AIの話から始まった「戦場の霧」の話
ゲーム等でよく自ユニットがいない地域は見えなくなってたりあいまいになってたりするのはこれの再現だな。 現実世界だと見えてるはずの位置にあるものすら見えてなかったりするが。
2018-01-03 17:57:38a1 方陣組んだブリテンくんの歓迎委員会 pic.twitter.com/d1zYUzHEbQ
2018-01-03 18:05:26a2 日本軍の陣地 (映画ハッソー・リッジの裏手側微妙にずれてるが pic.twitter.com/AgOECKrQql
2018-01-03 18:14:17まあヨタ話はさておくとして大昔の某板で戦場の霧の説明に使われてた0.8だか0.7だか忘れたが不確定性の計算式があってな ちょいと紹介してみよう。
2018-01-03 18:32:07全体を100とする 斥候群が各偵察地域への進入に成功する確立を7割とする 進入した地域で各偵察目標の7割を発見できたとする(誤認含む その情報を後方に持ち帰るまたは無線で報告できた割合を7割とする(誤報含む 集められた情報を幕僚が分析し指揮官に報告に届いた情報は何パーセントか。
2018-01-03 18:38:16なお分析の過程でも正しく分析されるとは限らず重複や誤分析で7割正しく認識される可能性もある。 現実にはさらに多くの場面で誤差が生じる
2018-01-03 18:42:36先の場合だと約34パーセントの情報で指揮官は正しく判断しなければならない。 しかもこれは数学的な誤差がほとんど無い場合である。現実には優秀な斥候が進入した地域の情報が大量に上がり、別の地域は斥候がヘボで潜伏側が極めて優秀に潜伏していたため情報が上がらない可能性もある
2018-01-03 18:46:08このたりない情報を「推定」したり「想像」したり、妄想して判断せねばならんが、将来的にはともかく当面の間はAIにこの出来るのかね
2018-01-03 18:49:14陸戦の指揮統制や部隊運用が「技術」ではなく「芸術」といわれるのは理由が無いわけではないのだ 無論技術的進化が戦闘に寄与しない訳ではない
2018-01-03 18:52:42斥候をたくさん送り出せば情報が増えるのではと考える貴方。その通りです。そして敵に発見され帰ってこない斥候も増えます。 基本斥候は小規模で進入するものなのでまともに見つかるとサヨウナラです。肝心の攻撃本番に戦力不足で攻撃失敗が発生する可能性があります
2018-01-03 19:16:25あと斥候がたくさん動くと攻撃の兆候が判明します 「斥候がたくさん侵入する地域」は攻撃側が前進しようとしてる経路の確率が高いし 「多くの斥候が進入することによって」防御側が陣地の問題点に気が付いてしまうこともある。
2018-01-03 19:25:47@V2ypPq9SqY RCTでそんな事がありました各中隊が調整しないまま入れ替わり立ち替わり斥候を送り上がってくる情報が錯綜し防御側が地雷原を強化して経路が使用困難と補助官に裁定されたりなど
2018-01-04 00:29:58優れたAIの導入によって社長や指揮官は要らなくなるか?という問題ですが、結論から言うといらなくなることはないと思います。AIや情報技術の進化に伴う戦場の変化が発生するのは事実でしょうが、AIは因果関係が明白な環境下での予測までしかできないのに対し、実際の戦場は因果関係が不確実だからです
2018-01-03 18:41:06例えばいわゆる戦場の不確実性を表す言葉としてクラウゼヴィッツは「戦場の霧」という言葉を使った。クラウゼヴィッツは人間的なミスや感情、政治性が戦争そのものにとっての摩擦となりその予測は非常に困難と述べた。そういった戦場では正しい情報・予測があっても事態はそれより悪い方向に進みやすい
2018-01-03 18:47:35かつて米軍には戦術構想決定プロセスとして軍事意思決定過程(MDMP)という手法があった。このモデルは社会や戦場を閉鎖空間と捉え各事象は因果関係で結び付いているという前提があり、正しい手順で分析をすれば必ず正しい戦略が導けるというものでしたが、当然ながら机上戦術でしか通用しませんでした
2018-01-03 18:53:09ベトナム戦争後採用された思考過程が影響ベース型作戦(EBO)というものですが、こちらは閉鎖的な環境ではなく予測不可能な世界ではあるものの、敵がこちらの行動に対して決まった反応を返すという前提を元に、自らが求める最終態勢(ミリタリーエンドステート)へ導くというものでした。
2018-01-03 18:58:18EBOは対象の過去の反応データの蓄積によって解を出します。これはAIでいえばディープラーニングと同じです。しかし、これには「敵が必ず同じ反応を返す=自由意思が存在しない」という前提が必要です。ですがそんな敵がいるはずもなく、イラク戦争以降米軍はこの意思決定プロセスも破棄します
2018-01-03 19:00:23そして現在採用されているのがシステマティック作戦デザイン(SOD)というものですが、これは不確実で予測不可能な社会環境を前提に敵が自由意思をもって行動することを前提に、分析の都度敵の意図、利益、報酬を分析し、敵がどのように学習したかを明らかにしてこれに対処するというもの
2018-01-03 19:11:31これは人間の学習を作戦決定の焦点を当てるため、クラウゼヴィッツが人間性に起因するとした戦場の霧の予測に最も近い。けれどこの予測というのは不確実要素を元にモデルを立てるので、どうしても最後には人間的な直感が必要になる。米軍では現在、この直感や洞察力こそ指揮官に必要な素養と考えている
2018-01-03 19:15:06しかもEBOでも、「求める最終態勢へ誘導するため敵や主体への干渉を行う」という、この誘導プロセスがなかなかクリアできない。AIはその場その場の正しい結論は出せますが、求めるヴィジョンへ向けての一貫した積み重ねは人間にしかできない なので上に立つ存在こそ人間じゃなきゃダメというのが結論
2018-01-03 19:20:41ちなみに米軍の例でお話ししましたがこの辺の話はマティス長官の論文等から要約して引っ張っております。マティスはEBOについて「クローズドシステムに対する適用であれば有効だが、混沌が支配する戦場では、むしろ予測不可能なシステム、複雑かつ適応性あるシステムが開いてである」と述べてます
2018-01-03 19:25:52