日向倶楽部世界旅行編第38話「航空戦艦日向の恋 その2」
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でも、それがなんだか楽しく思える。 「…うん、良いな。」 「ふふっ、気に入りました?」 背中から顔を覗かせる三隈に、日向は満足げに微笑む 「ああ…付き合ってくれてありがとう、助かったよ」 「どういたしまして、私も楽しかったですわ、色々。」 「色々?」 「うふふっ」
2018-03-13 21:28:52やがて日向はハンドバッグを持ち、ヒールを履いてドアを開けた 「じゃあ行って来るよ、最上達にはよろしく伝えておいてくれ」 「分かりました、グッドラック…ですわ」 「ハハハ、そうだな…うむ、行って来る。」 日向は深く頷き、待ち合わせの場所へ向かった。 〜〜
2018-03-13 21:29:54〜〜 香港島の西に浮かぶ島、ランタオ島。 香港島の二倍を誇る大きさの島であり、高級住宅街からテーマパークまで様々に詰まったリゾート地である。 そしてここはそこに建つ香港ディズニーランド、空が夕焼けに染まった頃、日向は一人、ベンチに座って彼を、楼利を待っていた。
2018-03-13 21:31:34そしてそれを、離れたところから隠れて見る者達もいた 「遅いわね…」 野球帽を目深に被り、双眼鏡を覗く少女が呟く、彼女は初霜である。 「初霜…やっぱやめない?帰ってゲームでもしよう?」 カンカン帽を被り伊達眼鏡をかけた女はそれを咎める、当然彼女は最上である。
2018-03-13 21:32:42初霜は双眼鏡を下げて言う 「嫌よ、こんな楽しそうな事放り出しておけないわ。最上さんだって気になるでしょ?」 「そりゃ気になるけど、これじゃあストーカーだよ…」 怪訝な顔で最上は諌める、彼女は身体の小さな初霜が日向の様子が見たがった為、その付き添いに来ていた。
2018-03-13 21:34:02「何言ってるのよ私達も日向さんを見守らなきゃ…あっ!来たわ!」 初霜は日向の方を指差す、ベンチに座る彼女の元に、一人のフォーマルな服装のハンサムな男が近付いて来た。 「仕事帰りではなさそうね…ちゃんとオシャレしてるわ」 「あの人何歳だろ」 二人はジッと二人の方を見つめる。
2018-03-13 21:35:04…と、そんな者達がいることなど露知らず、日向はハンサムな男…楼利の顔を見てはにかんだ 「や、やあ…」 「すいません…待ちました?」 「い、いやっ、私も今来たところなんだ、ちょっと座ってただけで…」 困り顔の楼利に彼女は小さな嘘をつく、本当は25分も前から待っていた。
2018-03-13 21:36:32だがその嘘に楼利は安堵する 「なら良かった…じゃあ、行きましょうか」 そして、日向の手を引いた 「あっ…」 突然の行為に、彼女は恥ずかしさから思わず手を引っこめる、それに気付き、楼利も申し訳なさそうに手を戻す。 「あっ…す、すいません、俺こんな…」 「い、いや良いんだ…」
2018-03-13 21:37:32恥ずかしがりながら、日向は頬を赤くしてそう言うと 「そ、その…あの……んっ…」 もじもじとしながら、いつもよりしおらしい右手を彼に差し出した。 「えっ…?」 「い、イヤか?」 「いえそんな…はははっ…」 楼利は戸惑いながらも、笑顔でその手を握った。
2018-03-13 21:39:33「じゃあ、今度こそ行きましょうか。」 「う、うん…行こう…」 二人は園内に向け、手を繋いで歩き出した。 「ちょっと何あれ何あれ!日向さんが男の人と手ぇ繋いでったわ!」 「う、うん、もう良いんじゃイテテ…」 「追うわよ最上さん!大追跡よ!」 初霜は最上の手を引っ張って走った。 〜〜
2018-03-13 21:40:33〜〜 園内デート 「パレードまで時間ありますね、何か乗りますか?」 「あ、ああ、でも待ち時間平気かな」 「大丈夫ですよ、ここって日本に比べると結構空いてるんで。…日向さん、ジェットコースターみたいなのって乗れますか?」 「多分平気だ」 多分どころか、絶対平気である。
2018-03-13 21:41:35さてここはビッグ・グリズリー・マウンテン・ラナウェイ・マイン・カー、呪文の様だが、アトラクションの名前である。 「何名様ですか?」 「二人です」 「ではこちらへどうぞ〜」 一番前の特等席、二人は降りてきた棒を掴む。 「楽しみですね」 「うん…」 日向は目を合わせずに答える。
