不知火に落ち度はない５６（浜風）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして浜風は言われたとおりに円軌道を描き出す。 ただ、減速と加速のバランスがまだ取れていないらしい。 「回るときにだいぶ速度落ちてるな」 「浜風、もーちょい早く回ってくれ。普段より遅いぞ」 『はいはいはーい！』 怒鳴らないでおくんなし。耳が痛い。 #不知火に落ち度はない

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「今度はどう？」 「今のはいい。磯風よりは遅いが、綺麗な回り方してんだ」 「浜風の才能ってやつだな。あいつスケート上手いんだよ」 「フィギュアスケートでもやらせるとか言うなよ」 ないない。向いてるとは思うがね。 #不知火に落ち度はない

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「その調子でもっと回ってみてくれ。なるたけ速度出して」 『結構怖いんですけど……』 「それが夕雲型の世界だからな。楽しんでくれ」 『そんな余裕ありませんって！ もう！』 口ではそう言うが、始めたばかりよりはいい感じになっている。 #不知火に落ち度はない

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「夕雲の仮想データと比較してどうだい、おやっさん」 「あれよりは速度が落ちる──が、コンパクトに回るもんだな。うまいことつかめたら大幅に戦力は上がる」 「あと１０周くらい回ったら的出す？」 「そっちがメインだからな。やらせんわけがなかろうが」 そりゃ当然。 #不知火に落ち度はない

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「あにやってんのよ、司令」 「よう陽炎。新型艤装テスト」 「えー。私の分はどこよー」 「お前乗る？ アレだけどさ」 どっこいしょ、とどこからともなく現れた陽炎は隣に腰を下ろす。 「あれ、かなり速くない？」 「速ぇぞ。最終的には夕雲型と同レベルまで速度上がる」 #不知火に落ち度はない

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「んー。でも私と浜風の艤装って仕様そもそも違わない？ コネクタ全然違うし」 お、鋭いな陽炎。大正解だぞそれ。 「後期陽炎型と、前期陽炎型じゃ確かに違うんだよなー」 「つまり改造できないってことでしょ」 「ピンポーン」 「むか。ヒゲ抜くわよ」 おやめくだされ。 #不知火に落ち度はない

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「ぶちぶち、ぶちぶち」 「その不吉なサウンドで煽るなっつの。前あったろ、お前が夕雲に喧嘩売ったアレ」 「あれから私が２連勝だけどね」 俺は９連敗だって聞いたけどな。 しかも一回はなんでそうなったのかわからんが、リンボーダンスだと聞いたぞ。 #不知火に落ち度はない

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「信じてないでしょその顔。ちゃんと勝ったんだからね」 「競技言ってみ？」 「マラソンと自転車レース」 お前の超々得意分野じゃねえかそれ！！ いけしゃあしゃあと体力だけなら負けませんみたいなアレじゃねえか！ よく受けたな夕雲。 #不知火に落ち度はない

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「あんときの磯風と長波の対戦データを元にしたからな。磯風と同タイプじゃねーと改装できねーわけよ」 「私が出ときゃよかったかなー？」 「やめとけ。お前とだと相性が相当悪いから９割負けだぞ」 「勝てるわよ！勝つわよ！負けても勝つまでやってやるわよ！！」 #不知火に落ち度はない

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滅茶苦茶タチわりぃがそのガッツはすげーよな、陽炎。 あれだけデタラメなもん見せられて、勝つっていえる根性は大事だ。 そのままのお前でいるように。 「それよか、お前の目から見て浜風どう？」 「悪くないわね。仕上がりが楽しみって感じ」 #不知火に落ち度はない

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「アドバイスがあるとしたら？」 「腰が引けすぎてる。ちょっと貸してマイク」 あ、おいおい。 「聞こえるー？ 浜風？ OK、お尻振りすぎよ！ おっきいお尻ふりふりしすぎ！！」 わーお。同性からのツッコミキター。 工廠課連中これには前かがみだー。 #不知火に落ち度はない

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「大っきい胸もーちょっと張って！！！ そーよそう！！ お尻引っ込めて足もっと開く！！」 遠目で動揺してた浜風であるが、陽炎の言葉になにやら言い返しながら従う。 「そしたら思いっきりスロットル上げて曲がってみて！ 胸バランサー使いなさい！！！」 #不知火に落ち度はない

