日向倶楽部世界旅行編第41話「黒薔薇の騎士」

料理大会で料理の心を目の当たりにした日向達。一方その裏で、那珂の下を離れた野分は、長門と共に旅を始めていた…
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三隈グループ @Mikuma_company

だが地面に押し付けられ、子供達に馬乗りにされた私の身体はこれっぽっちも動かない、大はしゃぎで私の身体を弄る彼等が動くたび、土埃が私の口や目に入る。 「こんなの、ううっ…な、那珂さん…」 ここは路地裏、表通りは遠い、私は揉みくちゃにされながら、来るはずのない助けを呼ぶ。

2018-04-03 21:33:32
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するとその時、黒い薔薇の花びらが、私の目の前に落ちてきた。 それと同時に子供達の動きが止まり、私から離れた。 「…よう、大丈夫かい?」 倒れていた私に、くