仲山ひふみ「ホラーについて」

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仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ところで一昨日あたり近所のTSUTAYAに立ち寄って国内低予算ホラーの新作の棚を見てみたら、五〇作ぐらいあるなか一本も借りられていなかった。それぐらいホラーはいま人気がない。その人気のなさ自体考察の対象となりうるが、いずれにせよいまホラーについて書くことは、書き手に一種のリスクを課す。

2018-02-15 22:33:33
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

思弁的実在論の近年の動向を見るにつけ、当初の相関主義批判「だけ」でいく路線はなりを潜めつつあり、言うなれば一種の「ミニマルな相関性」の不可避性をそれぞれの理論的枠組みのなかでどう捌くか、という方向性に向かいつつあるように見える。僕も最近は「否定神学(強い相関主義)」をどうやって→

2018-02-15 22:38:25
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

→「強い相関主義」をどうやって思弁的哲学(メイヤスー以降の実在論的立場)と接合するかという方向で考え始めている。そのことと連動してジャンルとしてのホラーの潜勢力に対する考え方も変わってきたと思う。ホラーにおける累乗された外部の無限性(超限性)を相関性の外部と見るような立場から→

2018-02-15 22:42:48
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

→ブラシエ的な(背景にはラリュエルがいるが)「喜びではなくむしろ痛みこそが普遍的である」という見方のアナロジーで、ホラーの情動をむしろ超越論的統覚の作用を「緊急停止」させるようなそれとして捉える方向にいき、そこから思弁的(脱-相関主義的)合理性の本性を見直したいと考えている。

2018-02-15 22:49:01
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

「ホラーの感情の起源には捕食者-被食者関係がある」という思弁的仮説、すでに言っているひとが存在するかもしれないが、僕のほうでも以前から考えていたアイデアではあるので、ひとまずここで僕のオリジナルであると宣言しておきたい。知らぬ間に他人に使われてしまうと悲しいので。

2018-02-15 22:56:18
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ていうかトマス・リゴッティ訳しましょうよ、誰か。

2018-02-15 23:00:32
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

@yishioka この本(amazon.co.jp/%E6%81%90%E6%8…)とかに書いてあるのかな。ご教示感謝いたします。

2018-02-15 23:03:15
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

@yishioka 補足のため言うと、思弁的/哲学的な文脈(それこそフロイトの「快感原則の彼岸」が属しているような文脈)でホラーの感情を捕食者-被食者関係に結びつけた論者はいままでいなかっただろうから、オリジナルとしておくというのが元ツイートの主旨です。ホラー論一般ではありそうな発想だとは思います。

2018-02-15 23:14:39
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

というか、有機体が外界の非有機的刺激に対して、自身の外側の被膜を犠牲にすることで生存を図るという「快感原則の彼岸」で描かれた防衛機制(刺激保護)の起源や、あるいは後期フロイトにおいて重要性を増した攻撃性の概念とかのうちに、捕食‐被食関係はおおむね含意されているとも考えられるが。

2018-02-15 23:29:24
Yoshiharu ISHIOKA @yishioka

@sensualempire ショーペンハウアー・ニーチェ・フロイトという系譜が重要そうです

2018-02-16 00:09:24
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

@yishioka そうなりそうですね。デリダを研究している院生からのエアリプで、ハイデガー的不安などの射程を超え出ているのかという疑問もあったので、フロイトに行くラインとは別に、キルケゴールやハイデガー(サルトル)のラインも見ておく必要がありそうです。何にせよ謀図サジェストありがとうざいます。

2018-02-16 03:51:36
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ピーター・ホルワードによるクリストファー・ワトキンス『今日のフランス哲学』(2016、エディンバラ大学出版)の書評。バディウからラトゥールへと進むにつれ「人間の形象」の範囲がより広くなり多様になるという同書の物語の単線性に対しては少なからず批判的な様子。radicalphilosophy.com/reviews/indivi…

2018-02-16 03:30:17
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ホルワードとしては、人間を他の動物から区別するとされる推論や肯定的思考などの「ホスト能力」(とワトキンスが呼ぶもの)をもたない高齢者や障害者をも包摂する新たな「人間の形象」に到達するためには、まさしく彼らを人間の名のもとに肯定する「ホスト能力」が必要になる、と言いたいようだ。