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すげー勢いで言いまくる陽炎。 俺が言ったら１００パーセクハラで訴えられるよなこれ。 「おやっさん、どう？」 「陽炎嬢ちゃんナイスアシスト。磯風と比べて遜色ねえ速度だ」 「でっしょ？ どうしてあーいう指示出してなかったのよ」 「出したら俺リンチに合うから」 #不知火に落ち度はない

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「んなわきゃないでしょーが。第一私んときは平気で言うくせに」 「お、言ったっけ？」 「『ちんまい胸張ってやれ』って言ったのよこのヒゲ」 「そいや言ってたな。スパッツ履いてんだから足開けとも」 「めっっっっちゃセクハラだからねほんと」 性別陽炎だからセーフです。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「じゃ、的出すか」 「はいよ。今から射出するからロックオンしてみろって伝えろ」 「OK。浜風、的出すから回りながら撃っちゃって！」 回りながらとは言ってねえけどな。難易度上げた状態ならよりやりやすい。 実戦に近い感じになるし。 #不知火に落ち度はない

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「飛行的用意ー！」 指示を出す。 演習エリアに仮想の航空的が飛んでいく。 なお、浜風の艤装の実弾は抜いてある。ロック速度とかの測定だしな。 #不知火に落ち度はない

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「え、なにちょっと！？ え、ロックが早い？ 待って待って落ち着きなさいよ！」 陽炎が耳を抑えてわめき出す。 想像通りの反応だ。 「どういうことなのか説明！」 「はい。実況席に戻ります。聞こえるか浜風」 『聞こえてます！ 何なんですかコレ！』 #不知火に落ち度はない

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「OSとパーツ乗っけかえてフォーカス速度上げてんだよ。その気になりゃ砲撃もギリ落とせる」 『そんな無茶誰がやるんですか！』 「磯風」 『磯風ー！ 帰ったら覚えてなさい！』 言いながらも順調なようだ。 円軌道を取りながら仮想の的をロックし、撃破データを送ってくる。 #不知火に落ち度はない

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「データ見ながらじゃないと何やってるか分かりづらいわよねあれ」 飛行してる仮想的を示しながら、陽炎は息を吐く。 「まーな。だが、がすがす落としてる。流石に秋月型とまではいかんけど、性能はかなりのもんだ」 「磯風のデータ見せて。…へー、磯風より多くないこれ？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「多いぞ。浜風対空性能の方が優れてるからな。世話になることあったんじゃね？」 「あるわねー。砲撃はあんまり当てられないけど、上の的なら結構当ててくれるし。防御に徹してくれるから」 「性格だな」 基本、浜風は相手の撃墜より防衛向きである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「おかげで私は前に出られてラッキー、にへへ」 「磯風と二人で突撃やめれ。修理費いくらすると思ってるんだ」 根っからのアタッカー二名だ。ダブル猪とも言う。 「お前ら仲いいの？」 「そんなに？ あっちが前に出るから私も前に出るのよ」 編隊指導が必要だなこりゃ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「というか磯風って、あんまり言うこと聞かないし」 「あいつ割とそうだよな。シメに行くなよ」 「しーなーいーわーよ、人何だと思ってんの。先駆けはもらった！とか言うのあの子」 「そしてお前はさせまいと前に出ると」 「そーいうこと。ほっといたらどんどん前に行くから」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「浜風や浦風が居ると引き止めてくれるんだけどね。あと神通教官が居るときは例外」 「神通相手だとやっぱ聞くか」 「えーと……言っていい？」 「内緒にしとくけど、なんかあるの？」 「オッケー。ホントに頼むわよ」 つまりよほどのことがあったらしい。 #不知火に落ち度はない

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「磯風が前に出すぎたら、神通教官が前に出るでしょ？」 「おう」 「直撃弾避けないで前に出てから、反撃してたの」 「マジ？」 「報告行ってないでしょそっちに」 「……ないな」 軍規違反である。内緒にしろって言われたけど。 思いっきり軍規違反である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「だからそこは深く反省したんでしょね。５つ前の作戦ぐらいの時、怪我してたのそれよ」 「普通に直撃食らったっつってたけどな」 神通も磯風も不知火も、伏せてたわけか。 そりゃあちょっと格好つけすぎな気がするぞ神通。 個人的に話をしておかねば。 #不知火に落ち度はない