不知火に落ち度はない５６（浜風）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「浜風に本性バレちまったな、おやっさん」 「おめえのせいだっての。どした、磯風は」 「あいにく非番でな」 「アホかてめぇ。ホイホイと試験者取っ替えんじゃねよ。延期しろっつったらいいだろが」 まったくごもっともな意見である。だが── #不知火に落ち度はない

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「そも共通パーツで互換性持たすってのがテーマだったでしょがおやっさん」 「そりゃそうだがな」 「コンパチ化も出来て取り回しが効くように、つってたしさ」 「データ取れてねえのに付けられっかっつの」 「データ取りのいいチャンスだろ」 「わあった。とんだ突貫仕事だ」 #不知火に落ち度はない

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「ちなみに２時間くらいかかる？」 そこで予定時間お聞きしてみる俺。 「２０分でチューニングまで済ませてやる。裏の喫煙所で一服してろ」 「あいよ」 流石だねおやっさん。しっかり仕様通りじゃん。 #不知火に落ち度はない

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「浜風嬢ちゃんは事務所で茶もらってきな。若い衆が菓子持ってくだろうから」 「あ、いえ。お気遣いなく。待ってますから」 まあ、わかる。 あの飢えた独り身ーズに囲まれるのは遠慮したいのだろう。 裏の喫煙所ってつまり、あっこだしな。 浜風もよく知ってるあのエリアだ。 #不知火に落ち度はない

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ちなみに俺は、とっくに自室へお引越し済み。 再びあの空間はおやっさん達工廠課のヌシの集会場に戻り、麻雀大会なんかが復興している。 浜風にゃ見せられませんな。ガチ賭博じゃまずいってんで、タバコ点棒してるようなのは。 ほとんど刑務所みたいなノリだし。 #不知火に落ち度はない

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「んじゃ浜風をよろしく」 「おうよ。じゃあ、危なくねえあたりで待ってな。浜風お嬢ちゃん」 「うかつにそのへんの触るなよ。ケツバーナーで溶接されるからな」 「えっ！！？」 思わず尻を押さえた浜風くん。 「するかすっとこどっこい。とっととヤサに消えやがれ！」 #不知火に落ち度はない

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さって、スパナが飛んでこないように逃げなきゃならんな。 「はいはい。んじゃ後でな浜風」 「あ、ちょっと。ホントに行くんですか！？ タバコ吸いに！」 そんな声を受けながら、俺は工廠課から一時退散するのであった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どうよ浜風。新型艤装は」 「聞いてませんよこんなの！！！」 そんなわけで演習場エリアに場所を移しての放送です。 実況はわたくし、無精ヒゲの妖精こと兵頭一也でお送りしております。 水面に立つ浜風の艤装はいくつかパーツに変更がされていた。 #不知火に落ち度はない

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あれがいわゆる、新型艤装の大元。 開発していたのは艤装のブーストパーツなのである。 多分砲とかそのへんだと思ってたんだろうが、予測とだいぶ違ったらしい。 「どうよ。浜風的な体感は」 「重いでーす！」 うん。それも知ってる。 元の艤装から２割増しの重量だからな。 #不知火に落ち度はない

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だが、パワーもその分上げてある。 最終的にスピードアップと火力アップの両方を満たすようにするつもりである。 「んじゃ、軽く慣らし運転。その後いくつか的飛ばすから狙って撃ってみ」 「はーい！」 さて、どうなることかしら。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『浜風、出撃します』 「おうよ。軽く感覚掴む感じでやってみそ」 言われるままに、浜風は水面を走り出すわけだが。 #不知火に落ち度はない

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『あ……え？ ちょ、ちょっと！？』 早速だが浜風の声が焦りを含むものに変わる。 水面を滑るように進むのだが、いつもよりも加速が早い。 試験艤装の動作に、戸惑っている様子である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『提督！ これ！ 変なんですけどー！』 「変ってどのへんが？」 もうちょっと具体的に頼む。 『言うこと聞いてくれません！！！ じゃじゃ馬ですよこれ！！』 「いや、じゃじゃ馬って」 確かに言う通り。急ブレーキ、急加速でがっくんがっくん浜風が水上で揺れている。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

おかげで揺れちゃまずいもんも大暴れ。 スカートの中身は本日白と判明した。 工廠課連中。野次馬するのはいいけど、お前らガン見してんじゃありませんよ。 「もうちょっと加速させてみろ。データ取りになんねえ」 「だとさ、浜風。ビビらずスピードあげてみ」 #不知火に落ち度はない

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『むちゃくちゃ言わないで下さい！！ もー！！』 と言いつつも浜風は速度を上げていく。 グン、と速度が跳ね上がるのがここからでも見える。 「やっぱ調整ピーキーなんじゃね？おやっさん」 「秋雲型のを参考にしてっからな。速度出てるだろ」 『加速しすぎですー！！』 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ってことは反映してくれたんだな。あの演習のやつ」 「あたぼうよ。設計までご丁寧に回してきやがって」 「ああ、あれな」 「くだらねえ設計図なら破り捨ててやろうかと思ったがな。署名欄みて肝冷えたぞ」 「夕張博士だろ」 そう。アウターヘブンからの技術供与なのだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

あの陽炎型vs夕雲型演習。 非公式ながらもデタラメーズのおかげで、貴重なデータが取れたしな。 その礼というのも兼ねての、夕張博士の介入だそうな。 しかもオーパーツじみたもんじゃなく、設計図に赤入れというやり方で。 本人は「一から設計しようよー」とぼやいたとか。 #不知火に落ち度はない

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「だが、ちとピーキー過ぎたか？」 「んや。慣れだよ。おやっさんの腕は信頼してる」 つまるところ、後期陽炎型艤装で追いつけない夕雲型に拮抗できる程度の性能を与えると、自然と加速度もああなるわけだ。 磯風みたいなデタラメな奴なら乗りこなせる、なんて調整じゃない。 #不知火に落ち度はない

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なお、磯風の方はというと、適応スピードがやたら早かったが、注文をつけてきやがったわけで。 曰く── 「艤装を白く塗り、加速度をもっと上げてくれ」 とのこと。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それトールギスっていわねえか磯風、と言った所。 「殺人的な加速だ！！ とか言いたいのだ。頼む司令」 もちろん俺はNGとともにデコピンを差し上げた。 お前は何処の火消し屋になるつもりだ。 自爆コマンドとか乗っけるぞ艤装に。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それに艤装の加速スピードで殺人的Gかかるような仕様にしません。 そんなんは島風型とかの特殊艤装でじゅーぶんだし、そういう特殊艤装の運用するような気ありません俺。 NGを出された磯風は不満そうに口をとがらせており、だがビームサーベルぐらいはと食い下がってきた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

んなもんあるわけなかろうが。お前は何ガンダムになるつもりだ。 お前にはとっくに接近武器あるでしょうが、ということで納得させるのは苦労した。 誰だあいつにガンダムWとか見せたの。 しかも主人公側じゃなくて、敵側に感情移入しとるではありませんかよ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「速度にノッたらだいぶ身体が安定してきたな」 「だな。スカート舞い上がりっぱなし」 「何処見てんだアホ」 ごつんと一発食らってしまった。 軽いジョークですしおすし。 『今なんか言いましたよねー！』 やっべ聞こえてた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それより円軌道運動できるか？」 『難しそうですけど……やってみます』 加速とブレーキ。もともとそのへんのコントロールには長けてる浜風だ。 体幹バランスも神通教室により、整ってきてる。 結構な加速度アップでも支えきれる体幹はもうある。 #不知火に落ち度はない