はんちょ〜さんの百合ゾン 夏イベント編1

水着回だよ!
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はんちょ〜 @Hantipede

◆どくしゃの皆さまへ:今回からユリブレが新しくなりました。読者層の増加による見落とし現象の心配の解消により、ユリブレの簡略化がじつげん致しました。ひとえに皆さまのご愛読の賜物です。今夜もごゆっくりお愉しみください◆

2017-11-13 22:55:18
はんちょ〜 @Hantipede

◆それと今回から水着回です◆

2017-11-13 22:56:24
はんちょ〜 @Hantipede

「ここが一番広ーい砂浜だよ!ヒャアー!水死体!!」くくろのはしゃぐ声が青空へ吸い込まれていく。モルグ、『東風屋』関係者と一部の者らで集まって、水着と食材を持ち寄っての海岸バーベキューパーティーが開かれることになったのだ。「水死体は無ェだろ流石に」「つかこの島、俺ら以外にいるの?」

2017-11-13 23:03:03
はんちょ〜 @Hantipede

「他にもお呼びした人はいたんですがァ、ご予定が合わなかったようですねェ」不自然な大きさの胸を特注の水着に収めた、百足の尾を生やした女性がニヤニヤとした笑みを張りつかせて言う。「れみさばさんとかァ……」「そりゃ来ないでしょ」「見てみたかったなぁ」一部の者達はあからさまに肩を落とす。

2017-11-13 23:10:11
はんちょ〜 @Hantipede

「というかなァ」金髪アシンメトリー・ヘアスタイルの、紙巻き煙草を咥えた少女が前に出る。如何にも本意ではないといった目つきで百足女性を睨む。「なんでわざわざ水着なんだよ」「エー?だって海岸でやるんなら見たいじゃないですか、水着」提案元は違うものの、水着要素をねじ込んだのは彼女だ。

2017-11-13 23:15:48
はんちょ〜 @Hantipede

「いがしょうさん、可愛いよ?」横からくくろが並び立つ。いつもの仕事着の上に羽織る白衣の下に、今日は可愛らしいフリフリのついた黒水着を纏っている。くくろは、彼女よりやや背が高い。「そういう問題じゃなくてなぁ」「……照れたりしないんですね?」「アンジェが可愛いのは当たり前だろうが」

2017-11-13 23:24:29
はんちょ〜 @Hantipede

いがしょうの着ている水着はくくろの着ていたものによく似たデザインをしていた。開催前に、くくろが水着の話を出したところ、携帯端末をいじりながら「似たようなモンでいい」と生返事で返した結果だ。「だがな。ここで鏡は出すんじゃねえぞ。出したヤツはもれなくコンティニュー後にぶちのめす」

2017-11-13 23:32:13
はんちょ〜 @Hantipede

「バーベキューに豆腐ってどう思う」「ちょっと柔らかすぎて串から外れちゃわない?」『東風屋』の面々はバーベキューにおける豆腐の是非について議論を繰り広げていた。「やべーよアタシ豆腐しか持ってきてない」「マジすかとーふやさん」「正直言うと皆をアテにしてました」「クソかな?」どよめき。

2017-11-13 23:41:33
はんちょ〜 @Hantipede

「ざっけんなこらー」「バーベキュー持参食材が豆腐だけってやる気あんのかおらー」「せめて木綿豆腐ならワンチャンあったぞおらー(TL集合知)」「ふええーん……」客達はおふざけ半分でへたり込むとーふやへ弱々しくキック。顔を覆うとーふや。「何やってんだあいつら……」いがしょうが呆れた。

2017-11-13 23:57:37
はんちょ〜 @Hantipede

「俺ら何も持ってきてないよな」いがしょうはくくろを振り返り言う。「うん」「どうするよ?俺らそこで蹴られてるぬキチ以下だぞ」「うーん」腕を組み、瞬き1つせず虚空を見つめて考え込むくくろ。すぐに何か思いついたように顔を上向ける。「ヒャアー!現地調達!」森へ走り出す!「あっ、おい!?」

2017-11-14 00:05:22
はんちょ〜 @Hantipede

「行っちまった。どうするかな」いがしょうは頭を掻いた。「まぁ、あいつが採ってくるとしたら動物だろうし。妙なもの摘んで来たりはしねえだろ」追加の煙草を咥えて火を点けると、彼女は『東風屋』の面々と合流しに行った。向こうではほぼ全員が集まり、既に持ち寄ったものを焼き始めていた。

2017-11-14 00:12:47
はんちょ〜 @Hantipede

コンロの周りでは、もう既に皆が食べ始めていた。砂浜に立てられたパラソルの下で、体育座りをした眼鏡の少女が深く溜息をついた。「よっ、どしたの?」見上げると、フランクな雰囲気の少女が見下ろしている。「あ……百景ちゃん」「くろぐだちゃんどしたの?混ざんないの?」「うーん…」曖昧な返事。

