日向倶楽部世界旅行編第36話「悪の天才科学者ハイドロ博士」

ブルネイ泊地を発った日向達は、次なる目的地を目指し航海を再開する。 だがそんな彼らを秘かに狙う者たちがいた、その名を、悪の秘密組織ハイドロ団!
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三隈グループ @Mikuma_company

しかし! 「うげっ」 今度はステッキを掴まれ取り上げられ、モッスルは勢い余って床を転がる。 「あっ、取っちゃったけど良いのかな…?ねえ本当に大丈夫かい、ショーならもう満足だから無理しないでよ」 最上と他の三人はまたよろよろと立ち上がった彼を心配そうに見つめる

2018-02-27 22:15:04
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怪我人を見るような視線がモッスルを貫く、彼はそれを受けた事で、自分が敵と認識されていない事実を悟った、力量差があり過ぎるのだ。 (ぐ…強いと聞いていたが、あんまりだ、これではどうにもならない) 額から汗が噴き出し、白旗でも振るかのように白塗りのメイクがほんのりと滲む。

2018-02-27 22:15:44
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やがて彼は誰にも知られる事なく敗北を認め、荷物をまとめた。 「ぼくのショーはここまでだ…」 「そうか…キミの芸はとても面白かったぞ」 ウンウンと頷き日向はモッスルをねぎらう、彼はいっそう辛い気持ちになった。 「じゃあ、ぼくはこれで…」

2018-02-27 22:16:30
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そう言って彼はジェットパックを起動し、空へ飛び去っていった。 「さよならー!お元気で〜!」 彼の敵意に何一つ気付かず、日向達はその背中に手を振って見送った。 〜〜

2018-02-27 22:17:17
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〜〜 さて…そんな事があった後、日向達はピクニックを終え片付けを始めていた。 「私達は洗い物をしてくる、二人は甲板の片付けを頼めるか?」 「任してくださいよ」 最上の答えを聞くと、日向は重箱を抱えて初霜と共に甲板を後にした、残った最上は扶桑と共に片付けを始める。

2018-02-27 22:18:30
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シートを畳み、パラソルを閉じ、二人はテキパキと物を片付ける。 「テーブルは私一人で動かせますから、椅子をお願いします」 「力持ちですね…分かりました」 カフェエリアから拝借した椅子やテーブルを戻し、軽く箒で掃除をする。 背が2メートル超の扶桑に箒は短く、彼女は腰を折って掃いた。

2018-02-27 22:19:34
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やがて掃除を終えると甲板からピクニック気分は消え失せ、人工芝の広がるいつもの姿へと戻った。 「ふぅ…これで良しっと、扶桑さん手伝ってくれてありがとうございます」 「いえ、私もこの船の一員ですから、当然ですよ。」 扶桑はパンパンっと手を払う最上に微笑んで言った。

2018-02-27 22:20:34
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「…良い天気ですね」 扶桑は空を見上げる、進むヒューガリアンのそばを海鳥が飛び、潮風が彼女の長い黒髪を揺らした。 「最上さん、少し…休んで行きませんか?」 彼女が向き直ってそう言うと、最上はこれを受け入れる、二人は甲板の人工芝に腰掛けた。

2018-02-27 22:21:29
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「今日は楽しかったですね」 扶桑が語りかけると、最上は笑って答える 「あはは、そうですね…ブルネイじゃ外食三昧だったから、日向さんのご飯で色々休まりましたよ。」 「確かに、あそこのお食事は豪勢でしたものね。」 扶桑はぽんぽんとお腹を叩く最上に微笑む。

2018-02-27 22:22:30
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すると最上が問う。 「そういえば扶桑さん、横須賀だとどんなものを?」 「はい?」 「ご飯です、扶桑さんが普段どんなもの食べてたのかなーって気になって。」 どんなものも美味しい美味しいと言う彼女の食生活に、最上は少なからず興味があった。

2018-02-27 22:23:34
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扶桑は真っ赤な目を海と空に向けて言った 「ご飯…そうですね、ふふっ…色々とです。」 「へぇ…トラック泊地の食堂みたいなのがやっぱあるんですか?」 「そんなところですね、ええ…」 目を伏せて微笑む扶桑、前髪が重力に垂れ、彼女の顔に黒い線を引いた。

2018-02-27 22:24:38
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彼女はそのまま、静かに穏やかに呟く 「…こうして貴女と二人というのは、珍しいですね…」 「ですねぇ、大抵日向さんか初霜が一緒ですもんね」 最上は人工芝を撫でながら答える、それとシンクロするように、潮風が彼女の短い髪の毛をさわさわと撫でた。

2018-02-27 22:25:29
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のんびりとした空気が流れる、晴れた空にほんのり浮かぶ雲は、何者をも気にせずゆっくりと旅をする。 そんな景色を最上が眺めていると、扶桑が訊ねた 「…最上さん」 「なんです?」 「貴女は艦娘になった事を、どう思っていますか?」 彼女の赤い目が最上を見つめる

2018-02-27 22:26:30
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最上は経験豊富な強い艦娘であった、だがそれはそれだけ多くの戦いを経験したという事、扶桑はそれが気になっていた。 そんな彼女の質問に、最上ははにかんで言った 「あはは、確かにそういう事、一対一じゃないと聞き辛いですよね。」 「ええ…だから聞いてみたのです。」

2018-02-27 22:27:31
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扶桑は答えを待つようにジッと最上を見つめる、最上は照れ臭そうに彼女の視線から目を逸らした。 「…そりゃあ艦娘になって、まあ痛い思いや怖い思いはしましたよ、一度や二度じゃあないし、嫌な夢も見た」 「まあ…」 扶桑は小さな声を同情的に漏らす。

2018-02-27 22:28:40
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だが最上はそれを笑い飛ばすように、彼女の赤い目を見て言った 「…でも痛みや恐怖があるなんて、何処行っても同じじゃないですか?生きてるんだし、艦娘に限った事じゃない、そう思いますよ。」 「なんと…」 どこか乱暴な理屈が叩きつけられ、扶桑は思わず目を瞬かせる。

2018-02-27 22:29:33
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そこへ最上は言う 「ボクはね扶桑さん…今が大好きだし、明日が楽しみで仕方ない、後悔なんてこれっぽっちも考えた事ありませんよ」 彼女はそう言うと仰向けにごろんと寝転ぶ、空はやっぱり青いし広い。 そんな彼女に、扶桑も青空を見上げて言った 「強いのですね…貴女は…」

2018-02-27 22:30:32
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その言葉には何処か黄昏のようなものがあった、最上はそれを感じ取ったか、目を閉じて言った 「…もし扶桑さんがそういう事を考えて悩んでるなら…ボクが明日に連れて来ますよ。明日の朝日を一緒に見て、それから考えましょう…」 彼女は激励するようにそう言った、根拠は無いが、優しいものだった。

2018-02-27 22:31:29
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扶桑は穏やかに微笑む 「ふふっ、そういう訳ではありませんよ。…でも、ありがとう。」 「あはは…どういたしまして…」 最上が寝転んだまま答えたところで、会話は途切れた。 ぽかぽかとした陽気が辺りを包む、ふとすると最上はスゥスゥと寝息を立て始めていた。

2018-02-27 22:32:29
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「まあ…ふふっ」 それに気付いた扶桑は柔らかに笑い、同じように彼女の隣に寝転んだ。 やがて吹いていた風が止み、凪が静けさを連れてやって来た。 「良いですね…これも…」 海鳥の鳴き声を聞きながら扶桑は空を見上げる、真っ赤な目に青い空が映った。 自由な航海は続く。

2018-02-27 22:33:30
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第36話 「悪の天才科学者ハイドロ博士」 おしまい

2018-02-27 22:34:31
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【ヒューガリアンの甲板】 とても広々としておりサッカーくらいなら問題なく出来る、この下にはヒューガリアンの主武装が格納されており、ここがパカっと開いてヒューガリアンは攻撃能力を得るのだ。

2018-02-27 22:36:48
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【ハイドロ博士】 悪そうな老人、自称悪の天才科学者。 悪の組織ハイドロ団を率いて日向達をつけ狙う。 【ハイドロ団】 日向達を狙い始めたハイドロ博士率いる悪の組織、その全容は不明だが、取り敢えず悪い奴らのようだ。

2018-02-27 22:38:37
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【モッスル・バーガー】 ハイドロ博士の刺客、生まれてから一度も笑ったことがなく、人を恐怖させることで相対的に笑おうとする狂気のピエロ、なんと怖がらせるためだけに右手と左手を逆にした。 しかしそれらは日向達に何一つ効果がなく、敵とも思われなかった彼はただのピエロとして立ち去った。 pic.twitter.com/kfOqrXUBvh

2018-02-27 22:39:41
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