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異世界小話~異世界にあるエルフの村は優しい美女ばかりの無料キャバクラだった話~

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異世界小話 帽子男 異世界 エルフ
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帽子男 @alkali_acid
異世界にあるエルフの村は優しい美女ばかりの無料キャバクラだった話
帽子男 @alkali_acid
異世界に行くとよくいるエルフの姫とかは、最初はツンツンしててもすぐだだ甘に優しくしてくれるし、泣き言もめっちゃ聞いてくれるし、おだてまくってくれる。 近頃は最初のツンツンすらなく、開幕即なでなで全開、ひざ枕もハグもなんでもありだったりする。
帽子男 @alkali_acid
しかも姫はひとりではない。複数いて皆がそれぞれ接し方はちがえど、とにかく大事にしてくれる。癒し。 よく「女の子がいっぱいいるお店に連れていかれると、人見知りをする男はつらいだけ」などと言うが、それは違う。
帽子男 @alkali_acid
実際は一緒にいった誰かの話題に合わせるのがしんどいだけで、自分の趣味とか自慢話や苦労話をすごいすごいたいへんでしたねと聞いてくれれば絶対に夢中になる。
帽子男 @alkali_acid
そんな優しくて聞き上手なエルフの姫ばかりがいるエルフの村があるとしたらどうだろうか。 広場にある座り心地のいい藤の長椅子に腰かけると、左右に金髪碧眼白膚、尖った耳に、切れ長の瞳、そろって美貌の妖精族の娘が寄り添い、薫り高い蜜酒を杯に注いでくれる。
帽子男 @alkali_acid
杯というのは、拳ほどもあるどんぐりをくりぬいて、細やかな象嵌をほどこした品で、手に持つとほのかに木の温もりを感じる。 なにせ妖精族の村である。すべてが自然と調和しているのだ。 並ぶのは大小さまざまな果実、花の蜜漬け、木の実の菓子。
帽子男 @alkali_acid
食卓を囲む妖精族の姫等は、肩や背中がむきだしの、えりぐりの深い純白の衣をまとっている。下は腰の付け根まできれこみが入った軽やかな裳裾。 みための年齢はさまざま。 少年や若者があこがれる、同い年かわずかに下の華奢な少女から 壮年の好むはちきれんばかりの豊満な大人の女
帽子男 @alkali_acid
初老からあとになると好ましい、やわらかみを帯びた熟女まで。 それぞれが皆、やさしく微笑んでもてなしてくれる。 「大変だったんですね」 「すごいです」 「わかります」 「あ、果実おかわり入りまーす」 「薄紅蜜酒も、もうひと甕でーす」
帽子男 @alkali_acid
もちろん。代金などとられない。妖精の村だ。 ただそこへ辿り着くだけで無限にもてなしてもらえる。姫等はひたすら褒め、慰め、感心し、一緒に悲しみ、笑い、時には怒ってもくれる。 「…まじかよ」 そんな風につぶやきながらも、男だったら長椅子に深く腰を静め、よしよししてもらうものだ。
帽子男 @alkali_acid
歴戦の冒険者だろうと同じだ。 たとえ迷宮の財宝という財宝を総ざらえにし、世に名を馳せた地獄の猟犬団の一員であろうとも。そこでは肩ひじはらずに、良い子良い子してもらえるのだ。
帽子男 @alkali_acid
「ほんとうにおつかれさまでした」 「おう」 妖精の姫のねぎらいに、白銀紋章という凄腕の資格を持つ冒険者、嗅鼻氏はぶっきらぼうに応じた。しかし表情はゆるんでいる。小柄な、まだ子供っぽささえ残る顔は、最近の心労でげっそりしていたが、今は幸せそうだ。
帽子男 @alkali_acid
「まじしんどかったよ…龍だぜ龍…いくら俺達が無敵の地獄の猟犬団でもよ…全員そろってなかったし、迷宮の主と勝負すんのはしんどすぎるって」 「でも生きて帰ったなんてすごいですー。嗅鼻さんさっすがー」 「まあよ…俺もこの稼業長ぇから」
