日向倶楽部世界旅行編第25話「焦りと無茶と不協和音」

消耗したヒューガリアンに補給をするべく、日向達は拠点のあるソロモン諸島に立ち寄る。
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三隈グループ @Mikuma_company

「ハッハッハッハッハッハ!ウィリー、調査隊が戻ったぞ!ハッハッハッハッハッハ!」 騒々しい声と共に入って来たのは、金属バットを持って学ランを羽織った筋肉質でサングラスをかけた大柄の…女性だった! 「今回は特に収穫はなかった、全く参ったものだなぁ!ハッハッハッハッハッハ!」

2017-12-05 21:48:54
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女は笑いながら司令部のソファにどっかりと腰掛ける、突然現れた彼女を日向達は唖然としながら見ていた。 「…で、主らは何だ、ウィリーの知り合いか?」 女は金属バットを向けて言った、サングラスで見えなかったがその目は鋭く日向達を睨んでおり、圧倒的な凄みを感じさせた。

2017-12-05 21:49:43
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そんな彼女をウィルソンは諌める 「ムサシ、彼等は客人です。」 「客?そうか、失礼したな。」 ムサシと呼ばれた女はどっくりと立ち上がり、学ランの襟を正し、日向達の方へ歩み寄った。 「私は武蔵だ、主らの名前は?」 「日向といいます、トラック泊地から来ました。」

2017-12-05 21:50:46
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日向は武蔵と握手を交わす、手がデカい、というか、全体的に大柄で威圧感がある。 だが武蔵はいたって友好的な態度で話す 「なるほど日向か、よろしくな。後ろにいるのは仲間かい?」 「はい、順に最上、初霜、扶桑、鈴谷、三隈、あきつ丸です。」 「ふむ…」

2017-12-05 21:51:38
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武蔵は最上達を順繰りに注視する、時折サングラスをずらしたりしつつ舐めるように見回した。 「…なるほど、随分面白いな、興味深い。」 小笑いしながら頷き、改めて日向の方を見る 「となると港にあった大きな船は主らのか、補給にでも立ち寄ったのか?」 「ええ、そうですね。」

2017-12-05 21:52:23
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日向が頷くと、ウィルソンが代わりに事情を話した。 「…ほう、必要な砲弾は分かるのか?」 「リストがありますわ、こちらです。」 武蔵は三隈から手渡されたリストを見る、そしてすぐににやりと笑った。 「主ら、ブルネイに興味はあるか?」 「ブルネイですか?」

2017-12-05 21:53:21
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武蔵は頷く 「この規格なら私の所属するブルネイ泊地に全てある、主らが私と共に来れば、これらをすぐに手配すると約束しよう。」 彼女の言葉に日向達は顔を見合わせる 「我々の出港は明日だ、どうする?」 「…ではお言葉に甘えて、同行させていただきましょう。」

2017-12-05 21:54:19
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日向と武蔵は再度握手を交わし、バツの悪そうな顔でウィルソンの方を向いた 「ウィルソン司令、そういう訳で…申し訳ありません。」 「いえ、気になさらずに。艦娘は助け合いですからね。」 こうして、ヒューガリアンは武蔵と共にブルネイへ向かう事となった。 〜〜

2017-12-05 21:55:16
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〜〜 翌日、ヒューガリアンは一回り小さな船と共にブルネイを目指していた。 「こちら調査船マリク、異常なし」 「こちらヒューガリアン、異常ありませんわ。」 調査船マリクからの定期連絡に三隈は応える、現在ブリッジにはオペレーターを務める彼女と付き添いのあきつ丸だけが居た。

2017-12-05 21:56:08
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「丸ちゃん、無理にいなくても良いのよ?」 三隈はヘッドセットを外しつつ、手持ち無沙汰な様子で窓の外を見るあきつ丸に声をかける 「いえ、自分はただ、何かお手伝い出来ることがあればと…」 そう言うあきつ丸だが、やる事といえば窓の外を見るくらいしかなかった。

2017-12-05 21:56:55
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そんな彼女を見て三隈はくすくすと笑う 「相変わらず優しいのね、ではお茶を淹れていただけるかしら?」 「お安いご用であります、日本茶でありますか?」 「ええ、引き出しに急須と茶葉がありますから」 あきつ丸は指示通りそれらを使い、湯呑みに温かな緑茶を注ぐ。

2017-12-05 21:57:45
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実は自動操縦機能の追加に伴いブリッジは少しリフォームされている、元々あった冷蔵庫の隣にウォーターサーバーが設置されたほか、お菓子類が詰まった小さな戸棚も鎮座、ブリッジは初期に比べると随分生活感のある空間となっていた。 「水道も引きたいですわね…あの辺りが良いかしら」

