日向倶楽部世界旅行編第31話「地図にない島」

那珂の過去、野分の旅立ち、トラック泊地はほんの僅かに揺れ動いた。 それはさておきブルネイ王国を満喫していた日向達は、ある日ブルネイ泊地司令部に呼び出されることとなる。
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三隈グループ @Mikuma_company

三人は波に揺らされながら辺りを見回す 「全然無いわね、本当にあるのかしら?」 「うーん、ブルネイの人たちも来てるし偽情報とかじゃあないと思うけど…おっとと」 強い波に最上はゆらゆらする、すると三人の元へ、後方に深海棲艦が出現したという旨の通信が入った。

2018-01-23 22:16:24
三隈グループ @Mikuma_company

「…後方とはいえ近いな、何故今まで気付かなかった?」 日向は眉をひそめる、ブルネイの友軍が迎撃に向かった為、三人は前方の警戒を続ける。 そうしているとすぐ、通信から扶桑の声がした。 「三人とも、来ますよ!」 「ん?それなら今迎撃が…」 「違います!別です!」

2018-01-23 22:17:25
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直後に船のレーダーが反応、三隈は大きな声で呼びかける 「10時の方向に深海棲艦!うち一体は姫級!近いです!」 「なんだと!?何故接近を許した!?」 「分かりませんわ、とにかく迎撃に向かってください!」 三人は一気に加速、迎撃に向かった。

2018-01-23 22:18:26
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同じようにヒューガリアンのブリッジにも緊張が走る 「これは…三隈殿、レーダーの故障でありましょうか?」 「いえ、この船の問題なら哨戒艦の方が気付くはず…どちらも接近を許してる以上、船の問題とは考えにくいでしょう。」 慌てるあきつ丸に、三隈はコンソールを忙しく操作しながら答える。

2018-01-23 22:19:35
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「妨害電波でも出てるか、深海棲艦が気付かれないようにしてるか…何れにせよ良い状況じゃあないねェ…」 窓の外を見ながら鈴谷はぼやき、義手の調子を整えてブリッジの扉へ向かう 「こうなった以上新手は必ず来る、あたしは隊長さん達とは逆に着くよ。」 彼女は親指を立て、ブリッジを後にした。

2018-01-23 22:20:23
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それを見て扶桑は残った二人に伝える 「鈴谷さん一人では危険でしょう、船は私に任せてお二人も援護に回ってください。」 「了解ですわ、扶桑さんもご無理をなさらずに。」 三隈は全権を扶桑に譲渡し、オペレーターから艦娘へと変わる、あきつ丸も同様にし、二人は出撃ドックへと向かった。

2018-01-23 22:21:29
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二人は手早く艤装を装着する、その中で三隈は、あきつ丸を見て真剣な顔つきで言った。 「…あきつ丸さん、日向さんも言っていたように、あまり無理はなさらないでね。」 「い、いえ…自分は無理などしていません、大丈夫であります。」 あきつ丸は俯いてそう言ったが、三隈は首を振った。

2018-01-23 22:22:27
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「いいえ、今の貴女は御自身の領分を超えた事をなさろうとしているわ、それは危険よ。」 「なっ…!じ、自分の器が小さいと言うのでありますか!?」 声を張るあきつ丸、だが三隈は冷静に、静かに応える 「違います。もっとご自分を大切になさってと、そう言っているの。」

2018-01-23 22:23:08
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穏やかに、優しく、そして毅然と諭す彼女に、あきつ丸はいつぞやの惨めな気持ちを思い出す。 「そんな事…じ、自分は…自分はただ…」 唇を噛むあきつ丸、その両肩を三隈はギュッと掴む 「…貴女が真面目で直向きなのは私がよく知っているわ、そういうところを尊敬しているし、好きよ。」

2018-01-23 22:23:56
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彼女は少し下にあるあきつ丸の目を真っ直ぐ見つめる 「だからね、私の好きな貴女のそういうところが貴女を滅ぼすなんて事、許せないのよ。」 包むような優しい眼差しがあきつ丸の心を解す、それは彼女を落ち着け、暴走を止めるだけの力があった。 あきつ丸はぐずっていた子供のようにこくりと頷く。

2018-01-23 22:24:38
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「ふふっ、大丈夫よ丸ちゃん、私が護って差し上げるわ。」 三隈は優しく微笑み、そっと手を離した。 あきつ丸の心にはまだしこりがある、それは三隈ではどうにも出来ない領域であり、埋めようの無いパズルの穴。 だが三隈の言葉も、穴を埋めるピースの一つである事に間違いはなかった。 〜〜

2018-01-23 22:25:27
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〜〜 二人はヒューガリアンを飛び出し、海上へと滑り立った。 「鈴谷さん、状況は?」 「案の定よ、ホラ。」 彼等が鈴谷の指差す先を見ると、遠くに深海棲艦の姿があった。 「数は大した事なさそうね、私が先陣を切りますわ。」 三人は三隈を先頭に突撃、深海棲艦と交戦する。

2018-01-23 22:26:10
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そしてそれらを殲滅した直後、あきつ丸が叫んだ。 「…三隈殿!あれは!?」 「まあ…もしかして?」 三隈はすぐさま通信を入れる 「フーさん、前方の島は地図にありますか?」 答えはすぐに帰ってきた 「いいえ、この近くに島はありません…」

2018-01-23 22:26:52
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その島はない、地図にはない。 しかし別方向で姫級を撃破した日向達、ブルネイの艦娘、哨戒艦の乗組員、そして発見した三隈達、全員がその島を、確かに見ている、あるのだ! 「つまりあれが、地図にない島です!」 それこそが地図にない島!無いのにある島!全員が息を呑み、驚きに打ち震える!

