さな問題を大きな恐怖にふくらませたり、暫定的な調査結果を、国全体の医療にとっての脅威に仕立てたいという気持ちに逆らえないようである」などと「想像力」をたくましくしながらメディア批判を展開する。

2017-11-04 19:31:42
こと @coto_labo

メディアに批判されるべき点があることに異論はない。しかし一方でメディアとはそういう性質を持った存在であり、踏みこんだ批判をしようとすれば情報の受け手になっている大衆への批判もさけて通れない。それにしては本書のメディア批判はあまりに表面的だし稚拙と言わざるをえない。

2017-11-04 19:33:35
こと @coto_labo

また著者らは「政府と規制担当当局」にも責任があるとする。政府は規制をするなどして「積極的な役割を果たすべき」だが「政府は代替医療に穏便な対処」をしており、「政府は……あいまいに逃げてきた」と主張する。たしかに科学的な検証結果と現実を見比べてそのように結論したくなるのは理解できる。

2017-11-04 20:23:05
こと @coto_labo

しかしたとえば日本の場合を見ても、医療行為については国が資格を与える制度設計になっているし、医薬品などについても薬事法で規制がなされている。ルールを満たしていないものについては品質の保証はありませんという形で、規制の内側と外側とで線は引かれているわけである。

2017-11-04 20:25:44
こと @coto_labo

著者らは「代替医療は安全性を問われない別世界のなかで、ほとんど規制を受けずにすんでいた」と主張するけれども、そもそも医療制度の枠組みの外側と内側とが同等の条件でないのは当然の話だし、枠組みの外側でやっている人たちに内側でやらないのはおかしいと言う筋合いもないだろう。

2017-11-04 20:27:40
こと @coto_labo

もちろんそれだけでは一般の消費者が被害を受ける危険もあるので、消費者保護のために政府が規制をきびしくするという方向の議論はあってもよいとおもう。しかし代替医療の包括的な規制となると政府の介入がかなり強力になるので、相当慎重でなければべつの問題が生じる危険性が高い。

2017-11-04 20:29:16
こと @coto_labo

たとえば本書の付録の「代替医療便覧」にはさまざまな代替医療が列挙されており、その中にはどういうわけか風水が登場する。著者らは風水を「代替医療」だと認識しているようだけど、風水は占いの類であって、少なくとも医療介入でないことは明白である。

2017-11-04 20:33:00
こと @coto_labo

占いの類まで「代替医療」にふくめて議論するということは、つまり著者らは占いの類であっても規制の対象にすべきと考えていることに他ならない。そうなると著者らが好むと好まざるとにかかわらず、オカルトはもちろん神秘を主張する宗教なども規制の射程に入らざるをえなくなってくるだろう。

2017-11-04 20:35:03
こと @coto_labo

問題はそこまで巨大な権限を政府に認めるべきかどうかを科学的な視点だけに基づいて決めることの妥当性である。「政府は……代替医療産業と対立するのを恐れているのかも」だの「有権者の気分を害したくないのかも」だのといった推測はもはや行政に対する無知を露呈するものでしかない。

2017-11-04 20:37:14
こと @coto_labo

著者らは医師たちにも問題があると主張する。この点については一理ある。とくに「(患者が)代替医療を使うきっかけの少なくとも一部は通常医療への失望である」という指摘は重要である。ただ、個々の医師の態度が通常医療への失望を生む原因のすべてなのかという点はもっと掘り下げるべきだろう。

2017-11-04 20:44:21
こと @coto_labo

主流の医療では医師の診察時間が短くなりがちで、しかし診察時間を長くするためには莫大な予算が必要になる。この点は一応言及されているけど、課題はそれだけではないだろう。国ごとに事情はちがうものの、たとえば待ち時間が長すぎるだとか、そもそも病院へ行くにしても制約があるだとか。

2017-11-04 20:48:00
こと @coto_labo

アメリカにいたっては医療費が相当高額で、お金もなく保険にも入っていない人にしてみれば、代替医療の方が安ければそっちに行くことは十分考えられることだろう。「セレブリティ」が代替医療を選択することについては本書でも言及されているものの、他方でお金のない人にも事情があるわけである。

2017-11-04 20:49:48
こと @coto_labo

「政府と規制担当当局」によって解決されるべき医療の課題には、こうしたことも少なからずふくまれるとわたしはおもうけれど、本書は「政府と規制担当当局」に対しては規制のあり方を問題にするばかりで、医療保険制度全体をどうすべきかという視点を欠いているようにおもう。

2017-11-04 20:51:37
こと @coto_labo

たとえば本書は「スモールウッド・レポート」について、「彼とその研究チームは医療経済を専門としているわけではなく、実際、代替医療に関する研究データの読み方はあまりにも甘い」と批判を加えている。なるほど、科学的な視点に基づいてこのレポートを切って捨てるのはたやすい。

2017-11-04 20:53:59
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