異世界小話~異世界だと元主婦でも算数できるだけで大金持ちになれた話~

なりてえよ…億り人によぉ…
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帽子男 @alkali_acid

あらやっだ。 描いた森の人から転載してもらったデフォルメ赤胴さんのイメージです。 pic.twitter.com/6Hx4PQVnxE

2018-01-12 21:42:01
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帽子男 @alkali_acid

異世界だと元主婦でも算数できるだけで大金持ちになれた話

2018-01-11 20:53:26
帽子男 @alkali_acid

その世界では、元主婦でも算数ができると大金持ちになれた。なぜなら、かけざん、ひきざん、たしざん、わりざん、とかですらちゃんと勉強している人間はほとんどいなかったから。 算数ができるだけで特殊技能。すごい。めっちゃえらい。

2018-01-11 20:54:57
帽子男 @alkali_acid

元主婦は、別にお金持ちの家に生まれたのでもなければ、親が学者とかって訳でもない。 ただたまたま、算数を学ぶ機会があった。少女のころ、僧院で料理番の下働きをしていたのだが、お坊さんのひとりがちょっと手ほどきしたのだ。

2018-01-11 20:57:08
帽子男 @alkali_acid

別にお坊さんに下心があったとかではない。全然ない。なぜなら少女は器量がわるく、別に料理のつまみ食いをしたわけでもなく、いつも腹を空かせていたのに、生まれつきずんぐりむっくりしていた。

2018-01-11 20:58:06
帽子男 @alkali_acid

まあ見た目も育ちもぱっとしない子ではあったが、花も咲き始めというか、娘盛りのころは男とくっつく機会はあった。 相手はお魚とかを買いにいくときに見かける沖仲仕の兄ちゃんで、おとめごころにはいなせに見えた。

2018-01-11 20:59:40
帽子男 @alkali_acid

でも駆け落ち同然に結婚してみると、まあ飲む打つのやまないクズ男で、女房は殴るは、金は使いこむはでろくなもんじゃなかった。 やることはやって、子供も二人できたが、ぶっちゃけ底辺生活だった。

2018-01-11 21:00:33
帽子男 @alkali_acid

楽しみといえば疲れすぎてないとき頭の中で算数パズルを解くか、遠くにある迷宮の街の、美男ばかりがそろう色町のかっこいい男娼の絵とかを瓦版屋で眺めるぐらい。 そういうところで遊ぶなんて夢また夢。絵すら買えない。あとはしんどい子育てと夫の暴力に潰されるかなって感じ。

2018-01-11 21:03:42
帽子男 @alkali_acid

まあでも急転直下。子供二人がいきなり交通事故で死んで、夫が荒れていっそう飲んだくれて土座衛門が港に浮かんで ばたばたしているうちにひとりになった。

2018-01-11 21:05:12
帽子男 @alkali_acid

夫は酔っぱらって足をすべらせたんだろうという話だが、どうせ喧嘩っぱやくてどんかのちんぴらともめた挙句だろうと思った。 楽になるかと思いきや稼ぎがなくなると、暮らしが立たない。ばたばたしたあげく、葬式もろくに出せず、泣き暮らしていたが、結局働きに出ることに。

2018-01-11 21:07:21
帽子男 @alkali_acid

近所に新しくできた醸造所。例の迷宮にある街の金持ちが建てたというやつで羽振りがよい。毎日馬車が行ったり来たりしている。 仕事はきついがまあ生きてくためには仕方ない。私も金持ちになりてえなと元主婦は思った。

2018-01-11 21:09:38
帽子男 @alkali_acid

醸造所をつくった金持ちの奥様なんか、毎日色町通いで、此の世のものとも思えぬ麗しくも艶やかな男娼たちの、磨き抜かれた歌や踊り芝居などを毎日楽しみ放題だそう。 「あらあらあら、やだあたしも好きなんだけど、会って話してみたいわあ」 「無理でしょ。せめてあんたも色町の常連でないと」