2017-12-05 21:58:34
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穏やかな航海が続く中、野心的な台詞と共に三隈は茶を飲む。 やがて空っぽの湯呑みが冷めきった頃、マリクから通信が入った 「えーこちら調査船マリク、深海棲艦ですねぇ、正面2時の方角です。」 向こうのオペレーターはのんびり話す、この手の遭遇には慣れているようだった。

2017-12-05 21:59:23
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「こちらから警戒部隊出しますのでぇ、そちらはご自由に」 「了解しました、では周囲への警戒を厳として航行を続けます。」 三隈が通信を終え窓に目をやると、艦娘の小隊が船を飛び出すのが見えた。 「何かありましたか?」 「深海棲艦ですわね、この辺りにもまだ居るようですわ。」

2017-12-05 22:00:14
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深海棲艦の大半は太平洋から叩き出されていたが、各地をちらほらうろついている深海棲艦はまだまだ居た。 最も、ある程度の実力がある艦娘にとっては大きな脅威ではない。 「深海棲艦…!では至急迎撃を…」 が、それは人による、現にあきつ丸は慌ててブリッジを飛び出そうとしていた

2017-12-05 22:01:03
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三隈はそれを諌める 「落ち着いて丸ちゃん、マリクから部隊が出ています。あの船は精鋭揃いであるブルネイ調査隊のものですから、今はあちらに任せましょう。」 「わ、分かりました…」 「そう、慌てずにね。」 椅子に座り直したあきつ丸に微笑み、彼女はコンソールを操作する。

2017-12-05 22:01:58
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「本船は警戒態勢に移行、僚船との距離を維持しつつ航行…と、これで良いですわ。」 微妙に航路が修正され、自動航行システムを司る人工知能がまた一つ賢くなった。 「三隈殿は流石でありますな…」 「うふふ、好きでやっているだけですわ。」 ブリッジは和やかな雰囲気に包まれる

2017-12-05 22:02:43
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とその時、ヒューガリアンのレーダーが反応した、後方に深海棲艦が出現したのだ。 「8時の方角…マリクの方とは反対側ですわね、映像を。」 モニターに海の映像が映し出される、うお型が3体、ヒト型が2体海の上を進んでいた。 「大した規模では無さそうね、こちらで倒しましょう。」

2017-12-05 22:03:36
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三隈は素早く判断し、マイクに向かって指示を出す 「こちらブリッジ、後方に深海棲艦の小隊、うお型の駆逐級が3体、ヒト型の巡洋級が2体、迎撃をお願いします。」 連絡を終えると彼女自身も出撃の為動こうとする、しかしそれをあきつ丸が止めた。 「自分が出ます、三隈殿はここで。」

2017-12-05 22:04:25
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毅然とした態度でそう言うと、三隈はこれを承諾し、再び椅子に腰掛けた。 「ではお任せしますわ、頑張って下さいね。」 「…ええ、やってみせるであります!」 あきつ丸は拳を強く握り、ブリッジを飛び出した。 〜〜

2017-12-05 22:05:13
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〜〜 「アレでありますな…」 出撃したあきつ丸は正面に敵艦隊を捉えて呟く、共に駆けているのは初霜と鈴谷の二人だけ。 というのも最上は捻挫、日向は太腿の刺し傷の為出撃せず、扶桑は万一に備え待機、三隈はオペレーターとして残った、それ故にこの三人だけが出ていたのである。

2017-12-05 22:06:03
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「敵は5体か…ま、上手くやってやろうじゃん?二人共よろしくゥ!」 鈴谷はそう言いながら飄々と海を駆ける、だが返ってきたのはあきつ丸の空返事だけ、初霜の方はそもそも鈴谷の話を聞いておらず、血走るような目で敵を睨みながらブツブツと何かを呟いていた。 (えっ?本当に初霜ちゃん?)

2017-12-05 22:06:54
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その様子に鈴谷は思わず引く、ワタリ艦娘をしているとこういうタイプは稀に見るのだが、彼女のそれは天真爛漫な普段の印象もあってかなり衝撃的なものだった。 そんな風に鈴谷が戸惑い半分でいると、当の初霜から無機質な声が発せられる。 「私が行って潰します、援護して下さい。」

2017-12-05 22:07:44
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言い終える前に彼女は増速、敵艦隊に向かって攻撃を開始した、その動きには迷いも恐れもない。 「なっ、あきつ丸ちゃん!援護するよ!」 「言われるまでもない!」 鈴谷とあきつ丸も初霜の後を追いながら援護射撃を行う、初霜の強襲で巡洋級が、鈴谷の砲撃で駆逐級が一体ずつ沈む。

2017-12-05 22:08:33
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「3、3、3…!」 初霜はブツブツと呟きながらまた駆逐級一体を沈める、敵も反撃しているのだがそれ以上に初霜が強く、なす術なしという勢いで崩れていった。 「流石にベテランって訳ね…それよっ!」 鈴谷も主砲をぶちかまして最後の駆逐級を沈める、あっという間に敵は残り一つとなった。

2017-12-05 22:09:23