デイヴィッド・ベネター『生まれてこないほうが良かった』読書メモ集

デイヴィッド・ベネター『生まれてこないほうが良かった――存在してしまうことの害悪』(小島和男+田村宜義訳、すずさわ書店、2017)の読書メモをまとめました。David Benatar, Better Never to Have Been : The Harm of Coming into Existence, Oxford University, 2006.
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荒木優太 @arishima_takeo

「自分の人生と質的に似たまた別の人生には始める価値はないのだ」と言うことは、「自分自身の人生に続ける価値はないのだ」と言うことと(必ずしも)同じではない。byベネター『生まれてこないほうが良かった』p131

2017-12-09 17:07:40
荒木優太 @arishima_takeo

子どもは誰かのために存在させられているのであって、決してその子ども自身のためではないのである。byベネター『生まれてこないほうが良かった』p139

2017-12-09 19:31:50
荒木優太 @arishima_takeo

ベネター。子供は産むべきじゃないし、妊娠したら中絶すべき。が、「子作りする自由に関する権利」は認めるべき。規範的問題というより制度運用的問題(個々人の子作りに介入する権力を認めたらリベラルな政体を維持できない?)のようだが、ここは人によったら甘さを感じるところかもしれない。

2017-12-09 21:43:59
荒木優太 @arishima_takeo

人類が未来のいつかの時点で存在しなくなることを懸念するのは、私たちの存在が世界をより良い場所にすると思ってしまう人間の横柄さの証であり、なんだか間違って与えられた感傷主義であるという印象を私は受ける。 byベネター『生まれてこないほうが良かった』p207

2017-12-10 10:59:19
荒木優太 @arishima_takeo

「自殺は、他の原因による死と同様、残された人たちの人生を非常に悪いものにする」(ベネター『生まれてこないほうが良かった』)。反出生は勧めても自殺はオススメしないのは、生まれてこない場合は「残された人」が存在しないから。

2017-12-10 11:28:09
荒木優太 @arishima_takeo

問題は、子供を産めないと自分の人生の尊厳が奪われてしまったように感じる人、いわば「残された人」を先取りする人をどう説得するか、ということか(ま、説得できないでしょうけど)。

2017-12-10 11:29:44
荒木優太 @arishima_takeo

ベネター『生まれてこないほうが良かった』読了。私はストレートに生まれてきたくなかったと思ってるし、ベネターと違って人間嫌いでもあるので、別に違和感ない立論だったけど、一般的にはどうだろうね。まあ、ネオナチとかオウム真理教的な結社にすごい悪用されそうな倫理説だよな、とは思う。

2017-12-10 11:44:01
荒木優太 @arishima_takeo

一気に人類絶命を狙おうとするとかなり危うい事態になる気がするので、やっぱり子供の権利の尊重、マスターベーションの積極的称揚、避妊手段の多様化と啓蒙、柔軟な養子制度の拡充(を根拠づけるような家族概念の練り直し)など、小さなことから漸進的にやってった方が効果的なのではないか。

2017-12-10 11:51:35
荒木優太 @arishima_takeo

特に養子縁組は、「子供をもち育てることが自分の人生の本質的な部分に関わっている」と思っているような反出生主義の宿敵のような人にも、ANとの和解案を提示できるかもね。別にわざわざ生まなくったって、この世界に庇護が必要な子供なんて腐るほど存在しているわけだし。

2017-12-10 11:55:42
荒木優太 @arishima_takeo

百歩譲って、子供生むのを(道徳的に)認めたとしても、みんな一人しか生まなければ次第に絶滅に向かっていくわけだしね。二人以上欲しい人を全体的に減らしていく努力から始めていくといいんじゃないだろうか。

2017-12-10 12:00:06
荒木優太 @arishima_takeo

ただ、漸進的に絶滅を進めていった場合、ベネターのいう「最後に残る人々」の苦しみが回避できない。で、その前段階(「最後」を予見した前最後の人々)で出生が盛んに喧伝されることはかなりありうる。そして、これは倫理学という以上に、文学的なテーマだと思う。

2017-12-10 12:05:20
荒木優太 @arishima_takeo

まあ、私は少子化問題が論じられるさい、常に「保険料が~」とか「我々の老後の生活が~」とかいう話が出てくるのが非常に癪に障っていて、いや、子供はお前(ら)の生活を支える奴隷じゃねーから、と思ってたので、痛快な読書したなって感じはする。

2017-12-10 12:09:40
荒木優太 @arishima_takeo

ベネターの立論は、いくつかのアイディアを使えば斥けられるのかもしれないが、その場合であれ、ベネター以外の世代間倫理と呼ばれるタイプの論説に重要な反省・修正を迫るのではないかと直観する。たとえばヨナス倫理学とか(私のなかでは、ベネターはダーク・ヨナスって感じ)。

2017-12-10 12:13:52
荒木優太 @arishima_takeo

あと、関係ないけど、訳者がプラトン『パイドン』引いていて、ソクラテスが魂が不死だと主張する根拠の一つに、間違いだったとしても「僕自身にそれがそうであると可能な限り思わせよう」とした方が怖くなくていい、というのがあり、これはベネターの批判道具であるポリアンナ効果そのものなわけだが、

2017-12-10 12:18:39
荒木優太 @arishima_takeo

これってプラグマティズムそのものだよな、と思った。プラグマティスト・ソクラテス。

2017-12-10 12:19:50
荒木優太 @arishima_takeo

ベネター本に共感できるかどうかは、人生で起こるマイナス・ポイントはプラス・ポイントで補填(相殺)できると思うタイプかどうかでかなり分かれるかもね。どんなにプラスがあろうとマイナスはマイナスじゃん、って考える人は相性良し。

2017-12-10 12:26:35
荒木優太 @arishima_takeo

あ、ベネター本に対する疑問として。①反出生主義と動物倫理。存在することが害悪ならば動物(とりわけ野生動物)にもなんらかの不妊への介入を肯定すべきなのか。②SF的設定での思考実験。生まれた直後から一種の植物状態で一定期間生きられる技術が開発されたら出生はしていいのか。メモ。

2017-12-10 13:06:13