野生動物の個体数を減らせば人間との軋轢が減るわけではないという話

秋田県におけるツキノワグマの過剰捕獲の疑いに関するニュースをきっかけにしてつぶやいた、「単純にクマやイノシシなどの個体数を減らせば人間との軋轢が減るというわけではない」という主旨の一連のツイートを自分でまとめました。
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桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

野生動物の出没頻度が増える仕組みと、人里に依存・定着する仕組みを切り分けて考えることが必要。読む際はその点に要注意。 熊、鹿、猪、猿等は「山に餌がないから人里に降りてくる」のではなく「山に豊富に餌があって人里に来るほど数が増えてる」が恐らく正解 - Togetter togetter.com/li/1187764

2018-01-10 11:28:18
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

確かに個体数が増えれば、個体ごとに餌を探す範囲が拡がったり、新たな生息域を得ようとする個体が出てきたりして、野生動物が人里周辺に現れる頻度は増えると思う。一方、目撃数が増えるのは人間を恐れない個体が増えたからで、農作物等への食害は、容易に人間の食べ物が得られることを学習したから。

2018-01-10 11:40:10
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

動物が人里に接近するリスク(怖い思いをする等)と、得られる報酬(美味しい食物が容易に手に入る等)を比較して、その個体にとって、報酬の価値がリスクを上回った時に人里への依存が始まる。学習によって人里と報酬の関連付けが強化されれば、被害は継続・拡大する。これが獣害発生の基本的な構造。

2018-01-10 11:52:22
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

個体数の増加は確かに動物が人里に接触する機会を増やすが、それは単に学習機会の増加を意味するにすぎない。もし最初の接触で、その動物が死ぬほど怖い体験をしたり、美味しい餌が得られなかったりすれば、ネガティブな学習が行われて、人里への接近や人間との接触を避けるようになるだろう。

2018-01-10 12:18:56
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

反対に、人里に接近しても何も脅威を感じなかったり、美味しい餌が容易に手に入ったりすれば、ポジティブな学習が起きて、人里への依存・定着に発展する。要は個体数の増加はあくまでもきっかけに過ぎなくて、動物にとってポジティブな学習が人間との軋轢を生むという方が本質に近いと私は考えている。

2018-01-10 12:18:56
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

「山に食べ物が無いから動物が出てくる」という誤解を解いたとしても、「動物の数が増えたから人間との軋轢が増えた」という単純な図式で、別の誤解を強化することには同意できない。個体数の増加と人間側の社会構造の変化が合わさって、動物の生活圏が人里に接近しつつあるという理解が必要だと思う。

2018-01-10 12:18:56
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

裏を返せば、単純にイノシシやクマなどの個体数を減らせば、これらの動物と人間との軋轢が減るというわけではないということを意味する。獣害対策に関わる人間はこの点をきちんと理解しておく必要があると思う。ただし、奥山の植生破壊をもたらすシカについては話が別。シカの個体数管理は絶対に必要。

2018-01-10 12:27:46

一連のツイートを受けての意見交換

かにかま @kanikani_4

@r_kikyoya 田口洋美さんの「クマ問題を考える 野生動物生息域拡大期のリテラシー」でも、同じことが書かれていました。 野生動物に対する人間の無反応が、問題の根源の一つであると思います。

2018-01-10 12:44:42
原 拓史 @haltaq

普通は軋轢は双方の個体数増加に比例、なんだけど、ヘンテコな例として絶滅しそうだけど人里にしかいない(末期のニホンオオカミ?)、獲物が全部ヒトの網の中(一時のトド、アザラシ)とかもありえるので、被害だけじゃない個体数モニタリングは必須ですよ、と。 twitter.com/r_kikyoya/stat…

2018-01-11 16:52:47
さとやまん @satoyamanagain

加えてドングリの豊凶とかもあると思うから「食べ物がないから...」も正しいんじゃないかなぁ twitter.com/r_kikyoya/stat…

2018-01-10 12:27:28
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

@satoyamanagain 山で得られる自然の食べ物が少なければ、餌を探す範囲が拡大して、人里に接近する機会は確かに増えると思います。問題は人里に接近した動物がどのような学習をするかです。人間の食べ物が容易に得られて、それに依存するようになれば、山に食べ物があっても、食害が継続する可能性は高いと思います。

