Erotic Love ~ side T ~ 透・中学二年/前半
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その夜、夕飯の後で妹たちが風呂に入った後、僕は母さんに呼ばれて居間に行った。そこには父さんも居た。父さんと母さんの向かいに座ると、父さんは早速本題に入った。 「城塔高校を目指すんだって?」 「・・・うん。父さんは反対?」 #twnovels
2017-05-17 12:29:56「反対しやしないさ。でもな、お前が三者面談で言ったという理由、母さんから聞いたけれど、本音じゃないんだろう?」 ・・・これだよ。僕の家族はみんな揃って勘がいいんだから。 「なんでそう思うの?」 「選択を広く取るなら、城塔と同程度のところは他にもあるだろ」 #twnovels
2017-05-17 12:30:46「まあ、そうなんだけどさ」 「それなら、なんで城塔なんだ?」 疑問系だけど、悪戯っぽいその顔は答えを確信している。隣の母さんも同じ顔をしている。 「はぁ、参りました。父さんと母さんの予想通りです」 「と言うことは、好きな人が城塔を目指しているのか?」 #twnovels
2017-05-17 12:31:15流石の父さんも、それに母さんも、そこまでは解らなかったか。ちょっと嬉しい。 「惜しい。ちょっと外れ」 「それなら、何で?」 今度は母さん。 「ほら、早くしないと織絵と姫子がお風呂上がっちゃうわよ」 まったく。なんで嬉しそうなんだか。 #twnovels
2017-05-17 12:31:42「好きな人がいるのは正解。その人が行くのは城塔じゃなくてフェアリス女学院」 「なら、なんで城塔に・・・ああ、そうか、あそこなら比較的フェアリスに近いから、か」 「正解。近いって言っても、それなりに距離あるけどね」 それから僕は、両親の顔を窺った。 #twnovels
2017-05-17 12:32:17「そんな理由じゃ、駄目って言う?」 父さんはニヤリと笑った。 「そんなことは言わないさ。何度も話しているだろう? 俺と琴音の馴れ初めを」 そうだった。この二人、初見で互いに一目惚れして、周りの反対を押し切って結婚した、って言ってたっけ。 #twnovels
2017-05-17 12:32:42「俺も琴音も、透の本当の気持ちを知っておきたかっただけだよ。ただし、透」 父さんが一転、真面目な顔になった。僕も姿勢を正す。 「進路を左右する程にその人のことを思っているなら、何があっても自分の気持ちを貫け」 #twnovels
2017-05-17 12:33:06父さんと母さんの結婚は、両方の親族一人残らず反対したそうだ。それを、二人は一人一人説得し、結婚にこぎ着けたと言う。そんな、万難を排して結婚した二人が言えばこそ、その言葉には重みがある。 「解ってる」 僕はその言葉にすべてを込めた。つもり。 #twnovels
2017-05-17 12:33:33「それだけ解っていればいいさ。頑張れよ。受験も、恋も」 「しっかりね」 「うん。ありがとう」 はぁ、まさか両親に、好きな人がいることがバレているのは兎も角として、それを応援されるとは思わなかった。まだ中二なのに。余所でもこれって普通なのかな。 #twnovels
2017-05-17 12:34:00まあ、いいや。余所はどうでも。僕は自分の道を切り開いていくのみ。その道を、小夜子さんと一緒に歩いて行ければいい。いや、絶対にそうして行く。 #twnovels
2017-05-17 12:34:22T-13. 訪問
図書館デートの後、ファーストフードショップでくつろぎながら、進路のことを小夜子さんに話した。 「僕、城塔高校を目指すことにしました」 「城塔? 凄いじゃない。でも、なんでそこにしたの?」 「そこならフェアリス女学院にも近いから」 #twnovels
2017-05-22 12:18:26沈黙。少しして。 「それは嬉しいけれど、そんな理由で選んでいいの?」 「それだけって訳じゃないです。大学には行くつもりだから、進学校を選んだんです。城塔なら大学進学の幅も広がると思うし」 「将来のことも考えているのね。それなら、私も応援する」 #twnovels
2017-05-22 12:18:47ここからが本題。 「はい。それで、言いにくいんですけど、お願いがあるんです」 「なあに。言ってみて」 「はい」 僕は一呼吸おいて、深呼吸してから、思い切って言った。 「小夜子さん、受験勉強でお忙しいとは思うんですけど・・・国語と英語、教えてもらえませんか?」 #twnovels
2017-05-22 12:19:13受験生に対して、我ながら無茶なお願いだと思う。でも、少しでも小夜子さんと一緒にいたい。それなら、勉強も小夜子さんとできれば・・・という、僕のささやかで浅はかな想い。小夜子さんは考え込んでいる。 「・・・やっぱり、駄目ですか?」 #twnovels
2017-05-22 12:20:20「うーん、駄目じゃないけれど・・・それなら、私もお願いしていい?」 「はい、なんでしょう」 「えーと、こういうのを下級生にお願いするのは恥ずかしいんだけれど・・・数学と物理、教えてくれる?」 「え・・・構いませんけど、三年の内容は解りませんよ?」 #twnovels
2017-05-22 12:21:08「うん。今ね、受験に備えて一、二年の復習をしてるんだけど、梃子摺ってて」 そういうことか。数学と物理なら得意科目だから、小夜子さんの受験勉強を手伝えるかも。一方的に教えてもらうだけっていうのも心苦しいし。 「解りました。僕で良ければ」 「ありがとう」 #twnovels
2017-05-22 12:21:50「僕の方こそ、ありがとうございます」 「いつから、どこでやる?」 「放課後、部活のない日に図書室で、って思ったけど・・・目立つかな・・・」 「そうね・・・私は構わないけれど・・・」 「そうですか? それじゃ、明日は部活があるから、明後日からお願いします」 #twnovels
2017-05-22 12:22:30それからは、部活と勉強会で放課後は毎日小夜子さんと一緒だった。そりゃ、互いに友達付き合いもあれば色々と用事もあるから、一日も欠かさずというわけにはいかなかったけど。休日も図書館で勉強するようになった。 #twnovels
2017-05-22 12:23:40それが功を奏したのかどうか、一学期の期末試験の結果は中間試験に較べてかなり上昇した。城塔にはまだ遠いけれど、指先は掛かった感触。まだ先は長いけど、これならいけるかもしれない。 #twnovels
2017-05-22 12:24:12夏休みに入って一週間ほどは、受験を前にした三年生は補講や模試で忙しい。僕は僕で家の用事やら何やらと時間を取られて、小夜子さんに会えたのは間も無く八月に入ろうかという頃だった。なんだかとても久しぶりに思える。 「透君は夏休み、どこか行くの?」 #twnovels
2017-05-22 12:24:54