部族化シリーズ 3話~キモオタの家に裸族の双子美少女がいそうろうに来た話~

2月のハットマンズショーは異世界が転生してきて人類が交代しちゃう話
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帽子男 @alkali_acid

弟はやすりのような声で告げる。 「ただの厄介ものだ」 「…そこまで言う…えっ…もっと穏やかに話そう」 「だったら考える機械を返せ」 「あれは捨てちゃったよ。獣を引き寄せるし」 「このっ」 行政委員が立ち上がる。がらくた屋は困り果てて椅子の上で足を抱く。 「勘弁してよ…」

2018-02-14 22:47:48
帽子男 @alkali_acid

イケメンが手ぶりで合図をすると扉が開く。 「すまないが拘束させてもらうぞがらくた屋…それと防衛団はあなたが隊長だったころの愚連隊とは違う。無駄な抵抗はよすんだな」 そのふんぞり返る頭を肉球がおさえる。パンダが入ってきたのだ。 「親方。話し合いは終わりですか」 部族の若者も。

2018-02-14 22:49:56
帽子男 @alkali_acid

助手達の登場に、ヒゲ男はひきつった笑いを浮かべる。 「誰も殺したり食べたりしてないだろうな」 「ええ。穏便に済ませました」 刺青の青年、スンシンが告げると、大熊猫ライライも投光器を瞬かせる。 「食べてないよ」 って。

2018-02-14 22:51:32
帽子男 @alkali_acid

親方は安堵の吐息をつく。 「じゃあ…また君がもうちょっと冷静になってからもう一回話し合おう」 「…兄さん…私に勝ったつもりか…こんな…野蛮な…」 「勝ち負けじゃなくて、シメちゃんの養育権の話ね…また今度」 がらくた屋の三人が出ていくと、行政委員は罵りとともに机の足を蹴り飛ばした。

2018-02-14 22:53:42
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 「シメつまんなーい」 「あー親方はやく戻ってこねーかな」 宿泊所の部屋でごろごろしている子供二人。カイとシメ。 「もー。せっかくお外にいるのに退屈ー」 「居住区ってだるいよなー…また学校行かされるのかなー。それが嫌で輸送隊の実習やったのになー」 「かっこいい男の人ー!」

2018-02-14 22:56:17
帽子男 @alkali_acid

カイは振り返る。ひますぎておしゃべりの種を探してしまう。 「そういやシメの言う、かっこいい男の人てどんなんだよ。スンシンみたいの?」 「そー!だけどスンシンはシメのことちやほやしてくれないんだもん。あ、あの部族の男の人かっこよかった」

2018-02-14 22:57:33
帽子男 @alkali_acid

シメの発言に、カイはぎょっとする。 「え、それってまさか、この前、親方に喧嘩うってた部族の狩人?」 「うん!」 「まー確かに強そうだったけどさー」 「じゃーカイはどんなのがいいの」 「俺はあの双子…のもっと大きくなったのがいいな。うわさの女狩人、ユミみたいの」 「またユミの話ー?」

2018-02-14 22:59:15
帽子男 @alkali_acid

シメはなんとなく不機嫌。カイもむっとする。 「いいじゃん!強くてきれいでさ!」 「カイには似合わない…」 「てめえ!」 「カイにはシメちゃんがいるでしょー」 「なんだよそれ!」 「お腹減ったー!」 「なんだよそれ!!」

2018-02-14 23:00:44
帽子男 @alkali_acid

二人は会話に飽きてまたごろごろする。 やることない。もちろん居住区のほかの場所では集団農場や工場で大人が働いているし、学校では子供が勉強しているのだが。 「やっぱり部族の方がいいよ」 「お腹減ったー!」

2018-02-14 23:02:56
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ キモオタの家に、ほぼ裸で全身刺青の美少女双子がいそうろうになってから、あたりまえだが生活は激変した。 可愛いけどいつ襲ってくるか分からない肉食獣が二頭いつでもそのへんをうろついているのを想像してほしい。興奮してきた?分かる。 アマルにとっても悲喜こもごも。

2018-02-14 23:04:37
帽子男 @alkali_acid

良かったことはナギとナタの二人がママになついて、いつでもどちらか一方が傍にいて、何くれとなく手伝いをしてくれるようになったことだ。食事のしたくはもちろん、入浴やトイレまで嫌がらずつきそい、四六時中話しかける。 ママのベッドで二人して丸くなっていることもある。 猫みたいでかわゆい。

2018-02-14 23:06:43
帽子男 @alkali_acid

でも一面では母親を人質にとられている。誰かに部族が居住区にまぎれこんでいるとばらしたりしたら、何をするか分からないという脅しの意味もある。 そして悪いことは。すごくオタクをdisってくる。 「気持ち悪い」 「そのロボ?がらくたにこだわる旧人、気持ち悪い」 「何の役にも立たない」

