ZK #3

……あまり大きな声じゃ言えないけど、どうにも誤字の多いパートだ!気付いたら作者にリプってみよう!褒めてもらえるぞ! 2:https://togetter.com/li/1175506 4:https://togetter.com/li/1176894
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-11-28 21:01:03
劉度 @arther456

目標、ブロウェルス水門。姫が引き金を引くと、ボウガンから剣が打ち出された。魔力を蓄えた剣は、堤防に突き刺さると、大爆発を起こした。穿たれた大穴から、海水が流れ込み、街の水没を加速させる。これで2つ目。あと1つ、南の大堤防を破壊すれば、ゼーランド州は沈む。1

2017-11-28 21:03:01
劉度 @arther456

「ちょっと、どういうことなの、あれは!」怒声を浴びせてきたのは、スエズからやってきた戦艦仏(ブッダ)棲姫だ。「あら、どうしたの、タロスのお姫様?」「陸地に同胞がいて、それをあなたの艦載機が爆撃したわ!」「それが?」「同胞を殺すなんて、一言も聞いてないわよ!?どうなってるの!?」2

2017-11-28 21:06:03
劉度 @arther456

「裏切り者よ」姫はあっさりと言った。「深海棲艦なのに、人間と一緒に住んでる愚か者どもよ」「だからって皆殺しにするつもり!?せめて降伏勧告を……」「バカなの?」戦艦仏棲姫の言葉を、弩の姫は冷たく斬り捨てる。「あんなの、生かしておく必要は無いわ」「だけど……ッ!」3

2017-11-28 21:09:01
劉度 @arther456

「それに、生きてるだけで迷惑なのよ。深海棲艦の癖に戦わずに、のうのうと生きてるなんて。しかも、人間の街で暮らしてる、ですって?そんな頭のおかしい連中は同胞なんかじゃない。だから、こうして粛清しに来たの。わかる?」「だけどっ!同じ深海棲艦よ!」4

2017-11-28 21:12:01
劉度 @arther456

戦艦仏棲姫は歯噛みしている。その様子に弩の姫は呆れた。スエズを守る姫すら、くだらない仲間意識に縛られているのか。期待を裏切られた。「あなた、さっきの水門に戻りなさい。まだ穴が小さいから、あのタロスでメチャクチャに壊して、水を流し込むのよ」5

2017-11-28 21:15:03
劉度 @arther456

「それに何の意味が……」「いいから、やりなさい。この艦隊の司令官は私なのよ?」戦艦仏棲姫はまだ何か言いたそうだったが、踵を返し、部下の元へと戻っていった。「グラスゴー」「はい!」軽巡棲姫の1体が返事をする。「ここの穴から川を遡って、内陸部を攻撃しなさい」「わかりました!」6

2017-11-28 21:18:01
劉度 @arther456

軽巡棲姫に率いられ、50隻ほどの深海棲艦が堤防に空いた穴から内側へと侵入していく。早速人間を見つけたようで、岸に砲撃を放っていた。弩の姫は満足げに頷くと、南を向いた。「それじゃあ、私たちも行きましょうか」最後にして最大の大堤防に、完璧な楔を打ち込むために。7

2017-11-28 21:21:00
劉度 @arther456

爆弾が炸裂し、隠れていた建物から破片が降ってきた。「伏せろっ!」装甲空母姫は魔力シールドを展開し、破片から賢治たちを守る。頭上を深海艦載機が通り越していく。「よし、行け!走れ走れっ!」賢治たちはミデルブルフの中心地に向かって逆走していた。そこが一番、標高が高いからだ。9

2017-11-28 21:24:01
劉度 @arther456

ミデルブルフを含む、ジーランド州の6割は、既に水に浸かっていた。各地を結ぶ橋や堤防は寸断され、市民たちは逃げることができない。そこに爆撃が降り注ぐ。逃げる人々の中に深海棲艦が混ざっていようと、攻撃の手は止まない。敵は、この地にいる者全てを殺すつもりだった。10

2017-11-28 21:27:01
劉度 @arther456

「ふざけるな……限度があるだろうっ!」装甲空母姫は、憤りに身を焦がしていた。彼女とて深海棲艦である。戦争において都市を攻撃することを非難するつもりはない。だが、これは違う。単なる虐殺だ。はっきりそう言い切れるほどの感覚は持ち合わせていた。11

