ノイヴィートでの調査 2018年春休み

2018年2月末から3月初めに行っているノイヴィートでの調査に関するツイートをまとめました。 ノイヴィートは1653年に作られた都市で、18世紀には改革派、ルター派、カトリック、メノー派、ユダヤ人、霊感派、ヘルンフート兄弟団という7つの宗教集団が共存していました。今回ノイヴィートで、近世の宗派間の関係、宗教的寛容について調査しています。
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Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ノイヴィートの市立図書館にあった18世紀後半のフリーメーソンに関する研究。Arwid Liersch, Die Freimaurerei in Neuwied in der zweiten Hälfte des achtzehnten Jahrhunderts: ein Beitrag zur freimaurerischen Geschichte des Rheinlands, 1900 books.google.de/books/about/Di…

2018-03-07 01:35:33
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

先週からドイツに調査に来ているので、このところノイヴィートのことはかりツイートしていますが、今回の調査のことを紹介してみます。 pic.twitter.com/TrQzOiKOqv

2018-03-07 02:20:30
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Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

今回の調査の目的は、近世ノイヴィートに関する史資料の閲覧・入手です。ドイツ西部ライン川沿いの都市ノイヴィートは人口6万5千人の都市ですが、はじめて都市名を聞いたという人も多いかと思います。

2018-03-07 02:22:17
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

では、何故私が調査に来たのかというと、17~18世紀に異なった宗派に属する住民の共生や争いについて知りたいからです。1653年に作られた新造都市ノイヴィートで支配的な教会は改革派でしたが、建造間もない時期からルター派やカトリック、ユダヤ人や再洗礼派の一派メノー派も居住していました。

2018-03-07 02:26:31
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

18世紀半ばにはさらに霊感派とヘルンフート兄弟団も市内に移住してきたので、市内には7つの宗教集団が併存することになりました。そのため、近世において、異なった信仰をもつ人々たちがどのように関係を結んでいたのかを知るには格好の対象だと思い、関心を持ちました。

2018-03-07 02:27:50
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

しかし、単に興味を持つだけでなく、本格的に調査し始めたのには、いくつかの理由があります。一番大きな理由は、共編著『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』をはじめとした自分の原稿で書きながら色々と気になることがあったためです。

2018-03-07 02:32:44
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

元々私がノイヴィートのことを知ったのは、新教出版社の雑誌『福音と世界』で行った連載「旅する教会」のために、現代までの再洗礼派の歴史を調べたことがきっかけでした。その時近世にメノー派が住んでいた都市について少し調べたのですが、その中にノイヴィートも含まれていました。

2018-03-07 02:35:55
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

結局紙幅の問題で連載では扱えませんでしたが、2017年に単行本化した『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』では、ノイヴィートを含めメノー派が住んでいた神聖ローマ帝国の多宗派併存都市を紹介することができました。

2018-03-07 02:37:30
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ただし、調査や執筆の時間も限られ、本が扱う範囲も広かったので、十分な調査ができず残念に思っていました。帝国の都市の宗派状況については少ししか触れられなかったし、もっと掘り下げてきちんと調べたいと思っていました。

2018-03-07 02:40:11
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

帝国の多宗派併存都市を調べたいという思いは、その後『福音と世界』2017年3月号で、やはり18世紀までの再洗礼派を取り巻く状況を描いた「曖昧になる「正統」と「異端」の境界」という原稿を書いたことで、より大きくなりました。

2018-03-07 02:44:10
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

さらに、17~18世紀の宗派状況を含めた「長期の宗教改革」研究を把握することは、これから自分が宗教改革研究者として研究を続けていくためにも、必要不可欠だと思ったことも理由として挙げられます。

2018-03-07 02:45:31
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

『UP』での連載「広がる宗教改革」第二回で鍵和田賢さんが宗教改革研究の対象が、近年18世紀あるいはその後の時代にまで広がっていることを紹介していましたが、この「長期の宗教改革」は、現在急激に研究が進んでいる分野で、私も何とか食らいつかねばと思っています。