帽子男 @alkali_acid
「わかりますー。嗅鼻さん、風格ありますよね!お若いのに」 「そうか?こう見えて…ほら、白銀紋章なんだよ。俺」 「あ、すっごーい!きれーい!…えーうっそー。これとるの大変なんでしょ?」 「まあな。それなりの財宝を迷宮から街まで持って帰ってきたやつだけがもらえる」
帽子男 @alkali_acid
「嗅鼻さんは何を?」 「俺?俺は確か、馬車に使う“疾駆の車軸”だったかな。あれがねえと馬車できねえんだわ」 「え!めっちゃすごくないですか?」 右隣に座ったほっそりした姫と話し込んでいると、いつのまにか左隣にぽっちゃり巨乳の姫が座ってすり寄ってくる。 「私にも聞かせてくださぁい💛」
帽子男 @alkali_acid
「疾駆の車軸は…なんか馬が車を引くときにその力を増すんだよ。そいつを十本ぐらいかな?まとめて持ってった。金貨二百枚にはなったぜ」 「えー二百枚!超お金持ちじゃないですか嗅鼻さーん」 「えーいいないいなー。私もほしい車軸ぅ」 「はは、あんた等はいらねえだ…げっほげほ」
帽子男 @alkali_acid
白銀紋章の冒険者は咳き込んだ。 二人の姫がすまなげにちょっと身を引く。たおやな姿態のまわりに、かすかに瞬く光の粒がとりまいている。 「…それ…なんとかなんねえの」 「ごめんなさあい」 「体質なんですぅ」 「あっそ。まあいいんだけど」 非の打ちどころのない妖精娘だが一つだけ難が。
帽子男 @alkali_acid
店、ではなく村に入ったときからとにかく粉っぽい。そこらじゅうに光る埃だか塵だか鱗だかみたいなものが舞っているのだ。 「でもぉ…前に村に来てた冒険者のお姉様が教えてくれたんですけどお。私達の粉って、街だとすっごい高く売れるらしいですよ?」 「そおそお…道具として使っても便利だしぃ」
帽子男 @alkali_acid
「知ってるよ」 妖精の粉。ふりかけた人間の身ごなしを軽くし、しかも気配を隠し去ってしまう。迷宮の最深部にひそむ異常に勘の鋭い魔物ですらだましてしまうほどの効能がある。 おかげで妖精の村は迷宮下層でもやっていける。凶暴な魔物にも強欲な冒険者にも侵されず。
帽子男 @alkali_acid
「あ、私ぃ、水煙管吸ってもいいですかあ?」 「私もぉ♪」 「おう好きにしろ」 水煙管というのは迷宮のある街のずっと東の方にある国の風俗だ。 香草を燻した煙を、透明な瓶に満たした清らかな水にくぐらせ、中空になった蔦の管で吸う。
帽子男 @alkali_acid
「あーおいしい」 「嗅鼻さんも一口どうですかあ」 「お、おう」 吸い口を変えて試す。さっそくむせる。 「んもー嗅鼻さんかわいい」 「無骨な男って感じが!…あ、ゆっくり、ちょっとずつ吸ってくださいね」 「おう…」 今度は大丈夫。
帽子男 @alkali_acid
「ふー…悪くねえな」 煙を吐きながら言うと、きゃっきゃと姫二人が喜ぶ。 「でしょお。私と妹があ、白羽草の花畑にたまった朝露を集めて、緑鳳花の双葉を干したやつを燻したんですう」 「お姉ちゃんほとんど何もしてないよ。私がやったんじゃあん」 「いーじゃん」
帽子男 @alkali_acid
「お前等仲いいな」 「そうですよお」 「大事な家族ですもん」 くったくなく微笑む妖精。また粉が出ている。楽しいと多めに出るらしい。 嗅鼻氏は若干慎重に呼吸しながらつぶやく。 「家族か…よくわかんねえな」 すぐ相槌。 「そうなんですね」 「今は私達のこと家族と思ってくださいね…」
帽子男 @alkali_acid
冒険者はうつむき額を抑える。 「は…いや…ありがとよ…」 涙がこぼれる。 「くそ…いや、わり…せっかく楽しくしてもらってんのに」 きらきらした粉がやたら周囲に渦を描く。 「嗅鼻さん?つらいことがあったら何でも話してくださいね…」 「私たち、誰にも言いませんから」 「…そうだな…」
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