教師が素晴らしい学級運営をするかどうかは「われわれ」というグループを作る力が関係しているという話

小さい頃は特にそうなのかもと思った。
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shinshinohara @ShinShinohara

ジュデュス・リッチ・ハリス「子育ての大誤解」、面白いのだがデータが豊富すぎ。上巻は「子育て神話」(子どもがいかに育つかはすべて親の教育如何)を否定することにほぼ費やされている。遺伝子決定論と環境決定論の両極論を排し、遺伝子も環境もどちらも影響するよ、と現実的な解を導く。

2017-12-19 09:11:08
shinshinohara @ShinShinohara

下巻からようやく本題。「われわれ」「彼ら」思考こそが人格を規定する、という説を唱える。なかなかの説得力。私たちは「われわれ」仲間だと思うものに似せようと努力し、敵視する「彼ら」と違うのだと強調することで一体感を持とうとする。その影響力は親からの指導をもしのぐ。

2017-12-19 09:16:14
shinshinohara @ShinShinohara

勉強の得意な子は同じような子達で「われわれ」を形成し、そうでない子は、ある子は運動能力を至上とする「われわれ」、おしゃれや音楽を最重視する「われわれ」、大人の価値観に反逆する「われわれ」を形成する。価値観を違える集団を形成することで「彼ら」との違いを際立たせ、仲間意識を育てる。

2017-12-19 09:20:31
shinshinohara @ShinShinohara

最初はごくわずかな差しかなかったのに、価値観を違える集団に分かれることで特徴が急速に際立っていく。勉強以外のことに価値を置く「われわれ」は、大人の価値観を鵜呑みにし、先生から可愛がられようとする奴隷根性の「彼ら」とは違うのだ、と自らを規定し、ますます勉強しなくなる。

2017-12-19 09:25:16
shinshinohara @ShinShinohara

優等生は大人に従順な下僕であるという価値観を選択した「われわれ」集団は、仲間との結束を高めるため、ますます大人が価値をおく勉強、お行儀、ルールの遵守などをバカにし、反逆することで「われわれ」の特徴を際立たせる。特にメンバーにそれを強制しない。メンバーが自ら積極的に行動する。

2017-12-19 09:29:00
shinshinohara @ShinShinohara

したがって、孟母三遷(子どもの教育によい環境のところへ引っ越す)というのには一定の合理性がある。同じ価値観の人たちが集まる場所だと、同じ価値観の「われわれ」が形成されやすくなり、勉強好きな地域は勉強するのが当たり前になり、嫌いな地域は勉強を小バカにする傾向が出る。ただし。

2017-12-19 09:32:09
shinshinohara @ShinShinohara

「鶏口牛後」効果も見過ごせない。「孟母三遷」を狙って教育熱心な地域に引っ越してみたところ、その地域では勉強のできない部類に自分を規定せざるを得なくなり、その地域での「勉強至上主義に異議を唱える反逆集団」に身を投じ、「われわれ」を形成する可能性もある。

2017-12-19 09:36:15
shinshinohara @ShinShinohara

逆のケースもある。優秀な子に囲まれているうちは劣等感に包まれていた子が、ごく普通の学校に通うようになると意外に成績がよい自分を発見し、勉強好きな仲間と「われわれ」を形成するうち、勉強が心から好きになり、元の地域の子達よりもずっと勉強できるようになることがある。

2017-12-19 09:38:52
shinshinohara @ShinShinohara

人間はどうやら自己像を把握する上で「われわれ」がとても重要なようだ。つきあう仲間とますます仲良くなるため、「彼ら」との違いを際立たせ、「われわれ」の共通点をますます強調する。そうして仲間意識を高めると同時に、自分自身の「われわれ」の中での地位を獲得しようとする。

2017-12-19 09:42:46
shinshinohara @ShinShinohara

素晴らしい学級運営をする教師は、クラス全員を「われわれ」にしてしまう。クラスの中で「われわれ」と「彼ら」に分かれがちな生徒たちにうまく共通の価値観を与え、助け合い、向上させる。「ミスAの偉大なる奇跡」として「子育ての大誤解」下巻で紹介されている。