2018-03-07 02:47:10
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

また、大学の教員としても、17~18世紀をもっと本格的に調べたいと思っていました。私は大学でキリスト教の通史を教えているのですが、やはり近世から近代にかけて、宗教的寛容がいかに進み、政教分離が実現したかを、近年の研究成果を取り入れながら授業できるようになる必要を感じています。

2018-03-07 02:49:05
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

しかし、研究・教育上の関心だけでなく、現代の世界が抱える問題に近世と共通する部分があると感じたこともこのテーマに着手した大きな理由だったかもしれません。

2018-03-07 02:51:32
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

私は『Ministry』2017年5月号の「異質な人々とどうやって生きていくのか?-宗教改革後のヨーロッパと現代」という原稿で、近世の西欧でも現代の世界でも異質な人々が混じりあう状況にうまく対応できていない点で共通しているのではないかと書きましたが、このような状況にもやもやし続けています。

2018-03-07 02:58:40
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ということで昨年からノイヴィートについて本格的に調査を始め、上廣倫理財団様の研究助成に採択していただいたため、今回ノイヴィートで現地調査を行っています。

2018-03-07 02:59:28
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

今回の調査では、特に宗派間の争いとその解決方法に注目しています。ノイヴィートは近世に宗教的寛容が実現した都市として扱われることが多いのですが、実際には様々な理由で宗派間の争いも行われていました。

2018-03-07 03:01:13
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

しかし、近世ノイヴィートの宗教的寛容を扱う研究自体少なく、争いをきちんと分析した研究はまだ出ていないので、試しにやってみようと思いました。ただ、調査を進めてきて、ノイヴィートに関する研究が少ない理由は何となく分かってきました。一番大きな理由は、おそらく史料へのアクセスです。

2018-03-07 03:02:48
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

近世ノイヴィートの重要史料はほとんどヴィート侯文書館 Fürstlich Wiedische Archiv にあります。現在利用には予約が必要、基本的に毎週水曜しか開いておらず複写もできません。利用できるだけで十分ありがたいですが、公立の文書館と比べ利用状況が厳しいのは確かです。 landeshauptarchiv.de/service/archiv…

2018-03-07 03:06:39
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

また、各宗教団体、牧師や司祭が持っている史料を使った研究もありますが、こちらは部外者にとって利用するハードルがより一層高いです。

2018-03-07 03:07:26
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

さらに、ノイヴィートに関する重要な史料は、史料集として刊行されておらず、様々な文献で断片的に活字になっているだけです。大半の史料は文書館で手書き文書を読むしかないので、調査を進めるのはかなり大変です。

2018-03-07 03:09:14
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ただし、ヴィート侯文書館の史料を主に利用してボン大学で博論を出した Roland Schlüter が著書 Calvinismus am Mittelrhein, 2010 の序文で述べているように、文書館の文書の大半はまだ利用されておらず、面白い研究をする余地が大きいのは魅力です。

2018-03-07 03:10:37
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ヴィート侯文書館の所蔵資料のカタログは、1911年に刊行されているので、だいたいの所蔵品は把握することができます。文書館には、手書きのカタログもあります。文書館員の方も、非常に親切で、いろいろと調査を助けてくれます。opac.regesta-imperii.de/lang_de/anzeig…

2018-03-07 03:11:42
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ちなみに私が、ボン大学の歴史科学研究所の図書館に行った目的の一つは、このヴィート侯文書館の所蔵品カタログを見ることです。fnzrlg.uni-bonn.de/bibliothek

2018-03-07 03:14:34
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ちなみに私の今回の調査で主に調べているのは、ヴィート伯の書記局長Christian Hiskias Heinrich Fischerが1777年に書いたノイヴィートの宗教状況に関する手書きの著作と、1751から53年にかけて起こった武器を持った市民行列をめぐる市当局と霊感派の争いに関する史料です。

2018-03-07 03:16:26