2018-02-14 23:08:42
帽子男 @alkali_acid

「ろ、ロボはすごいんだぞ!知らないのかい?前に大型獣がこの居住区を襲ったとき、最強ロボ炒鋼に乗って戦った英雄モトキのすごさを」 ナギとナタは顔を見合わせる。 「あいつロボのことになると急に早口になる」 「気持ち悪い」

2018-02-14 23:10:11
帽子男 @alkali_acid

「だいたい、この旧人の巣を助けたのは、父上と母上」 「ロボは役に立ってない」 冷静な指摘に、顔真赤になるアマル。 「ち、違う!モトキ隊長は防衛団を率いて最強ロボ炒鋼と最速ロボ刀焦の連携で大型獣の襲撃を防いだんだ!」 「モトキ?」 「知らない?そいつどこにいる」

2018-02-14 23:12:22
帽子男 @alkali_acid

「も、モトキ隊長は…なんかいなくなっちゃった…噂じゃ裏切ったって…部族を攻撃するのを拒んだって…でもパパは言ってた…モトキはしょぼいけど王子様だって…」 キモオタのしりすぼみな主張に双子はたたみかける。 「しょぼいのか」 「弱虫だな」 「新人の強さを怖がったな」

2018-02-14 23:14:23
帽子男 @alkali_acid

キモオタまたも顔真赤。 「モトキ隊長は弱虫じゃない!いや弱虫かもしれないけど…でも最強ロボ炒鋼にさえ乗れば無敵の…」 「ロボ。この前もやられてた」 「うん。飛行獣に潰された」 くやしいのうくやしいのう。 「炒鋼よりもっと強いのだってある!拙者達が今…あっ」 口を滑らせた。

2018-02-14 23:16:52
帽子男 @alkali_acid

「ふーん」 「そう」 双子はどうでもよさそう。アマル涙目。 「まあ三人ともここにいたの」 ママがクッキー持ってくる。なんと歩行器なしで。 「ママ!?どうしたの?」 「なんだか最近調子がいいの。ナギとナタが来てからね」

2018-02-14 23:18:36
帽子男 @alkali_acid

「わあ…すごいよママ!」 「今度の健康診断楽しみね…次の休みは家にいられるの?皆で公園にピクニックにいかない?」 「えへへ…えへ…ごめん…泊まり込み…」 「そうなの…」

2018-02-14 23:20:09
帽子男 @alkali_acid

ママが台所に戻ると、美少女によるキモオタdisが再開。 「また母親をほうってどこかいくのか」 「病気だぞ」 「うう…でもママ最近ほんとに元気。見て。黒い髪がまた生えてきたし…それに目もちょっと良くなったみたい…病院じゃ回復は無理って言ってたのに」 「なのにお前はまたロボか」

2018-02-14 23:43:31
帽子男 @alkali_acid

「仕事なんだよお…拙者がロボをやるから、農場での労働も免除だし、食糧割り当てだって多いんだよ…パパやママの恩給もあるけどさ…」 「気持ち悪い」 「がらくたいじり」 「そんなことない!君達だって夜鳥(ぬえ)を見たら…あ…」 アマルはまたうっかり喋りすぎてから後悔。

2018-02-14 23:45:28
帽子男 @alkali_acid

「それより用事っていつ終わるのさあ」 「まだ」 「思ったより旧人の巣、広い」 「シメの匂いが分からない」 「シメって誰なのさあ…うう…仕事の準備しなきゃ…」 キモオタだけど働いてる。そこは偉いところだ。ニートじゃない。 まあ周りからは理解されてないけど。ロボとか。きもい。

2018-02-14 23:46:54
帽子男 @alkali_acid

「また泊まり込みになるけど…ママのことお願いするね」 ちゃっかりしてるデブ中年。 「しかたない。カリマの世話はしてやる」 とナギ。呼び捨て。偉そう。 「まかせた」 とナタ。例の用事の方をやるらしい。

2018-02-14 23:52:16
帽子男 @alkali_acid

キモオタ。職場へ。人目を避ける廃棄区画。 秘密の工廠。身分を厳重に確認して入る。 ロボがある。ただし異様。炒鋼が素体のようだが別のものを取り込んでいる。 かつて空から降ってきた小さな船。シーメールのシメちゃんが乗ってきた宇宙機。融合している。ほかに中型獣の皮革なども。

2018-02-14 23:54:22
帽子男 @alkali_acid

さまざまな獣の一部を吸収したさまは、あえて言うなら合成獣、キマイラ、とでも形容すべきか。 コックピットの部分はむき出しになっていて、少女の屍体が溶接、いや融合してある。部族の刺青が見える。 「うう…あれだけは趣味悪いなあ…」 キモオタ。ロボにはうるさい。

2018-02-14 23:56:18
帽子男 @alkali_acid

「いくら核になる"考える機械"がないからって、代わりに人間の屍体…それも女の子のものをくっつけるなんて…」 「お、そうだな」 横にナタ。 「ひええええああ?どうやって入ったの!!!?」 「見張りを倒した」 「ひええああ!?」 「うるさい」

2018-02-14 23:57:44
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