異世界小話~異世界が2度目の女子大生と1度目の女子大生の話~

なろうは異世界小説のサメとサメが喰い合うまるでアサイラム制作アルバトロス配給の映画みたいだぜ。ところで皆次のシャークはどんなのになると思う? それはそうとTwitterでやるお!
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帽子男 @alkali_acid

異世界が2度目の女子大生と1度目の女子大生の話

2017-12-30 00:05:07
帽子男 @alkali_acid

佐藤さんは異世界が二度めで 山田さんは異世界が一度め

2017-12-30 00:05:30
帽子男 @alkali_acid

佐藤さんは美人で運動神経が抜群できっぷがよくて、ぶっちゃけ異世界でも英雄 山田さんは地味でどん臭くておどおどしてて、とりえは巨乳ぐらい

2017-12-30 00:07:12
帽子男 @alkali_acid

佐藤さんは一度めに召喚されたとき、すごく色々あった。そして二度めに召喚された今は、この異世界でお兄さんの首を探している。 山田さんは、どうしていいか分からないけど、とりあえつ手伝おうかな。友達だし。みたいな感じ。

2017-12-30 00:08:53
帽子男 @alkali_acid

佐藤さんは一度めに召喚されたとき、冒険者になって仲間もいて迷宮も制覇して、いわゆる二周目ってやつなので余裕。 山田さんは正直異世界の言語すら分からねえ。相棒頼み。 「えっと、このリンゴみたいな果実はウェフ、ワーかな?」 「それ虫の死骸」 「えっ」 「スープのダシがとれる」 「えっ」

2017-12-30 00:11:12
帽子男 @alkali_acid

佐藤さんはずんずん進む。 山田さんは相棒と手をつないで、人でごったがえす道をよろけつ歩きながら、スリとか、ひとさらいとか、おいはぎとか、いないか、めっちゃびびりつつ珍しい風景を見物してる。

2017-12-30 00:12:40
帽子男 @alkali_acid

「あのうあのう…どこへ?」 「冒険者の酒場。あそこなら仲間がいると思う。多分」 「わたし、お酒飲めなくて」 「だいじょぶ。飲まなくてもいけるから」 たどりついたのは町の真ん中にある大きな煉瓦造りの建物。 酒場というより公共施設。 恐れもなく入る佐藤さん。おっかなびっくりの山田さん。

2017-12-30 00:14:39
帽子男 @alkali_acid

“ひさしぶり” 現地の言葉で挨拶する佐藤さん。ブランクを感じさせない自然な喋り方。 カウンターの向こうで隻眼の中年女が顔を上げる。 “驚いたな、地獄の猟犬団の頭目がご帰還か。あんたはもう街に戻らないと思ったが” “あたしの仲間はいる?” “さてな…” 形だけ見まわす。

2017-12-30 00:17:50
帽子男 @alkali_acid

近くに来るよう手招きしてから、囁く “あんた。色町の連中に狙われてる” “だろうと思った” “あんたの仲間もな。例の龍のねぐらから財宝を盗み出した祝いの晩。たいした暴れようだったそうじゃないか。何があったんだ” “いろいろ” “色町で騒いだあげく、顔役を殺したんだろ?”

2017-12-30 00:20:07
帽子男 @alkali_acid

“先に手を出したのはむこう” “それだけじゃない。お大尽に人気だったとっておきの男娼まで殺し…” “その話はやめて” “…ああ。で、むこうさんは地獄の猟犬団を恨んでる。あんたの仲間も危うく捕まって皆殺しになるところだった。うまくずらがったのは奇跡だったよ” “よかった”

2017-12-30 00:22:01
帽子男 @alkali_acid

"だがな。冒険者だって色町の連中と正面きってことは構えられねえ。あんたの仲間は隊商の護衛になったり、辺境にできたって例の塔にいったり、ちりぢりばらばらだ" "街には誰も残ってない?" "いや、一人、迷宮に隠れてるやつがいる。中層までいきゃ、わざわざ追手も降りてこねえからな" “ふーん”

2017-12-30 00:24:22
帽子男 @alkali_acid

山田さんには当然何を言ってるか全然分からない。佐藤さんはうなずいて振り返った。 「ちょっと悪いニュース。あたしの前の仲間はばらばらになっちゃった…一人残ってるけど、迷宮ってちょっと…いやだいぶ危険なところに隠れてる」 「そこはどういう」 「魔物が出る」

