日向倶楽部世界旅行編第36話「悪の天才科学者ハイドロ博士」

ブルネイ泊地を発った日向達は、次なる目的地を目指し航海を再開する。 だがそんな彼らを秘かに狙う者たちがいた、その名を、悪の秘密組織ハイドロ団!
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三隈グループ @Mikuma_company

最上は笑って答える 「ああ、船の上でお弁当っていうと、つい作戦のときの癖が出ちゃって」 「こうやって手当たり次第食べながら話してたな、こいつ食べ終わってから嫌いな物に文句言うんだ。」 「確かに、サラダ完食してから生野菜が嫌いだって!」 日向や初霜も懐かしむように笑う

2018-02-27 21:51:49
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そんな三人に扶桑も笑顔になる。 「ふふっ、本当に仲が良いのですね、三人共」 「ははは、まあ時間が時間だけに家族のようなものだ、そうなるな。」 「トラックじゃ同じ家で一つの食卓でしたもんね、ここも同じですけど。」 とまあそんな事を話し、四人は弁当を食べ終えた。

2018-02-27 21:52:49
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ふとその時、扶桑のそばに置いてあったタブレット端末が音を上げた。 「あら、なんでしょう…」 ぎこちない手つきで扶桑は端末を操作する、この端末は自動航行機能実装後、航海の安全を心配した彼女の要望で作られた、いわばヒューガリアンのリモコンである。

2018-02-27 21:53:44
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「前方に船のようですね…ええっと、カメラはこれかしら」 ピッと押すと端末にカメラ映像が映される、すると小さな小さなボートが、ヒューガリアンの正面でオレンジ色の煙を焚いていた。 「日向さん、あれ遭難してんじゃないですか?」 「引き揚げた方が良さそうだな、行くぞ最上」

2018-02-27 21:54:34
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日向と最上は手早く出撃し、未だ煙を上げ続ける小船の元へ向かった。 「え?ぴ、ピエロ…?生きてますか?」 最上が船の中に訊ねると、船の中から力ない男の声 「あっ、はい…」 「おお良かった、今なんとかしますね」 彼女は中にいたピエロのような男に手を貸し、船の外へ連れ出す。

2018-02-27 21:55:29
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「他に人は?」 「ぼくだけです」 「そうですか、もう安心ですよボクらの船は大きいので」 そんなこんなで二人は遭難していたピエロのような男を救助し、彼の荷物とともにピクニックしていた甲板へと連れて来た。

2018-02-27 21:56:29
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そして落ち着くと、ピエロ男は礼儀正しくお辞儀をした。 「助けていただいてありがとうございます、ぼくはピンの水上旅芸人なのですが、船が故障してしまって困っていたのです。」 「なるほど…大変でしたね」 最上達は同情的な態度を示す、あんな小さい船で旅する方が悪い部分もあるのだが。

2018-02-27 21:57:29
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そのピエロ男は荷物から色々取り出して言った 「お礼と言ってはなんですが、ぼくはピエロです、芸をお見せ致しましょう。」 「ほほう」 そんなこんなでピエロによるプチショーが始まった。 「まずは軽くジャグリングを…」 彼はそう言ってボールをほいほいと投げ始める。

2018-02-27 21:58:32
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二個、五個、十個…ボールはどんどん多くなる、そうやってるうち、やがて絶え間無くボールが飛ぶようになった頃の事だった。 「行きますよ…それっ!」 ピエロはボールの一つを最上達の元へ向けて投げた! が! それはボールではない、なんと…ナイフ! 鋭いナイフは、日向の元へすっ飛ぶ!

2018-02-27 21:59:41
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それを日向は何気なくキャッチした 「おお、いつの間にナイフに…すごい手さばきだな」 飛んで来たナイフを見て驚き、感心する日向、だが本当に驚いたのはピエロの方だった。 (こ、この女、ナイフ投げられてなんで平然としてるんだ!?普通少しはビビったりするだろ!?)

2018-02-27 22:00:37
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ナイフを見てすごいねーと笑っている四人にピエロは思わず動揺し、ジャグリングをやめる。 「…では、次は、手品を…」 「おお、何するんだ?」 「オーソドックスなカードマジックをお見せします。」 そう言って彼はトランプを用意しシャッフル、その束を初霜の前に差し出した。

2018-02-27 22:01:32
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「好きなカードを一枚選んで下さい。」 「当ててくれるのね!うーん、じゃあこれ!」 初霜は差し出されたトランプから一枚を抜き取り、日向達にも見せ、彼に渡した。 トランプはシャッフルされ、初霜の選んだカードはどこかへと混ざって行く。 「では当てて差し上げましょう…」

2018-02-27 22:02:20
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ピエロは束の中を見て初霜が選んだカードをトリックに従って探す。 が (あ!?) ピエロは思わず眉をひそめた、なんと束の中に、入れていないはずのジョーカーのカードが挟まっているのだ! (ど、どういうことだ、何故ジョーカーが!?) 顔には出さないが慌てるピエロ、そんな彼に初霜は言った。

2018-02-27 22:03:19
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「貴方の探してるカードは…これかしら?」 「なっ」 なんということか!悪戯っぽく笑う彼女の手には、彼女が選んだであろうハートの2のカードがあるのだ!ピエロは目を見開いて息を呑む! (い、いつの間にすり替えた!?誰よりも手品に集中していたぼくの目を盗んで、いつの間に!?)