2017-11-28 21:30:05
劉度 @arther456

走る彼女たちの頭上を、ミサイルが飛び越していった。「なんだぁ!?」ミサイルは爆撃機の一群の中で炸裂!振り返れば、軍用トラックが、彼女たちへ向かってくるところだった。オランダ陸軍である!この非常事態に、なけなしの対空火器を持って参戦したのだ!12

2017-11-28 21:33:00
劉度 @arther456

「助かった!おーい、こっちです!助けてください!」賢治が手を振る。気付いたトラックが向かってきた。「逃げ遅れた市民だ!」兵士たちが降りてくる。そして銃を構えた。「えっ」「深海棲艦だ!」「撃てぇーっ!」狙いは装甲空母姫だ!銃弾が彼女の体を撃つ!13

2017-11-28 21:36:01
劉度 @arther456

「ちっ……ええい!」見事な勘違いだ。たまらず、装甲空母姫は路地裏に逃げ込んだ。「ちょっと、あなた達……」賢治の抗議の声は、再来した深海艦載機のエンジン音にかき消された。「もう来やがった!」「早く乗れ、急げ!」トラックは賢治たちを押し込み、走り去った。14

2017-11-28 21:39:00
劉度 @arther456

逃げた装甲空母姫たちは、最初の目的地である公民館へと逃げ込んだ。付き従うのは、港湾夏姫、将軍、アクィラ、その他、途中で合流したヲランダ人たちだ。生身の人間がいなくなった分、簡単に進むことはできた。だが、一団の雰囲気は暗い。逃げ場が本当に無くなったからだ。15

2017-11-28 21:42:02
劉度 @arther456

「何よ……どうして私たちまで……」「区別しろという方が無理だろう」《すみません……説得しようにも、オランダ語じゃ上手く説明できなくて》装甲空母姫が持つ通信機から、賢治が謝罪する。万が一のために持っていたものだ。お互いの安否がわかるのが、せめてもの救いだった。16

2017-11-28 21:45:03
劉度 @arther456

「そっちはどこに避難するんだ?」《南に向かってます。行き先はわかりませんが……》「南ってことは、フリジンゲンか?あそこは海軍の基地があっから、少しは安全だろうよ」ヲランダ人のツ級が答えた。「それならいい。むしろ、我々自身のことを考えた方がいいな」17

2017-11-28 21:48:01
劉度 @arther456

「……そんな、そこまでやるの!?」港湾夏姫が叫んだ。別の通信機に向かって呼びかけている。「どうした?」「侵攻軍が堤防の穴から、こっちに入ってきたわ!陸地に手当たり次第砲撃して、揚陸級まで出してきてるって!」彼女の言う通り、窓の外では砲撃によって次々と爆炎が上がっていた。18

2017-11-28 21:51:01
劉度 @arther456

「もはや許し難い……!」重巡リ級が立ち上がった。ヲランダ人ではない。イタリアの"将軍"だ。「何する気!?」「罪なき市民を手にかける所業、誠に許し難い!成敗致す!」「同感だ」アクィラも立ち上がった。「揚陸級も出てきたんじゃ、いずれ追い詰められる。戦うしかないぞ」19

2017-11-28 21:54:13
劉度 @arther456

「ちょ、ちょっと待って。でも……私たちが深海棲艦だって、人間に知られたらどうするのよ……?」港湾夏姫が震える声で言った。「大事の前だ。小事は気にするな」「小事って……私たちの今までの苦労を、水の泡にする気!?この暮らしになるまで、どれだけ時間がかかったと思ってるの!?」20

2017-11-28 21:57:01
劉度 @arther456

深海棲艦が人間社会に隠れ潜むまで、どれだけの苦労があったかは想像に難くない。変わった形とは言え、必死になって手に入れた平和をこんな形で失うことになるのは認められないのだろう。「なら、このまま死ぬか?」だが、戦わなければ生き残れないのも、厳然たる事実である。21

2017-11-28 22:00:10
劉度 @arther456

ヲランダ人とイタリア人が言い争う間で、装甲空母姫は考え続けていた。頭上の横暴は許せない。戦わなければいけない。だが、体の中を駆け巡る熱に身を任せ、同胞を屠った時、自分は深海棲艦ですらない、ただの獣に堕ちてしまうのではないだろうか。そうした恐れが、彼女を縛っている。22

2017-11-28 22:03:01