異世界小話~異世界ものでも「おねショタ」はやっぱ最高なんだよなって話~

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帽子男 @alkali_acid

首刈りの罠を手に近づく、冒険者集団"茜の剣"の最後の一人に、東の帝国の密偵はまだ視力が戻らぬままわめく。 「まてまて!交渉しよう!わしがこの街を救うのを助ける」 「ふっ…そいつは俺以外にする話だな…俺ぁこの街がどうなろうが知ったこっちゃねえ…昔のけじめをつけられりゃいい」

2018-01-30 01:51:07
帽子男 @alkali_acid

「嫌いではないぞ…そういう男は…だがまずいのう…そう筋を通されると…」 いきなり虚空から鉤つきの縄が降ってきて、錬金術師の襟に引っかかった。 「わしも街を去りがたいわい!がははは!」 あっけにとられる盗賊をよそに、東方人は一気に天に向かってのぼっていく。

2018-01-30 01:53:56
帽子男 @alkali_acid

その足に別の男がしがみついた。 「錬金術師様!俺も連れてってくだせえ!あの、酒屑の野郎はとんでもねえ乱暴もので、参事会の飼い犬の、火傷の衛士隊長と組んで…ひええ!?なんだこりゃあ」 「ええい、落ちろ!阿呆!落ちろ!」 もみあいながら、二人は空に吸い込まれていった。

2018-01-30 01:55:28
帽子男 @alkali_acid

二つの太陽が傾く高み。きれぎれの雲のあいだに、蒼穹に溶け込むような何かがある。 「ありゃ…なんだ…」 「気球、というらしいぞ。東の帝国の発明だ」 罠にかかったまま、義眼の女が言う。 「愚かな男だ。帝国を敵に回すとは」 「へっ。愚かなのはどっ…」 大地が揺れた。

2018-01-30 01:57:53
帽子男 @alkali_acid

魔物があふれ出す。寺院跡地から。街に。そして空にも。 煙か霧のごとく、飛翔する魔物の群が気球を包み込んでいった。 「…やべえ…」 酒屑はごくりと喉をならし、罠を解除した。義眼の女は釈然としない表情。 「何を…」 「あんたに機会をやる…冒険者らしく、魔物と戦って街を守るか」

2018-01-30 02:00:46
帽子男 @alkali_acid

「ここで俺の手にかかるかだ。いっとくが死ぬまでにさんざん泣き喚くことになるぜ」 「…群青鞭…お前…なぜだ」 「どっちにする」 「なぜ…黄金紋章…いや白金紋章もお前なら」 「どっちだ!」 「魔物と…戦う…」 「じゃあいけ…」

2018-01-30 02:02:14
帽子男 @alkali_acid

冒険者の酒場の亭主が走り去ると、盗賊は顎を指でつつく。 「火傷の旦那…今度ばかりは…本当にいけねえぜ…」 そばでは見習い絵師が脱いだ上着で小さな冒険者を包んでいた。 「もう大丈夫だからね」 「お父さん…お父さんいかないで…」

2018-01-30 02:04:04
帽子男 @alkali_acid

「草採君…あいつは…」 「お父さんが…いなくなったら…俺ひとりになっちゃう…やだよ…なんでもするから…いっぱい…きもちよくするから…ねえ」 「っ…ひとりになんてならない!草採君には私がいる!私が…私が草採君をお嫁さんにするから!だから!」

2018-01-30 02:06:03
帽子男 @alkali_acid

少年はぼんやり年上の女性を仰ぎ見る。 「…っ…ぁ…?…早…筆さ…ん…?」 「私だよ…草採君…私…もう…離さないから…ずっと…そばにいるから」 「俺…あ…うん…あ、り…がとう」 我も我もと黒い仔犬達が寄って来る。口と肢についた血はきれいになめてぬぐってある。

2018-01-30 02:08:16
帽子男 @alkali_acid

くっつきあう犬と少年と娘を、はたから中年男はちらりと一瞥して顎を指でつついた。 「いいねえ…迷宮では恋をするものから…なんだっけ…幸せになるだっけか。ま、そりゃそうと…嫁…?」

2018-01-30 02:10:33
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