【悪堕ちシナリオ】『融合や異形系悪堕ちシナリオ』+生体ユニット化

人類と、正体不明の敵性生命体が戦っている世界において、同じ部隊に所属していた男性パイロットである「ケン」と、女性パイロットである「アリス」、そして彼女の愛機である「グリフォン」を巡る、悪堕ちの物語。
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悪堕研究機構 @utakuochi

「あと200秒で決断しろ、こいつに蹂躙されて基地ごと滅ぶか、基地から離脱して未来に戦力を残すか」 「……分かった、脱出する。ケン、お前も……戻って来れるよな」 「アリスと同じ言葉を返すぜ」 「俺たち、苦しい仕事をしてるな」 「ああ……」 「1000秒で脱出を完了して残りの時間で距離を稼ぐ」

2018-02-25 12:54:47
悪堕研究機構 @utakuochi

「分かった、1000秒はこいつを基地に指一本触れさせない」 「助かる……! では、武運を祈る」 「お前たちもな」 モニタリングは続行するが、通信は切った。 俺はただ、可能な限り長く彼女を引き付け、基地への被害を食い止めればいい。 そこの私情を挟むとか、不測の事態を考慮する必要はない。

2018-02-25 13:01:16
悪堕研究機構 @utakuochi

俺は、彼女の前進速度に合わせて少しずつ俺の機体を後退させた。 このまま彼女を刺激しなければ、交戦に入ることもない。 彼女は、正に俺という獲物を前に舌なめずりしている獣に過ぎないから、こうやって時間が稼げるはずだ。 「ケ……ン……」 再び彼女が俺の名前を呼んだ。

2018-02-25 13:12:58
悪堕研究機構 @utakuochi

「ケン……」 俺の名前を呼ぶ毎に、俺との距離を詰める毎に、俺を射抜いていた鋭い瞳と、硬い口元がどんどんと緩んでいるのが分かった。 全体のカラーリングはグリーンのままだが、機械とは思えないほど滑らかな曲線を描く全身の装甲と、それらが擦れ合う各部関節から覗く有機的な管と、軋み。

2018-02-25 13:22:14
悪堕研究機構 @utakuochi

その装甲の表面には、相変わらず心臓の鼓動に合わせるように、身体の各部先端へと向かって走る光の線が定期的に明滅し、機械の獣となった彼女の全身を艶やかにライトアップしていた。 彼女の前脚が動く毎に、彼女の胸部から垂れ下がった、重量ある半球状の構造物がたわわに揺れる。

2018-02-25 13:28:12
悪堕研究機構 @utakuochi

彼女の後脚が動く毎に、彼女の臀部から伸びる尻尾が左右に艶かしく振れる。 彼女は、全身を冷たい金属に覆われた機械の獣でありながら、その挙動は雄を誘う雌そのものであり、グリフォン特有の凛とした威厳と、彼女らしい魅せる美麗さが相まって、これに欲情してしまう者もいるかもしれない。

2018-02-25 13:31:13
悪堕研究機構 @utakuochi

「ケン、ワタシ、ツヨクナッタヨ」 ああ、よく分かる。 アリス、お前はとても強くなった。 単騎で基地を壊滅させられるくらいのポテンシャルを秘めているよ。 「ミテ、コノツバサ。コレガアレバ、ジユウニ、ソラヲトベル」 ああ、よく知っている。

2018-02-25 13:34:34
悪堕研究機構 @utakuochi

お前は、グリフォンを駆って、空を飛ぶことが好きだったものな。 誇らしげに俺に見せているその翼は、お前によく似合っているよ。 「トテモ、キモチガイイノ。スベテガ、リカイデキル。ワタシガ、オモッタヨウニ、ウゴカセル」 ああ、なるほどな。

2018-02-25 13:59:19
悪堕研究機構 @utakuochi

お前は以前から、グリフォンの機体性能が自分の操縦に追いついてないと、もどかしさを訴えていたものな。 人機一体というか、機体の全てを把握して、機体を自由自在に動かせることがとても気持ち良いのだろう。 それこそ、正常な人間の、アリスの意識がグリフォンへと蕩けてしまうほどに。

2018-02-25 14:04:53
悪堕研究機構 @utakuochi

「ケン、アナタガドコニイルカ、ハッキリトワカル。ダカラ、アナタノモトヘ、スグニ、トンデ、モドッテコレタ」 ああ、そういうことか。 彼女はグリフォンと一体化することで、レーダーマップ、俺と俺の機体の位置を正確に把握できるようになったということか。 確かに、これは俺は逃げ切れない。

2018-02-25 14:13:17
悪堕研究機構 @utakuochi

「ツギハ、アナタト、ヒトツニナリタイ」 口端から液体を滴らせながら、蕩けた表情に彼女の顔面を変えながら、彼女は最後の言葉を発した。 敵が彼女とグリフォンを取り込んだように、彼女も俺を取り込む気でいるのだろうという考えが頭をよぎった。 程なくして、彼女と俺の機体は激しい交戦に入った。

2018-02-25 14:20:59
悪堕研究機構 @utakuochi

----- 勝てはしない戦いだった。 彼女の戦闘センスに、獰猛な獣性が加わった上に、彼女に与えられた新生グリフォンとも呼べる、化け物じみた性能を持った機体。 四足歩行で地上を駆け巡り、ときに背中の翼をもって加速し、空中へと飛び上がる戦闘スタイルに俺は着いていくことが精一杯だった。