2018-02-27 22:04:10
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そんな彼をよそに初霜達ははしゃぐ 「初霜、すり替えたのか?」 「ついやっちゃった❤︎」 「ダメだよ困らせるような事しちゃ…」 最上は初霜を窘めつつカードを返す、そんなやりとりを日向は謝罪する 「すまないなキミ、勘弁してやってくれ」 「え、ええ…大丈夫ですよ。」 大丈夫ではない。

2018-02-27 22:04:59
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そんなこんなでもう後は適当に芸を披露し、いよいよクライマックス 「では皆さんご注目…」 彼はタブレット端末を取り出し、モニターを日向達に向けた。 「ん?サイバー芸か?」 日向達がワクワクしていると、画面に仰々しいステージが映し出された、右上にはLIVEと書かれた文字もある。

2018-02-27 22:05:52
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するとそのステージに、一人の老人の様な影が現れた…が 「…音が聞こえないな」 日向がそう言うと、ピエロは慌ててタブレットに話しかける、すると音が鳴った。 「マイクがミュートになっとったわ…あ、あ、聞こえるか?」 「おお、聞こえる聞こえる」 日向達は聞こえてきた老人の声に答える。

2018-02-27 22:06:39
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それを聞いたのか老人は話し出した 「よーしよし…コホン、ごきげんよう日向倶楽部…そしてヒューガリアン!わしの名はハイドロ博士、悪の天才科学者だ。」 「私達のこと話してるわ!デジタル腹話術かしら?」 「ちがーう!そんな物ではない!」 声を荒げハイドロ博士はキレる、そして続ける

2018-02-27 22:07:31
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「わしは悪の天才科学者…お前達に宣戦布告しようというわけだ。」 「まあ…すごい…不思議なショーですね」 興味深そうというか楽しそうな扶桑、それをハイドロ博士は大きく肯定する 「その通り!我ら悪の組織ハイドロ団による最高のショーじゃ!」 「おお、気になるな」 日向もノリノリで頷く

2018-02-27 22:08:19
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さて、読者の皆さんはもうお分かりだろうが、両者の間には認識のズレがある、しかも不幸にも会話が成り立ってしまった為、お互いそれに気が付いていない。 悲劇的な状況の中、ハイドロ博士は話す 「クカカ…これから君達には刺客を送り込ませてもらう、いずれも悪の精鋭達だ。」 「ほう」

2018-02-27 22:09:13
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博士は拳を突き上げて言った 「そして今そこにいるピエロ、モッスル・バーガーがその一番手を務める!そいつは生まれて一度も笑った事がない上に右手と左手が逆、その技術で数え切れぬ子供を泣かせて来たという狂気のピエロだ!彼の悪パワーをたっぷり楽しむが良い!クカカカカカ…!」

2018-02-27 22:10:06
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映像は彼の大きな笑い声と共に終わった、するとピエロ…モッスル・バーガーは長いステッキを振り回し、構えた。 「そういうわけだ…遭難していたところを助けてもらった事には感謝しているが、恐怖に慄いてもらうぞ!」 「なるほど…これがショーか!」 日向、それは勘違いだ!

2018-02-27 22:11:09
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「ぼくは笑わないが人が恐怖で相対的に笑うのだ、だから泣け!」 盛大な勘違いが行われている中、モッスルはステッキを振り回しつつ最上に向かって飛びかかった! 「でりゃァァァッ!」 「ボクか!」 最上が驚いてる間にも距離は縮まる、モッスルには敵意がある!彼のステッキは最上を打つのだ!

2018-02-27 22:12:02
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だが! 「い、良いのかな!?」 最上は飛びかかってきたモッスルをいなし、柔術の要領で地面に投げ飛ばした! 「なっ…ぐえっ」 モッスルの身体が床に激突!一度も笑った事のない彼の顔が苦悶に歪む! その様子に最上は慌てる 「ああごめん!本気で投げるつもりじゃなかったんだ」

2018-02-27 22:12:54
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そう言って駆け寄り彼女は声をかける 「大丈夫?骨とか平気?」 「だ、大丈夫だ…うっ」 背中に激痛走るモッスルは、心配そうな様子の彼女の手を退け、よろよろと立ち上がる。 「…もう一度だ!」 そして再度!ステッキを振り回して最上に飛びかかった!

2018-02-27 22:13:59