2017-11-14 00:23:29
はんちょ〜 @Hantipede

「だってせっかく……」百景はしゃがみ込み、くろぐだの髪に触れる。「こんなに一念発起、イメチェンしたのに?みんなに見てもらうチャンスでしょ。新卵さんよろしく、新くろぐだちゃんッ。みたいな」「やめてよー」くろぐだは困ったように笑う。彼女の髪は黒から、明るいクリーム色に染められていた。

2017-11-14 00:28:26
はんちょ〜 @Hantipede

「勿体ないって。ほら、行こ行こ」「私は……!」くろぐだが強く口にする。百景は咄嗟に力を緩め、彼女の次の言葉を待った。「私が、ここまでしたのは」彼女は自分の髪を撫で、指で梳いた。「貴女に見せるため、だから。百景ちゃんが見てくれてたら、私はそれでいいの」「っ……」百景は黙り込んだ。

2017-11-14 00:33:43
はんちょ〜 @Hantipede

だが。百景は顔を赤らめながらも口を尖らせ、なおもくろぐだの手を取ってを引っ張りあげようとする。「え、ちょッ、なんで。今の流れだと百景ちゃんも座るやつじゃ」「それでもっ、それでもあたしは意地でもくろぐだちゃんを日陰から出すもん。あんたがそうでなくとも、あたしが見てほしいから、皆に」

2017-11-14 00:38:20
はんちょ〜 @Hantipede

「や、でも私は……」「あたしは…!」今度は百景が語調を強めた。「ぶっちゃけるとさ、皆に見せびらかしたいんだ。明るく染めたその髪も。その水着も。そりゃ、面子はあんなだから埋もれちゃうかもしれないけど、そんなのあたしも同じだから」にっ、と白い歯を見せる。

2017-11-14 00:43:27
はんちょ〜 @Hantipede

百景は心底嬉しそうに笑いながら続ける。「そんでさ、あたし皆にこう言ってやんのよ。『どうよ、あたしの彼女は可愛いでしょ』ってさ!」「か、彼女って……」くろぐだの顔が耳まで赤くなる。「こっからが、あたしらのスタートラインなんだよ。こっから皆に混ざって、面白おかしく日を過ごすんだ…!」

2017-11-14 00:48:26
はんちょ〜 @Hantipede

ついに百景の腕力がくろぐだの体重を引き上げた。よろめく彼女を支えてやりながら、百景はくろぐだの手を引いて、美味しそうな匂いのする方へ、美女美少女ばかりの人だかりへ駆け込んでいく。

2017-11-14 00:52:04
はんちょ〜 @Hantipede

先ほどまでくろぐだが座り込んでいたビーチパラソルの下、置き去りにされていた半開きの鞄からプラモデルの上半身が覗いていた。日が昇りきり、影が移動したことでそれが日陰から顔を出す。プラモデルは輪に入っていく持ち主の背中を見届けながら、燦々と降り注ぐ陽の光を浴びて誇らしげに輝いていた。

2017-11-14 00:55:11
はんちょ〜 @Hantipede

ガサッ。ガサガサ。草むらを揺らす大きな影。潜んでいたのは……。「ヒャアー!!」可愛らしい水着姿の狂乱死体回収人くくろ。森の中を随分と進んできたが、彼女は妙な違和感を覚えていた。「今日は動物が少ないなー」一言ぼやいて、さらに森の奥へ。やがて。「う」異臭。「うー、この臭いは……」

2017-11-14 00:59:05
はんちょ〜 @Hantipede

くくろはこの臭いに覚えがあった。遠目に、以前に見た、あの紫色の沼。だが、先へ進まねばならない。ガサガサと分け入って進んでいき……ゴボッ。ガボガボ。「?」沼を通り過ぎようとしたところで、異音。くくろが振り向くと、ドボォ!と沼が飛沫を上げ、何かが勢いよく中から飛び出した!

2017-11-14 01:05:38
はんちょ〜 @Hantipede

くくろの頭上を飛び越え、どちゃりと地面に身をなげうつ物体!ナ、ナムアミダブツ!その正体は紫色に染まった鹿である!「ブクブクゴポゴポドクドク……」さらにあぶく!くくろは咄嗟に身を屈めて息を潜める!ドボーン!またも何かが沼から飛び出す!今度のものは空中で回転し、彼女の近くに見事着地!

2017-11-14 01:10:25
はんちょ〜 @Hantipede

今度は人型。女性であった。紫色に染まった羊めいた獣毛、その肢体を忍び装束のような衣装に包む。「おおー。初めまして。私はどくどくウールといいます。ここに来てから人は初めて見ましたね。あなた、どくタイプですね?イヤーッ!」女性は間髪入れず腕を振るう!手先から紫色の液体弾射出!

2017-11-14 01:14:58
はんちょ〜 @Hantipede

「ヒャアーッ!」くくろは横に飛んでこれを回避!「ねェアンタ!その鹿どうしてるの?食ってないよね?道理で動物が少ないと思った!」「ええ、ええ。鹿さんですね。やはり、ここの鹿さんはポケモンではないようです。残念です」「ヒャアーッ!」くくろは高く跳躍し、どくどくウールへ鉈を投げつけた!

2017-11-14 01:20:10