ZK #2

あの潜水新棲姫の出現位置は本当におかしい。 1:https://togetter.com/li/1174856 3:https://togetter.com/li/1176541
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劉度 @arther456

無人となったミデルブルフの街を走る集団がいた。「クソッタレ……どいつもこいつも、あっという間に逃げやがって!」「ボヤいてる暇があったら進めぇ!」港湾夏姫たちと話し合っていた賢治たちである。公民館にあったシェルターから出て、内陸部に向けて逃げているところだった。24

2017-11-26 22:03:02
劉度 @arther456

砲撃をやり過ごすためにシェルターに入った賢治たちだったが、深海棲艦が堤防を破壊したとラジオで聞き、慌てて外に出た。彼らが乗ってきた車は、不運にも砲撃を受け破壊されていた。オランダ市民たちに周りを気遣う余裕など無い。取り残された彼らは、徒歩で避難することになった。25

2017-11-26 22:06:02
劉度 @arther456

「どこまで逃げればいいんだ?」「とにかく西へ。海から離れないと」港湾夏姫が答える。「あっ」先頭を行くチェンが声を上げた。「どうした?」「しまった……チクショウ、橋が流されてる!」チェンが言う通り、ミデルブルフの西にある川に掛かった橋が、増水によって流されていた。26

2017-11-26 22:09:00
劉度 @arther456

「渡ればいいだろう、こんなもの」装甲空母姫が偽装を解き、深海棲艦の姿をとった。彼女たちにとって、水は地面と同じだ。「背負ってやる。早く来い」「待て、上を見ろ!」見上げると、深海の艦載機が飛んでいた。「……ああ?」その艦載機が、装甲空母姫めがけ、爆弾を投下した。27

2017-11-26 22:12:01
劉度 @arther456

「ッ!隠れろ!」賢治たちが慌てて建物の影に隠れる。装甲空母姫が防御姿勢を取った直後、爆弾が炸裂した。「……ッ!」直撃はしなかったが、破片が彼女の体を打つ。「無事か、お前ら!」「な、なんとか……」賢治たちは全員、被害を受けずに済んだ。28

2017-11-26 22:15:01
劉度 @arther456

装甲空母姫は、忌々しげに空を見上げる。あの艦載機は、彼女が深海棲艦だとわかっていたはずだ。なのに、ためらいなく爆弾を落としてきた。彼女は港湾夏姫を見た。顔色が青い。「おい……ほかの深海棲艦はどうしている!?」港湾夏姫は答えず、首を横に振った。「どうなっているっ!?」29

2017-11-26 22:18:05
劉度 @arther456

ぱしゃん、と足元で水音が鳴った。堤防から流れ込む海水が、こんなところまで流れ込んできている。「まずいね」シェルターの入り口から空を見上げる女性は、そう呟いた。このシェルターも長くは保たない。高い所に避難する必要がある。彼女は画材を入れたカバンを握り締めた。31

2017-11-26 22:21:02
劉度 @arther456

「うえええええ!」「ひっぐ……えっぐ……」女性の背中に、子供の鳴き声が降り掛かった。「あーもう。泣くんじゃないよ」シェルターの中には、逃げられなかった10人ぐらいの子供がいる。流れ込んでくる海水が、溺死への恐怖を煽る。実際、あと1時間もすればこのシェルターは水没するだろう。32

2017-11-26 22:24:00
劉度 @arther456

かといって、外に出れば航空機に蜂の巣にされる。「……仕方ないか」女性は意を決し、子供たちに呼びかけた。「いいか、あんたら。これからおねーさんがあの飛行機を、ちょっとだけ止めてやる。その間に、走って高い所に逃げろ」「え?」困惑する子供たちに背を向け、女性は外に出た。33

2017-11-26 22:27:00
劉度 @arther456

爆撃機を見上げる彼女の体が、変質していく。服が破れ、肌は青白くなり、それらを黒い装甲が覆う。艤装を解いた重巡ネ級は、頭上の爆撃機へ手を振った。仲間がいるとわかれば、深海艦載機は攻撃を控えるだろう。「さ、あんた達。逃げるなら今のうちだよ」シェルターへ振り返る。34

2017-11-26 22:30:04
劉度 @arther456

爆発が起こり、ネ級ははシェルターの入り口に叩きつけられた。子供たちの前に、頭が半分吹き飛び、胸部が大きくへこんだネ級が転がった。子供たちは悲鳴を上げて、水が流れ込むシェルターの奥へと逃げ込む。そこに、深海の爆撃機は2度目の爆撃を行った。35

2017-11-26 22:33:00