日向倶楽部世界旅行編第27話「クワガタマン」

三隈グループ @Mikuma_company

するとまたクワガタを見つけた、金色をした綺麗なクワガタだ。 「あれ知ってますよ、オウゴンオニクワガタって奴ですよね？」 「ああ、こいつは普段黒っぽい色だが、乾燥したり弱ったりすると金色になる。」 珍しいクワガタなのだが、二人は先程と違いはしゃぐ事は無かった。

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日向は訝しむ 「どう考えてもおかしいな…これではまるで昆虫園じゃないか。」 気が付くと周囲を大量のクワガタが飛び回っていた、アレほど探すのに苦労したクワガタが、これでもかと飛んでいる！ 警戒を強める日向、すると最上が森の奥を指差した！ 「日向さん、アレ！」

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デデン！彼女が指差した先には、人間ほどのサイズがある巨大なクワガタの大顎！ 「なっ、巨大なクワガタ！」 「バヌアツのカニみたいなもんですかね…！」 二人が身構えると、巨大クワガタは身を翻しこちらへ向かってきた！ その様子は明らかに危険！

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「うおーっ！？」 迫る大顎を二人は避ける、巨大クワガタは大顎を大木にぶつけると、その顎で木をへし折った！すごいパワーだ！ だが日向達が驚いたのは、そこではない！ 「こ、こいつ、人間か！？」 二足歩行、四肢、そのシルエットはどう見ても…人間！こいつは一体、何者だ！？

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その答えはクワガタ本人から返ってきた！ 「俺は人間ではない！」 「なんだと」 「俺の名は…クワガタマン！」 クワガタ…いや、クワガタの被り物をしたクワガタマンは顎をガシガシ動かし、日向達を威嚇する！ 「クワガタマンだと！？一体…何者だ！」

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日向が訊ねるとクワガタマンはさらに威嚇！ 「俺の目的は…この世界をクワガタの世界にする事！その為に、12月の熱帯雨林にクワガタ侵攻作戦を行なっているのだ。」 「何、これは貴様の仕業か！そんな事をしたら…生態系が崩れてしまうぞ！」 諭す日向！だがクワガタマンは聞かない！

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「黙れ！生態系は…弱肉強食！強い奴が生き残った結果だ！この世界をクワガタが支配しても…文句はないだろう！それに…」 「それに？」 「クワガタ以外の生き物は必要無いんだよ！邪魔をするなら…ここで死んでもらう！」 言うが早いか、クワガタマンが襲いかかってきた！

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「喰らえ！はさみ攻撃だ！」 「おっと」 クワガタマンは大顎で日向を掴もうとするが、外れた！動きはすっとろい、しかし一度当たれば…大木をへし折る怪力が襲いかかるぞ！ 「最上、下がっていろ！」 「わ、分かってますよ、こんな変態に関わりたくない」 最上は日向の後方で見守る

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直後、クワガタマンは再度大顎攻撃を仕掛ける！しかし外れる！頭突きの要領故命中率には難がある、人間は頭突きをする生き物では無いからだ！ 「なかなか素早いな、俺の攻撃を…三度も避けるとは！」 「そうか？」 ただ単に相手が遅いだけなのだが、日向はあえて言わなかった。

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するとクワガタマン、何処からか細剣を引き抜いた！ 「なっ、こいつ剣を持っているのか！」 「驚いたか！俺は…クワガタマン！素早い相手には…剣を使う！」 そう言うとクワガタマン、剣を構えて突進してきた！日向は避ける、すると背後にあった木の幹に切り傷がつく！この剣は…本物だ！

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「私が使えそうなのはこの虫網くらいか…」 日向は剣撃を避けつつぼやく、愛刀は先日の戦いでヒビが入ってしまった、故に今は丸腰だ！ 「だあっ！」 「遅いな」 剣の一振りを避け、そこそこのリーチを有する虫網の柄でクワガタマンの胴を突く！

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しかし！その一撃は全く効いていない！ 「硬い…！ただのコスプレではなさそうだな！」 「クワガタは甲虫、甲虫の甲という字は…甲冑の甲！甲乙丙丁の甲！つまり…俺は強いのだ！」 とても筋の通った理屈！クワガタマンは攻撃の勢いを強め、日向を追い詰めんと剣を振る！