2018-01-23 22:27:53
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「あれが…地図にない島…」 第一発見者であり、最前面で島を見るあきつ丸は思わず立ちすくむ。見た目はごく普通の島だったが、事情が事情だけにその島には大きな意味を感じた。 「アレがか…何があるんだろうねェ…」 鈴谷もその側で島を見る、目にはあきつ丸に比べると俗な感情があった。

2018-01-23 22:28:25
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と、二人が感慨に浸っていた時、少し後ろにいた三隈が何かに気付いて声を上げた。 「…!二人共!急いで下がって!」 「え?」 「この海…いいえ波!何かがおかしいですわ!」 声を張り上げる三隈、だが既に遅かった。 あきつ丸と鈴谷が、何かに引っ張られ始めたのだ!

2018-01-23 22:29:10
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「こ、これはなんでありますか!?」 「海に引っ張られてる…?」 足元の水がうねり、波が押し流す! 大きな力が二人を三隈から、ヒューガリアンからどんどん引き離していく! 二人は波間で必死にバランスを保つ、しかし引っ張る力は止まらない、海流はどんどん強くなる!

2018-01-23 22:29:56
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「このままでは…!」 あきつ丸は迅速な離脱を試みる、だが強い波は彼女のバランスを崩した! 「のわあっ!」 「丸ちゃんッ!」 海中に倒れこみそうになる彼女を見て三隈が悲鳴を上げる、だが彼女は倒れなかった! 「絶対に離すんじゃないよ!」 間一髪、鈴谷の右手が彼女の腕を掴んだのだ!

2018-01-23 22:30:38
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「す、鈴谷殿!このままでは貴女も!」 今にも倒れそうになりながらあきつ丸は彼女を止めようとする、しかし鈴谷は離さない! 「へへっ、あたしはプロだよ…命を投げ出す仕事はしない!」 彼女は得意げに啖呵を切り、ほんの僅かな岩場に目を向ける。

2018-01-23 22:31:23
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(…あそこにアンカーを打ち込めば、なんとか逃れられる!) 鈴谷は狙いを澄まし、鋼の左腕を構えた。 だがその時! 「アームズチェンジ…!?がっ…!」 彼女は苦悶の声を上げて顔を歪ませた!目な大きく見開かれ、手がガタガタと震え始めた! 「こ、こんな時に限っテ、サイアク…!」

2018-01-23 22:32:09
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左腕は脱出の切り札だった、だが彼女はそれどころではないようにその腕を下ろし、身体のあちこちを必死に抑える。 「畜生…言うこと聞ケヨ…!があぁッ!」 歯を食いしばり必死にバランスを取る鈴谷、だがそれすらも困難となり、やがて彼女はあきつ丸と共に海中へ倒れ込んでしまった。

2018-01-23 22:32:55
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「ク…ソッ…!」 「三隈殿!鈴谷どがぼぼがぼ」 「丸ちゃんッ!鈴谷さんッ!二人共!」 三隈の叫びも虚しく二人は荒波に揉まれ、その姿はみるみる遠くなる。 彼らの流されて行く先には、目的地である地図にない島があった。 第31話 「地図にない島」 おしまい

2018-01-23 22:33:53
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【ファラ・ベント・サイード・アル・チャンドラ】 ブルネイ泊地の提督。 高い指揮能力とカリスマ性を有しており、秘書艦娘である武蔵と共にブルネイの艦娘を率いている。 ムスリムの女性であり、常に黒い装束を着て全身を隠している、その為武蔵以外は素顔を知らない。

2018-01-23 22:34:27
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【ジャバード】 端正な顔立ちをした美男子。 その正体はファラ提督その人、訳あって女装をし、その素性を隠している。 ファラの時の丁寧な言葉遣いから一転し口調や振る舞いはとてもフランク、素性を隠さず自由になる事を望んでおり、自由に生きる怪物の武蔵と奇妙な関係を築いている。

2018-01-23 22:35:36
三隈グループ @Mikuma_company

【三隈】 三隈さんは誰にでも優しくゆったりと接する、高潔で素敵な人。 そして私にとっては友達で、恩人で、仲間で、かけがえのない人。 だから私は役に立ちたいと必死になる、でもなればなるほど、何もできない自分が水面に映る。 私の役って、誰にでも出来るのかな… (あきつ丸) pic.twitter.com/oUPLaMm41k

2018-01-23 22:37:04
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