2018-02-25 16:25:07
悪堕研究機構 @utakuochi

それに、敵生命体と同じく、個体のコアを潰さない限り活動を停止することはない。 彼女が更に凶悪だったのは、たとえ身体の一部が破損したとしても、基地内に残された資材を取り込んで瞬く間に再生していく点である。 この調子であれば動力エネルギーもその辺から取り込んで尽きることはないのだろう。

2018-02-25 16:29:41
悪堕研究機構 @utakuochi

そしてそのコア……恐らく、彼女自身が新生グリフォンのコアへと変化しているのだと推測したのだが、そのコアが位置しているであろう胸部も、先程の変貌の際に胸部に形成された半球状の装甲によって厚く覆われ、更に四足歩行の前傾姿勢によって正面からの攻撃が当てづらい絶望的な状況となっている。

2018-02-25 16:35:07
悪堕研究機構 @utakuochi

敵生命体と同質となり、完全なる戦闘機体となって、無限の生命力で俺を追い詰めていく彼女を前に、勝敗は既に決していた。 だが、それ自体は彼女と交戦し、皆を逃した時から既に覚悟していた。 それに、ここには俺が残る必要がある。 ここに彼女を縛り付けておくのが、俺の最後の任務になるからだ。

2018-02-25 16:39:01
悪堕研究機構 @utakuochi

幸い、戦闘を長引かせることには成功していた。 約束した1800秒、それはきっちりと守ることができたことには驚いているが、恐らく彼女の目的が、俺の機体を破壊することではなく、拘束することにあったためだと思われる。 つまり、彼女もここで遊んでいたのではないだろうか。

2018-02-25 16:54:15
悪堕研究機構 @utakuochi

彼女の武器は遠距離のものがなかった。 それは、敵生命体へと化していく過程で扱えなくなっていったのかもしれないが、その代わりに充実した近接武器を持っていた。 巨大なブレードと呼んでもいい刃物が五指の先端に付いた前脚と、それと同じくらいの殺傷力を誇る鉤爪が付いた極太の後脚。

2018-02-25 16:59:36
悪堕研究機構 @utakuochi

その爪が幾度となく俺の機体を襲い、また基地内の地面を抉り取り、建物を切り裂いていた。 それと同じように、彼女の尻尾もまた凶器であった。 動物は尻尾を姿勢制御に使うというが、彼女はそれに加え、方向転換する度に、鞭のように尻尾をしならせて襲いかかり、建物をどんどんとなぎ倒していった。

2018-02-25 17:04:49
悪堕研究機構 @utakuochi

「ぐっ……がっ……!」 遂に俺の機体は彼女の尻尾を捌けなくなり、その重厚な一撃を喰らって、ズドンと尻尾ごと地面へと叩き付けられた。 尻尾の衝撃に、メリメリと音を立てて破断していく基地の地面と、そこに埋まる形で四肢を破壊され、既に動けなくなった俺の機体。

2018-02-25 17:10:03
悪堕研究機構 @utakuochi

彼女は倒れている俺の機体の方に振り返ると、軽い足取りでふわっと飛翔し、機体の上に覆い被さった。 「ツカマエタ」 彼女の異形化した両手が、機体の両肩の部分をがっちりと掴んで地面へと拘束する。 俺は、メインモニターが死んで真っ暗になったコックピットの中で、彼女に掴まれる衝撃を感じた。

2018-02-25 17:15:19
悪堕研究機構 @utakuochi

次の瞬間、何も映らなくなったはずのモニターが再び点灯した。 「な……どういうことだ……?」 そしてそのモニターには、1人の全裸の女性が映っていた。 「アリス……?」 それは紛れもなくアリスだった。 先程まで交戦していた異形でもなく、胸部から露出していたときに見られた姿でもなく。

2018-02-25 17:19:27
悪堕研究機構 @utakuochi

「ケン、あなたに伝えたいことがある。私が、あなたを機体ごと取り込んでしまう前に」 「やはり、アリス……なのか?」 「いえ、あなたの目の前にいる私は、アリスであって、本当のアリスではない。本当のアリスは、いまこの外であなたを取り込もうとしている、グリフォンそのものになったモノ」

2018-02-25 17:25:39
悪堕研究機構 @utakuochi

アリスは、モニターに映る映像でありながら、こちらに一歩ずつ迫って来ていた。 「私は、あなたに会いたいと願うアリスが最後に残した、人間としての最後の一欠片。敵性生命体に侵食され、願いもその性質も歪められたアリスは、あなたを取り込もうとするよう、目的を汚染されてしまった」

2018-02-25 17:34:49
悪堕研究機構 @utakuochi

モニターに映るアリスは、ゆっくりとその両手を俺に向かって伸ばす。 グニャリ、と目の前のモニターが変形し、正にモニターの中から彼女の手が、彼女の全身がせり出して、実体となって俺へと抱きついた。 「ごめんなさい……本当にごめんなさい……本来はあなたとこういう風に再会したかったのに……」

2018-02-25 17:37:18
悪堕研究機構 @utakuochi

「アリス、お前は俺とこういう風に再会できたじゃないか」 「ううん、違うの。確かに私は、人間のアリスを代弁しているけど、アリス自身のデバイスの末端に過ぎないの。だから直に私もアリス……いえ、グリフォンへと変化する」 「……そういうことか」 「だから、“最後に”あなたに会えて嬉しかった」

2018-02-25 20:55:35
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