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だが日向も強い！軽やかな身のこなしでそれらを避け、虫網で突きを繰り出す！ 当たらない一撃と効かない一撃、ボルネオ島！熱帯雨林！大自然！その中で両者は膠着状態に陥る！ (困ったな、変態ではあるがただの変態ではない、強い！) 日向は木を蹴って跳び、クワガタマンとの距離を取る

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(剣さばきも素人ではない、丸腰で戦うには厳しい相手だ…) クワガタのコスプレをした変態を前に真剣な顔つきの日向、一見笑いを誘う光景だが、これは戦の中、命のやり取りなのである！ 「なかなかやるな！俺の剣をここまで避けきるとは…クワガタの次に強いかもしれない！」

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クワガタマンも日向の力量を認めつつ、再度距離を詰めんと駆け出す！ 「チッ、ここは退くか…！」 それに対し日向は脱兎の構え！距離を保ちつつ熱帯雨林を走り出す！ その姿にクワガタマンは憤った！ 「何っ、逃げるのか腰抜け！しかし私は追うぞ！クワガタだからな！」

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そしてクワガタマンは懐に手を入れ、勢いよく払った！ 「行け！誇り高き戦士達よ！」 すると！掛け声と共に無数の何かが日向へ向けて飛び出した！ 「なっ、クワガタ！？」 それは無数のクワガタムシ！大小、いや大きいクワガタムシ達が日向へと襲いかかる！

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さて、クワガタムシの飛行スピードを皆さんはご存知だろうか？一見速そうなクワガタムシ、しかし実際の速度は速くても10キロに届かない程度、人間の走行には追い付けない。 ちなみに蚊の飛行速度はおよそ3キロ、気付かぬうちに血を吸う忍者のような彼らも、スピード自体は遅いのだ。

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だがクワガタマンの放ったクワガタムシは事情が違う！並みのクワガタムシを凌駕するスピードで日向を猛追するのだ！ 「クッ、この程度なら…！」 よってたかるクワガタムシを日向は払おうとした、しかし鋭く光る何かを見つけ、その手を止めた！ 鋭く光っているのは…刃だ！

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「まずいッ！これはただのクワガタじゃあないぞッ！」 クワガタムシが日向に突撃、光る刃が彼女の首元を掠める！ これはクワガタ型機動兵器！平たく言えば、クワガタムシの形をした…艦載機だ！ 「そいつらは機械だがクワガタだ！ただの機械にはない…魂がある！」 「なるほど…！」

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メカクワガタの熾烈な攻撃を必死に避ける日向、止む終えず拳で叩き落とすと軍手が破け、鋭い刃が彼女の手に傷を作る！ クワガタマンもクワガタマンなりに環境に配慮している故、メカクワガタに機銃や爆弾攻撃は存在しない。だがそれでも手強い！丸腰で艦載機の相手は難しいのだ！

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「クッ…辿り着けるかどうか…」 メカクワガタ達を何とかいなし続け日向は走る、だがそれも徐々にキツくなってきた 「クワガタに逆らった報いだ！このまま切り刻まれてしまえ！」 叫びながら追うクワガタマン！絶体絶命の日向！どちらか一方が、何かを起こさなければならない！

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だが何かを起こしたのは、そのどちらでもなかった！ 「うおりゃあッ！」 木の上から最上が！クワガタマンに強い飛び膝蹴りを喰らわせたのだ！よろめくクワガタマン、同時にメカクワガタの動きが鈍り、統率が乱れる！ その隙に日向は注意深く拳を振るい、メカクワガタの多くを叩き落とした！

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「最上、大丈夫か！？」 「何かあるんでしょう！？早くして下さい！」 駆けながら声をかける日向に対し、最上は剣撃を避けながら応える！日向は頷き、そのまま走り続けた！ 「ええい、まずはウサギを仕留める！」 クワガタマンも最上を無視し、彼女の後を追い始めた！

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やがて日向の眼前に一本の大木が現れた！ 切り倒せば橋にできてしまいそうな、大樹とも言うべき巨木である！ 「来るか！」 「追い詰めたぞ！腰抜けめ！」 「そいつはどうかな！」 日向はクワガタマンが着いて来ていることを確認すると、大木に向けて猛然と走る！走る！走る！走る！

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そしてその根元から何かをもぎ取り！ 「だぁっ！」 そのまま巨木を駆け上がる！ 強靭な足腰で速度を付け、垂直に近いそこを駆け上がる！凄まじい脚力！圧倒的運動神経！ 「なっ、すごい足腰だな、クワガタの次にすごいかもしれない」 クワガタマンもこれには感心