2018-03-13 21:42:34「何名様ですか?」 「えっと、二人です」 そして、彼等と同じカーゴの最後尾に最上と初霜も座る。 「ビッグサンダーマウンテンじゃないのね」 「初霜は東京の行った事あるの?」 「ええ、年間パスポート持ってたわ」 「へぇ、良いなぁ」 そんなこんなでアトラクションが始まった。
2018-03-13 21:43:34アトラクションは早くなったり遅くなったり回ったり爆発したりしつつ、終わった。 「ふぅ、面白かったですね」 「あ、ああ…火薬とかその、凄かったな…うん」 「ですね、次はあっち行きましょう、もっと速いやつですよ!」 二人は次なるアトラクションへ向かう。
2018-03-13 21:45:02最上達もその後を追う 「ねえ最上さん、昔はもっと怖かった気がしない?」 「そりゃボクら艦娘初めて4、5年だし、もう速い遅いで怖がるの無理だと思うよ。」 「確かに…やっぱ飛行機が落ちるくらいじゃなきゃダメかしら?」 「う、うん…?」 最上には、初霜の言動が以前より激しく思えた。
2018-03-13 21:46:11そんなこんなでアトラクション、続いてハイパー・スペース・マウンテン、スペース・マウンテンのリメイクバージョンと言ったところで、こちらは反乱軍と帝国軍の戦闘宙域を突っ走るものとなっている。 速かったり暗かったりして、終わった。 「どうでした?」 「あ、ああ…楽しかった…」
2018-03-13 21:47:39言葉とは裏腹に日向のリアクションはイマイチなもの、楼利は少し考え、言った。 「そうだ、香港ディズニーランドにしかないアトラクションがあるんです、そこ行きましょう!綺麗ですよ!」 「わ、分かった、行こう。」 二人は手を繋ぎ、また別の場所へと向かった。
2018-03-13 21:48:32最上達も同じく降りて来た 「あのさ、初霜って艦娘になる前はジェットコースターとかどうだった?」 「うーん、あまり乗らなかったわ」 「艦娘になってから耐性ついた感じなの?」 「だと思うわ、小さい頃はゆっくり動くのが好きだったの、今と反対よ。」 初霜の変化…
2018-03-13 21:49:34次のはミスティック・マナー、香港ディズニーランドにしかない独自のアトラクションである、中身は趣の違うホーンデッドマンション。 「綺麗だな…」 ディズニー特有の精巧な人形や仕掛けに二人は感嘆した、したのだが、日向の方はどこかよそよそしく、心ここに在らずといった様子だった。
2018-03-13 21:50:35「…どうでした?」 アトラクションを出て楼利は訊ねる、彼も日向のおかしな様子には気が付いていた。 「う、うん、楽しかったよ…」 日向は気まずそうに答える、よそよそしい態度は言葉を出まかせのように響かせた。 そんな彼女を心配する様に楼利は言った。
2018-03-13 21:51:45「どこか悪いところとか…大丈夫ですか?」 「い、いや…大丈夫…」 自分の様子と態度を見透かされ、日向は俯く、そしてしばらく押し黙った後、か細い声を上げた。 「…ごめん」 「え?」 「楽しい、楽しいはずなんだ。だけどっ、なんだかうまく、できない…」
2018-03-13 21:52:52日向は手を強く握る、両手に掴まれたカバンの持ち手が悲鳴をあげた。 すると、楼利が静かに口を開いた 「…大丈夫だよ」 「えっ…?」 「大丈夫、ちょっと慣れてないだけですよ、きっと楽しくなります」 彼の言葉にはなんの解決策も示されていなかったが、日向は少し心が安らいだ。
2018-03-13 21:53:58「…ありがとう」 普段のような強さは完全に失せ、彼女はすっかりか弱い小動物のようになっていた。 「じゃあパレードの前に夕食にしましょう、美味しいところを予約してありますから。」 「う、うん…行こ…」 日向は子供のように楼利の手を握り、彼と共に歩き始めた。 〜〜
2018-03-13 21:55:02〜〜 さて、恋に弱体化した日向を追い続けていた最上達だが、二人がレストランに入ったところで追跡を中断せざるを得なかった。 「完全予約制じゃ入りようがないね…」 「窓から覗けないかしら…無理そうね…」 やれやれと途方に暮れ、二人は近くのベンチでポップコーンをぼりぼり食べる。
2018-03-13 21:56:36そして二人は、恋に振り回される日向の姿を思い出す。 「でも日向さんもあんな感じになるんだなぁ…」 「意外よね…。最上さんも初めてはそうだったの?」 初霜の問いに、最上は笑って答える 「ボク?ボクは…うん、まあね。」 彼女は白いキャラメルポップコーンを口に放る
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