2018-01-10 12:38:27
さとやまん @satoyamanagain

@r_kikyoya そうですね! もし人里に生ごみの放置や未収穫野菜などがあれば、奥山で食べ物を探すより楽に栄養価の高いものが食べられますね。 逆に柵等の対策をしっかりすれば多くの獣害が防げると聞きました。

2018-01-10 12:42:32
さとやまん @satoyamanagain

@r_kikyoya 「餌不足」と「個体数増加」は対立した概念でない(両立しうる)ことや、それらとは別に人里に誘引要因があるかが大切であることを認識する必要がありますね。

2018-01-10 12:43:03
さとたが @satotaga

@satoyamanagain @r_kikyoya 個体数が増えて餌不足になったのか、堅果植物の豊凶で餌不足になったのか、森林などの開発によって植生が単純化したことで餌不足になったのか、観察される結果は似たようものでも、個々の案件で原因が異なっているのを外から話聞いているだけでは分からないですからね。

2018-01-10 13:25:24
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

@satotaga @satoyamanagain 例え山に餌が不足していたとしても、人里に出れば餌があることを知らなかったり、出てきても餌が入手できなかったりすれば、動物にとって人里に近づくメリットはないはずですので、獣害に関しては、餌不足は決定的な要因ではないと思います。人間の食物を利用出来ないようにするのが不可欠かと。

2018-01-10 13:36:56
さとたが @satotaga

@r_kikyoya @satoyamanagain そうですね、私もそれが一番だと思います。奥山に餌が豊富にあろうがなかろうが、簡単に食べれて栄養価が高いものがあればそちら(里地)に行きますからね。

2018-01-10 13:50:01
さとたが @satotaga

@satoyamanagain @r_kikyoya 実は生ゴミや収穫残渣だけでなく、田畑のあぜ道に生えている雑草の栄養価も高いということを聞いたことがあります。田畑に撒いている肥料は全て吸収される訳ではないので、田畑の周辺に生える雑草もコマメに刈り取りしないと、餌場になり得ると。

2018-01-10 13:29:54
さとやまん @satoyamanagain

知らなかった!! 生態学系の知識って言われてみれば当たり前っぽいことでも気づかないことが多いな... 電気柵の漏電対策も併せて下草刈りが大切なのか... twitter.com/satotaga/statu…

2018-01-10 14:32:07
さとたが @satotaga

@r_kikyoya @satoyamanagain 個人的に疑問に思っているのが、今現在捕獲しやすい場所(林道沿いや里地周辺)でしか捕獲していないのもかかわらず、昨年の8月に環境省が出したデータでシカとイノシシの推定頭数が減り始めたことが良くわからないですね。それだけ捕獲しやすい場所に分布が集中していたのかもしれませんが。

2018-01-10 13:55:29
さとたが @satotaga

@r_kikyoya @satoyamanagain 特に離島の屋久島では、捕獲している場所が島内面積の2-3割の低地に限られているのですが、ヤクシカの推定頭数は減少傾向になっています。私は、シカもそこまで馬鹿じゃないから、里地だけでなく、国立公園内を含む奥山でも捕獲をしないと減らないと考えていたのですが。。。

2018-01-10 14:02:22
さとやまん @satoyamanagain

@satotaga @r_kikyoya そのデータ見てみたいです!! どう検索すれば出るでしょうか?

2018-01-11 19:16:11
桔梗屋@Deer Culler @r_kikyoya

@satoyamanagain @satotaga 私も探してみました。「ヤクシカ 推定生息 29年度」でググって2番目にヒットする資料などはなかなかわかりやすいと思うのですがいかがでしょうか。

2018-01-11 19:30:42
さとたが @satotaga

@r_kikyoya @satoyamanagain ヤクシカWGと検索してみて下さい。屋久島の世界遺産科学委員会の分科会のヤクシカWGの資料が出てくると思います。

2018-01-11 19:33:26