2018-02-16 03:40:25
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ホルワードの書評の内容とは別に、マラブー『新たなる傷つきし者』は僕がいま考えているホラー論にも直接結びつくだろうという感想をもった。脳がリテラルな傷を負わされ、そのために主体性(「精神」の構造)が可塑的に変形されてしまうこと。それがただちにホラー的になるわけではないけれども。

2018-02-16 03:47:42
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ホラーが、精神(超越)に対する身体(内在)の優越のしるしとなるのは、後者が前者を徹底的に有限化する限りにおいてである(むろんそれ以前に身体自身も他の身体との関係において局所化、有限化されている)。マラブー的脳損傷もまた、精神/精神分析の外側の、物質的有限化のエレメントを指し示す。

2018-02-16 21:29:48
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

言うまでもなくここでのマラブーの援用は、千葉さんの「ラディカルな有限性」から想を得ている。今日同論文を読み返してみて、初読時に見落としていた重大なヒントが後半部にいくつもあることに気づき冷や汗をかいた。SRを超越論哲学の「自殺しつつの生き延び」と総括する箇所など特に。哲学の剰余性。

2018-02-16 21:55:19
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ホラーの感情は、実体のもつ何らかの属性(汲み尽しがたさ、有限性あるいは無限性)に紐づけられるべきものではなく、むしろ広義の物語の形式やタイプにこそ紐づけられるべきものなのだろう。モダンホラーはハッピーでもバッドでもない、ポテンシャルレスなエンディングこそを好むだろう。

2018-02-16 22:06:21
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

誰も彼もが教養を豊かにし趣味を洗練させ意識を高め思考を深めてくれるような、いわばポテンシャル増し増しの「精神のサプリメント」を求めて文化の領域にアクセスしている状況がある。ホラーはしかし、そんなオーディエンスの期待には応えようとしない。物語形式のレヴェルで、希望を拒否するのだ。

2018-02-16 22:18:28
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

ホラー(の物語形式)は哲学的/批評的思考にとって価値のある何かを約束してくれたりなどしない。ホラーにおける「来たるべきもの」とは、おそらく捕食者のことなのだから。文化的豊かさとは完全に対立する。にもかかわらず、その非意味的報われなさこそがホラーの徳、特異性なのだと言える。しかし。

2018-02-16 22:31:17
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

一昨日あたりからの僕のツイートを読んでくれているひとの眼には、僕がいまホラーを論じる意欲に満ちみちているように映るかもしれないが、違うのだ。それどころか、正直に言って、僕はホラーを論じることを恐れている。僕がSRに言及し始めた当初にも、似たような躊躇の感覚があった。

2018-02-16 22:38:31
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

「この先に進んでいいのか」というほとんど本能的なためらい。それがSR(思弁的実在論)に触れ始めた当初感じたことだった。カント的限界の哲学(超越論哲学)とその後継たる広義の言語哲学、構造的不可能性の哲学を乗り越える、それはいい。だが乗り越えた先に人文知は居住不可能ではないのか、と。

2018-02-16 22:52:06
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

微妙な書き方になってしまったが、要するに「思考を強化せず衰弱させるところにこそホラーというジャンルの可能性の中心が見出されるが、〈だからこそ〉この有限化の作用だけを言祝がないようにしよう」「個別具体的ホラー作品のポテンシャルレスな核を覆っているリッチな表象の層にも注目しよう」と。

2018-02-16 23:12:45
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

浅沼光樹さんの二年前のブログ記事。ハーマンのラヴクラフト読解への反論箇所が特に興味を引く。邪神の現前の過剰性について。(しかし僕もホラーについて、ジャンル愛好者側から批判されそうなことを結構言っている気がする。いずれ御叱正賜りたいところ。) otomegu06.hateblo.jp/entry/2016/06/…

2018-02-16 23:24:59
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

とにかく僕の最近の関心は、誤解を恐れず言えば、「思弁的哲学(≒現代の実在論的立場一般)」の〈貧しさ〉と「強い相関主義(≒ポスト構造主義)」において頂点を迎える超越論哲学の〈豊かさ〉とを、どうやって一つの思考の座に併存させ、どうやってその二つを同時に〈生きる〉か、に向けられている。

2018-02-16 23:34:17