Ａ１ピクチャーズで自殺者が出たほんとうの理由

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５１）しかし理念と心身が次第にかけ離れていく。そういうときにうつ病が発症する。

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５２）安全装置が働くわけです。これは病（やまい）だよ、怠けているわけではないよ、と。葛藤を和らげる心理メカニズム。

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５３）いずれにせよ最前線で戦い続けることはできないわけで、それで退社した。これが挫折感を増幅させた。「正社員」を自ら降りてしまったのだから、挫折感はさらに大きくなった。ほかにもいろいろな葛藤が生じた。

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５４）これはもう文学の領域ですのでこれ以上私ごときがあれこれ語るのは止めておきます。とにかく「正社員」という破格の扱いだったからこその自決だった。

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５５）一方で「契約社員」としてド素人参加した同僚さんは「正社員」ではなかったからこそ、こういう葛藤を抱えずに済んだのではないか。

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５６）おそらく一年契約だったと思います。つまり、どんなにしんどくても一年耐えれば終わりだ、その後はまた違う場所を探せばいい…そういう心の割り切りができる。できるからこそ酷使にも耐えられた。

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５７）生き残ったほうの男性は、Ａ１以外では制作進行の仕事はされていないようです。「契約社員」として毎年契約更新を続け、やがて制作デスクに成り上がって、そしてＰ（ここまでくればおそらく「正社員」待遇）になったものと思われます。

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５８）「契約社員」から「業務委託」に切り替わる（つまり「社員」でなくなる）ケースは、Ａ１ではないのかな。ここはよくわからない。しかし私個人はそういうことはＡ１ではなされていない気がします。

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５９）Ａ１は毎年、新卒の制作進行希望者を募集しています。「契約社員」扱いです。一方で中途採用での制作進行もよく募集していて、こっちは「業務委託」扱いです。「経験者優遇」とあるので、他社でやってきた制作進行を欲しがっているとわかる

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６０）ここからこんな推理ができます。Ａ１の制作進行さんの主力は、中途採用（業務委託）による連中で、新卒採用（契約社員）組はその補佐役ではないかな、と。

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６１）考えてみてください、新卒者にいきなり制作進行という過酷かつ経験と人脈とノウハウが問われる仕事を任せたりしたら、制作ラインがめちゃくちゃになってしまうはずです。どんなＰでも新卒者ではなく経験者のほうを欲しいに決まってる。

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６２）昔の戦争まんがに、中東の空軍基地が舞台のものがありました。ずっと内戦していて、産油国だからお金はあるのだけど人材が足りない。とりわけ腕のいい戦闘機パイロットが足りない。そこで世界中から腕利きを大金で集めてきて戦わせる。いわゆる「傭兵」。正規軍パイロットを数段上回る凄腕達。

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６３）cmoa.jp/bib/speedreade…

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６４）傭兵チームこそが主力で、正規空軍はむしろサポート役。「正規軍パイロットはへぼぞろいで当てにならん。諸君の腕に期待する！」というわけです。

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６５）新卒採用組をＡ１の経営者側（Ｐ含む）は鼻から主戦力とは思っていない。傭兵チームは入れ替わりが激しいから、つなぎやサポート役の兵力として新卒組を戦場にまわすわけです。

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６６）役立たずだけどいちおう社員だから臨機応変に配置換えができる。それで「契約社員」として雇い入れる。（おそらく）１年限定での社員。兵士としては期待されていなくて、喩えるならば兵站（補給ラインですね）として使える、ゆえに１年限定で「雇用」される。

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６７）傭兵部隊の長、サキ・ヴァシュタール司令もびっくりの兵術でございます。 pic.twitter.com/gf5tRVrd29

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６８）この正規軍の兵士たち、実際には１年もたずに去っていきます。社員が会社に来なくなったら一大事のはずですがＡ１は「去る者は追わず」で何もしないそうです。新卒採用でその後円満退社した方によるとそういう会社だそうです。

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６９）制作進行として新卒者を毎年雇い入れてはいるけれど、最前線で通用する兵力としては期待していないようです。脱落者が出ることを織り込み済みで毎年何人も雇い入れている。

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７０）そうそう「ひとを育てることにあまり熱心ではないスタジオ」と語る、新卒採用組（後に円満退社）の方もいました。おそらくそうだと思います。傭兵で回っているのだから社内で制作進行を育てることにあまり力を注いでいない。

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７１）ちなみにほかのスタジオでは新卒採用でも「業務委託」というケースが多いようです。たとえばサンライズはそうですね。

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７２）その代わり新人育成には力を入れているはずです。雇用されていないから身分は不安定だけど、代わりに面倒見はいい…そういうスタジオではないかなサンライズ。

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７３）Ａ１は自社で制作進行さんの新人育成をすることにはあまり熱心ではない、ようです。ここはスタジオの個性の違いというか、設立のいきさつからそういう体質のスタジオに育っていったのだと思います。

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７４）「３Ｋにはしないぞ！」という親会社アニプレックスの理想が、新卒の制作進行希望者を「業務委託」ではなく「契約社員」としてきちんと雇うという方針を生み、しかし現実には傭兵で回っているという皮肉な構図を生み出していった。

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７５）「３Ｋにはしないぞ！」が「きちんと雇用してやるぞ！」と読み替えられ、これがやがて「雇用してやってるのに辞めていく奴が多くてかなわん！」にすり替わって、結局ブラック企業の典型になっていった…こんなところではないかなーと思うのです。