2017-12-19 09:48:05
shinshinohara @ShinShinohara

興味深いことに、クラス全員を「われわれ」に束ねる学級運営が成功している国として日本が挙げられている。クラスの誰かが困ったら助けるのは当たり前、それをするのはクラスとしての責任、という「われわれ」意識を醸成する。著者は、アジア人の教育レベルが高い理由として「われわれ」を指摘する。

2017-12-19 09:51:22
shinshinohara @ShinShinohara

その意味では昨今、日本の強みをわざわざ捨てようとしている面があるかもしれない。学力別学級とか、リーダーを育成する学校だとか、特定の子どもを特別扱いし、そうでない子をスポイルする言説が結構強まっていることが若干気になる。

2017-12-19 09:53:53
shinshinohara @ShinShinohara

著者は学力別学級の効果に否定的。理由は価値観の違う「われわれ」に分かれるから。学力の低い学級になった生徒は、学力至上主義を否定する価値観を共有する「われわれ」を形成し、自らの特徴をそこに際立たせようとする。成績のよい「彼ら」と同じ価値観を共有することを拒否するのだ。

2017-12-19 09:57:57
shinshinohara @ShinShinohara

「ミスA」は、クラス全員を「われわれ」に誘導することで、学力が低い子を助け合うように持っていく。彼女が担任した生徒たちは「ミスAの生徒」という「われわれ」意識をその後も共有し、どの子も比較的成績優秀で、社会的にも成功している人たちが多かったという。

2017-12-19 10:02:36
shinshinohara @ShinShinohara

興味深いことに、「ミスA」に担任してもらっていない子まで「ミスAの教え子」と記憶を改竄していた子がいて、その意識を保ち続けることで努力を欠かさなかったという。そのくらい「ミスA」は感化力があり、彼女率いる「われわれ」に入れてほしかった子どもが他のクラスにもいたということだろう。

2017-12-19 10:05:28
shinshinohara @ShinShinohara

教師の腕は、もしかしたら「教える」技術以上に「われわれ」を形成する能力にかかっているのかもしれない。無論、その力は子どもが自ら進んで「われわれ」になりたがる力であり、その力が学力や体力を、一人一人の子どもたちそれぞれに応じて引き上げるものである必要がある。

2017-12-19 10:10:01
shinshinohara @ShinShinohara

子どもたちを「われわれ」にする力の具体例としては、これが素晴らしい。 redcarpmania.tumblr.com/post/789525462… 子どもたちは考えることが大好きで、能動性、主体性をうまく引き出すと、子どもたちは乗ってくる。一緒に考える空気が「われわれ」を形成する。

2017-12-19 10:14:22
shinshinohara @ShinShinohara

この先生も、子どもたちを「われわれ」にする力が素晴らしい。奇しくも先程の保育士の先生と同じで、子どもたちは「考えることが大好き」である点に着目し、考えさせ、意欲を高めることに成功している。 jinjibu.jp/article/detl/k…

2017-12-19 10:18:21
リンク jinjibu.jp 東京学芸大学附属世田谷小学校 沼田晶弘さんインタビュー|小学生を「学び続ける自走集団」に変える ぬまっち先生流・やる気を引き出すしかけづくりとは(後編) - 『日本の人事部』 教育現場において、子どもたちの自主性・自立性を引き出すユニークな授業で注目されている小学校教諭の沼田晶弘さんは、子どもたちにさまざまなプロジェクトを任せ、知的好奇心に火をつけることで、「自ら考え、学びつづけるクラス」を実現しています。子どもたちから「ぬまっち」と呼ばれ、親しまれている沼田さんは、その信頼関係を一体どのように築いているのでしょうか。後編では、そのコミュニケーション手法ややる気を引き出す目標設定について、詳しくお話をうかがいました。 2 users 18
shinshinohara @ShinShinohara

特に義務教育の小中学校の過程では、「われわれ」をどう形成するかが重要。そこをうまく形成すれば、自ら学ぶ集団を形成できる。 しばらくこの視点をもっと突き詰めて研究したいと思う。

2017-12-19 10:21:37