2018-01-11 21:12:30
帽子男 @alkali_acid

金持ちになりてえなあ。そういう気持ちが元主婦の中にどんどん高まっていく。時々視察に訪れるぴかぴかの馬車。話しかけることすらできない超おしゃれな衣装の奥様。上の暮らしってすごい。 それに比べてあたしときたら。ろくでなしとはいえ夫も子供もなくしてみると何もない。

2018-01-11 21:13:52
帽子男 @alkali_acid

だが算数があった。そのすごさが明らかになるのはこれから。 ある日の帰り道。といっても昼下がりぐらいのおだやかな陽射しのふりそそぐ時間帯。幸運な出会いが訪れる。

2018-01-11 21:15:32
帽子男 @alkali_acid

元主婦はちょっと早退していた。醸造所で変な穢れが広まるのを抑えるために、北の農協製のきっつい毒を撒くのだが、これを担当するとすごく具合が悪くなる。 ただちょっと上乗せで給金がもらえるので、暮らし向きが苦しいやつが引き受ける。そしてぐったりしたら帰される。

2018-01-11 21:17:47
帽子男 @alkali_acid

んで、たまたまお日様の高いうちに潮風吹く堤防の道を歩いていると、人気のない海辺に馬車が一台。そこから何かを転がしたような跡がついていて 砂浜にでかい釜。お湯とかを沸かすあれが据え付けてあり、そこに変なおじさんがとりついて、何かしていた。

2018-01-11 21:19:34
帽子男 @alkali_acid

「あらやだ。なあにあれ」 元主婦がしばしばする目をまたたかせて、のぞきこんでいると、おじさんは必死で釜からなにかをはぎとっているところだ。 長方形の、紙だろうか。ひどく薄い。羊の皮や毛で作ったものではなさそう。

2018-01-11 21:21:01
帽子男 @alkali_acid

その紙がひらひら、とこっちに何枚か飛んでくる。そばまで来ると、真珠のようにやわらかく淡く輝いているのが分かった。 「あらあらあらあら、ちょっとぉ。きれいじゃないのぉ」 つかみとる。 「ありがたい!よくやってくれた」

2018-01-11 21:22:35
帽子男 @alkali_acid

おじさんが話しかけてくる。でも元主婦は紙をにぎったままぼんやり立っている。頭に何か流れ込んでくる。数だ。とても長い数字の列のようなもの。 「おい!奥さん」 「やっだあ。あたしったら。はいお兄さん。返すよ」 相手は受け取らず、じっと見つめた。

2018-01-11 21:25:19
帽子男 @alkali_acid

「数字みたいのが頭に浮かばんかったかね??」 「やっだ!浮かんだわ!どうしてわかるのぉ?んもぉー」 「成功じゃ!複製でも…あ、いや、これは何を隠そう…迷宮の財宝なんじゃ」 「あらすっごい」

2018-01-11 21:26:19
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「でも買わないわよ。うちちょっと今きびしくてえ」 「買う?買う必要などない。これじたいが、金じゃ。名を****(“塊の鎖”を意味する古代の草原語だが元種にはその時は分からなかった)…別名、幻想通貨という」

2018-01-11 21:27:38
帽子男 @alkali_acid

「幻想通貨?んま?なにそれ」 「この幻想通貨はとてつもない価値を秘めておる。世界の未来!宇宙の神秘!とにかくすごい!持っているだけですごい!とてつもない」 「なにがどうすごいの?」 「そんなこと深く考える必要はない。あんた学者じゃないだろうが」

2018-01-11 21:28:52
帽子男 @alkali_acid

「まあそうね。すごいってだけ分かればいいわね」 「そう!すごいもんだから皆が欲しがるぞい!皆が欲しがるからにはどんどん値上がりする」 「え…いいわねえ…お金持ちになれるわねえ…」 元主婦の目が光る。おじさんもにんまりする。

2018-01-11 21:29:48
帽子男 @alkali_acid

「しかも…こいつは簡単に増やせる」 「え!?」 「さっき頭に浮かんだ数字があるな?あれをこう、簡単な算数で別の数字に変えれば、それだけで増える!」 「どういうこと?」 「まあ見とれ」

2018-01-11 21:30:43
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