ZK　-瑞雲仮面-　＃４

劉度 @arther456

《待ってください、隊長！もう誰かが戦っています！》「何ィ！？」言われてみれば、前方で空戦が起きている。片方は見慣れた深海棲艦のもの。もう片方は緑色の水上機。見覚えがあった。「あれは……瑞雲だ！」《ご存知なのですか！？》「ああ、日本で見たことがある！」23

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フロート付きの爆撃機だというのに、瑞雲たちは果敢に深海攻撃機に挑んでいる。「ガッツのある奴らだ……スピットファイアが欲しいとは何度も思ったが、瑞雲を欲しいと思うことになるとはな！」感心はするが、活躍まで渡す気はない。飛行隊長の妖精さんはエンジンの出力を上げた。24

劉度 @arther456

「全機に告ぐ！瑞雲は味方だ！低速の攻撃機は彼らに任せろ！我々は戦闘機を引き受ける！」隊長は咥えていた葉巻を握り、座席の灰皿で押し潰した。「数を恐れるな！速さならこちらが上だ、一撃離脱を忘れるな！」《了解！》オランダの空に、歴戦の闘士たちが斬り込んだ。25

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「これ、本当にバレないんでしょうね……！？」ヲランダ人のまとめ役の港湾夏姫は、瑞雲仮面と瑞雲法被を身に纏い、瑞雲を投げていた。確かに、顔が見えないので、彼女が深海棲艦だと気づかれることはないが、何か大切なものを失っている気がする。それでも彼女は戦うしかない。27

劉度 @arther456

「艦載機を放って突撃……これが、瑞雲の力か！」隣の戦艦ル級は、感心していた。足の遅い旧式戦艦の彼女だが、カタパルトがあるので、瑞雲は使える。これで航空攻撃をしながら、敵に接近、砲を放つ。弱いとは言え戦艦砲、近距離で当たれば巡洋艦はひとたまりもない。28

劉度 @arther456

「ヲッ、ヲアーッ！ヲアアーッ！」後ろの空母ヲ級にそんな欠陥はない。ただ、戦うのが怖くて逃げ出し、ヲランダに隠れ住んでいただけだ。しかし、欧州棲姫による、人も深海棲艦も区別しない虐殺を目の当たりにしては、戦う道しか残されていなかった。涙目になりながら、瑞雲を投げ続ける。29

劉度 @arther456

ヲランダ人ははぐれ深海棲艦の集まりで、その目的も様々だ。しかし今は何を考えていようと関係がない。敵は、自分たちを殺そうとする欧州棲姫――全ての敵。そして彼女たちは瑞雲仮面と瑞雲法被を身に纏った戦士たち――ピンチを救う、ヒーローだからだ。30

劉度 @arther456

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「何のつもりかしら……？」欧州棲姫は、変転した戦況に対し、不快感を露わにした。水門を４つ壊し、いよいよオランダを沈めようとしたタイミングで、邪魔が入った。オランダに隠れ住んでいた深海棲艦たちが、妙な仮装で顔を隠し、こちらに牙を向いたのだ。しかも水上機まで飛ばしている。32

劉度 @arther456

「人間の味方？なんで？深海棲艦なのに？バカなの？」部下の中には、ヲランダ人の取った行動は、追いつめられたが故だと薄々気付いている者もいたが、口に出す勇気はなかった。「――イーグル。ヴェッセル水門へ前進。制空権を確保しなさい」「ハッ」空母棲姫が部下を連れ前進する。33

劉度 @arther456

脱走した深海棲艦が牙を向いた。ドイツの基地航空隊が来た。だからどうした。こちらの戦力はまだまだ残っている。それも精鋭、最新鋭だ。脱走兵や陸軍ごときに遅れを取る訳がない。「私たちに失敗は有り得ない。歯向かうのなら、泣き言も言えないぐらい、徹底的に叩き潰してあげるわ」34

劉度 @arther456

欧州棲姫は全部隊に通信を送る。総攻撃の指令だ。敵がここで決死の抵抗をするのなら、それを全力で叩き潰す。「……なんですって？」だが、欧州棲姫は帰ってきた返事に耳を疑った。それはオランダ包囲網の北端と南端からだった。有り得るはずの無いことが、起こり始めていた。35

劉度 @arther456

【ZK -瑞雲仮面-】　＃４おわり＃５へ続く