2017-12-30 00:25:38
帽子男 @alkali_acid

「魔物」 「でっかい昆虫みたいのとか、蛙みたいのとか、蝙蝠みたいのとか」 「え…わ、わたしは遠慮しよっかなっていう」 「でも街にいる方が危険かも」 「えっ」 「あたし、敵がいるんだ。色町って…いわゆるウリやってるやつら」

2017-12-30 00:27:06
帽子男 @alkali_acid

「ウリ…あの、キュウリ的な?」 「あはは!山田さん面白い!」 爆笑して肩を叩く佐藤さん。衝撃で山田さんの胸がちょっと弾む。 「ち、ちがいますね」 「売春。でもこっちのはえぐいんだ。逃げられないように女の子の手足とか切っちゃったりするから」 「ひ、ひええええ!?」

2017-12-30 00:28:49
帽子男 @alkali_acid

異世界やばい。だいぶやばい。 街の中なら安全とかそういう雰囲気ではないらしい。 「たぶんね。街の下に迷宮があるから、みんなおかしくなってきたんだと思う。この街は迷宮から冒険者がとってくる財宝で栄えてる。それはすごい力があったりするけど…でも普通じゃない」

2017-12-30 00:30:10
帽子男 @alkali_acid

「あたしたち冒険者が迷宮から持って帰る財宝ってつまり、迷宮の一部じゃない?それってなんていうかな、地下に閉じ込めてあった色んなものをどんどん地上に出して…あの…」 「汚染?」 「それ!さすが山田さん!なんだかね。この街はだんだん魔物のいる迷宮みたいに」

2017-12-30 00:32:18
帽子男 @alkali_acid

「なってきてる気がするんだ…しかも財宝はこの街から、この国や、ほかの国までだんだんと隊商とかに運ばれて広がってる。ってそんなこといっぺん元の世界に戻って、大学で勉強するまでは考えてもみなかったんだけどね!」 「うーん…」

2017-12-30 00:34:18
帽子男 @alkali_acid

「この街じゃ誰も、このままずっと今と同じことを続けていればどうなるか、なんて考えてないんだ…いや、ひとり考えてたやつもいたかな…」 「え?誰ですか?」 「そいつは…あたしの敵だった…殺しちゃった。お兄ちゃんをひどいめに遭わせたから」 「そ、そう…」

2017-12-30 00:35:42
帽子男 @alkali_acid

佐藤さんが実はとんでもない人らしいということが 山田さんにもだんだんわかって来た。いやもともとうっすらは想像できていたけど。 「と、とにかく、迷宮のお友達に会いにいきましょう」 「うん。そうだね。でもしっかり準備しないと」

2017-12-30 00:36:59
帽子男 @alkali_acid

佐藤さんは鍔広帽に外套、剣を仕込んだ杖。それに投げナイフをたくさん、弾帯みたいなものに吊るして装備する。すごくかっこよく決まっていて見とれてしまうほど。 山田さんはというと、巨大な全身甲冑にハンマー。 「なんですかこれぇ!?」 兜ごしにくぐもった声。

2017-12-30 00:39:18
帽子男 @alkali_acid

「生きた鎧っていうのかな。着たやつの命令を聞いて動くんだ。あんまり難しい操作はできないけど、中層までならそれ装備してれば楽勝だよ」 「ふえええ」 「ただ、おしっこはできない」 「ひいいい」 「おむつがあればいいんだけどねえ」

2017-12-30 00:41:08
帽子男 @alkali_acid

いざ迷宮へ。冒険者の酒場から出て少し歩いたところに、巨大な寺院が門を構えている。正面は兵士が二人守っている。手には連弩。いずれも屈強そうな男だ。 「…おい、忠告しておくぞ。今日は中が荒れてる。たった二人で挑むのは…こいつは、白金紋章とは…あんた…まさか地獄の猟犬団の」

2017-12-30 00:43:42
帽子男 @alkali_acid

"確か色町秘蔵の男娼を身請けしようとして殺されたって" “おいやめろ。すいません。こいつ口が軽いもんで。どうぞお通りください” 巨漢が借りてきた猫のようにおとなしくなる。佐藤さんが不機嫌そうに横を抜けると、山田さんもよたよたと続く。 「あのう…なんのお話を」 「なんでもない」

2017-12-30 00:45:55
帽子男 @alkali_acid

寺院の大扉をくぐりり、迷宮に入るとすぐ空気が変わった。 上層はどこからともなく青い太陽がさしこみ、木々が生え、色とりどりの蜻蛉の翼を持った鳥が舞う。大きさは犬位ある。 「ふえええ」 「だいじょうぶ。あいつらは格上を襲ったりしないから」 「あの、そうではなく」

2017-12-30 00:47:41