キャラクター論です

大学院生を相手にキャラクター論を語ったものの質疑応答で混乱が生じた。どうして?それをしつこく考え中。
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uroak_miku @Uroak_Miku

25)この本です。お気に入りなのでこれまで何度も取り上げてきました。で、日本におけるキャラクタービジネスの進化も、アインの光量子説と同じように、誤った理論(この場合は「理解」というべきか)を出発点にしながら最終的にはアメリカでの法理論と同じ地平に至った。 amazon.co.jp/dp/4106036223

2018-03-06 01:12:53
uroak_miku @Uroak_Miku

26)科学史の本は大好きです。現代の目で眺めると妄想としか思えない理論も、当時の最高の知性たちにとっては数学的にも裏打ちされた疑うべくもない「真理」だった。ガリレオが裁判にかけられてどうこうという俗流の科学史観ではわからない、科学哲学のパラダイムシフト。これがたまらなく面白い。

2018-03-06 01:18:14
uroak_miku @Uroak_Miku

27)これが面白く感じられるようなら、現代の目で過去を語ることがどんなに危険にもなるのか、自制心が芽生えてくる。

2018-03-06 01:20:23
uroak_miku @Uroak_Miku

28)「必要もないのにどうしてセイカは東映に契約書を迫ったのですか」「それはねセイカがキャラクターの独占使用をもくろんだからだと思うよ」式の、誤った理解と納得に陥ってしまう。夏目教授も彼の生徒さんたち(主に院生)も、この陥穽にはまってしまった。

2018-03-06 01:22:56
uroak_miku @Uroak_Miku

29)悔しいけれどゲスト講師として「アニメと商品化権」のお題で講義した当時の私は、この陥穽から教授たちを引っ張りあげる力も道具もそろえていなかった。

2018-03-06 01:24:31
uroak_miku @Uroak_Miku

30)あのときの講義で質問されなかったけれどもし質問されていたらまた陥穽していたと思われる質問があります。「ディズニー契約書が研究されるよりもずっと前から日本では人気まんがキャラをあしらったおもちゃはあって、作者であるまんが家と業者が契約を交わしていた先例が複数あります[続く]

2018-03-06 01:27:51
uroak_miku @Uroak_Miku

31)[続き]人気のある野球選手のめんこが売られていて、所属球団と契約を交わしたうえで売り出されていたという記録もあります。つまりディズニー契約書が研究される前からもう日本にはキャラクタービジネスは立派にまわっていたわけです。くみ先生の先の話と矛盾しませんか」

2018-03-06 01:29:56
uroak_miku @Uroak_Miku

32)鉄腕アトムのブリキ人形が、作者の手塚治虫との契約のもと発売されていたのは事実です。鉄人28号のもありました。ちなみにアニメ化で人気大爆発するより何年も前のことで、ディズニー契約書が日本で研究されるよりも前のことです。しかし…

2018-03-06 01:31:38
uroak_miku @Uroak_Miku

33)これは法理論でそうしていたのではありません。ブリキ人形を大量生産するには金型がいります。これをこしらえるにはかなりの金がかかります。もしよその業者で自社と同じアトムのブリキ人形が売り出されたりしたら、商品の売上が頭打ちになって金型の制作費をうちが回収できなくなるじゃないか!

2018-03-06 01:34:27
uroak_miku @Uroak_Miku

34)私がブリキ人形のメーカーでもそう考える。そこで「手塚先生、契約金を用意するから、その代わりによそのメーカーからアトムくんのブリキ人形を作らせろと申し出があっても蹴ってくださいな。うちだけにアトムのブリキ人形を作らせてあげると書類を交わしてください」と持ちかけた。

2018-03-06 01:37:01
uroak_miku @Uroak_Miku

35)現代の私たちがこの話を眺めると「ああ著作権法ね」と思い込んでしまうのですが、それ正しくない。法律のことなんで手塚もメーカーもろくに知らなかった。おそらくおもちゃ業界のなかで経験的に形になっていった慣習だった。いいですか慣習です。

2018-03-06 01:41:10
uroak_miku @Uroak_Miku

36)公園の砂場で幼児どうしが「ここからはあたしの領土やからあんた入ったらあかんよって」と取り決めて、それなりに秩序ができてしまう、ああいう感じ。

2018-03-06 01:42:39
uroak_miku @Uroak_Miku

37)人気野球選手のめんこの類もそう。めんこは金型なんていらないし制作費はもっと安く済むから、おそらく「うちだけに作らせてください」な契約(もどき)は交わしていなかった。事実、讀賣ジャイアンツは頭金だけ受け取って後はシランでした。

2018-03-06 01:45:22
uroak_miku @Uroak_Miku

38)人気野球選手の顔写真をめんこの入れ物に印刷するとよく売れたという。しかし顔写真のネガは球団が管理しているわけだから「使わせてくださいネガ使用料は払うから」「うんええよ」くらいの感覚だったと思われます。

2018-03-06 01:47:36
uroak_miku @Uroak_Miku

39)戦前に、人気まんが『のらくろ』の主人公をあしらった商品がたくさん作られた。各業者が講談社に挨拶して前金を払うと後は作り放題という仕組みでした。講談社は当時、ディズニーと取引していて、ディズニーキャラを使って絵本やまんが雑誌を(国産で)作っていました。

2018-03-06 01:51:16
uroak_miku @Uroak_Miku

40)ということはこの写真を当時の講談社が目にしていてもおかしくないわけです。 pic.twitter.com/VNiPHb4VNi

2018-03-06 01:52:31
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42)つまり戦前にもディズニーの方法論が(不正確な理解ではあったけれど)日本にも入っていたわけです。

2018-03-06 01:58:23
uroak_miku @Uroak_Miku

43)戦後に改めて入ってきた。誤った理解とともに国産のキャラクタービジネス(もどき)が回りだした。 pic.twitter.com/0ixbAoUhN3

2018-03-06 02:00:24
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uroak_miku @Uroak_Miku

44)しかし国産キャラクターがアニメ番組を媒体にして太平洋を渡り、アメリカで食い物にされてしまった。

2018-03-06 02:01:44
uroak_miku @Uroak_Miku

45)この反省から、「もどき」ではなくアメリカでの法理論の水準に達するようなキャラクタービジネスが日本でも志向された。

2018-03-06 02:03:12
uroak_miku @Uroak_Miku

46)いくつもの裁判を経て、判例が揃っていった。「無断で使ったらあかんよ、どうしてかというとね」と法理論が確立していった。

2018-03-06 02:04:46
uroak_miku @Uroak_Miku

47)現代の私たちは物心つくころからキャラクター商品に囲まれて育っているので「無断で商売したらあかんよ」とおとなたちに諭されれば、ああそういうものなのかと学んでしまう。

2018-03-06 02:07:09
uroak_miku @Uroak_Miku

48)そして往年の、それこそセイカと東映のやり取りみたいな話を聞き知ると「変なの」と思ってしまう。日本の子どもがUSAに旅行につれていってもらって「パパ、日本じゃないのにマクドナルドがあるよ変なの!」と不思議がるのと同じ奇態なのですこれ。

2018-03-06 02:10:06
uroak_miku @Uroak_Miku

49)キャラクタービジネスはアメリカの発明品です。科学の真理は発見するものだけど法理論は発明するものです。だからキャラクタービジネスの法理論も、アメリカで「発明」されたものでしかない。そして日本は後追いでこの発明を「発見」したわけです。

2018-03-06 02:13:27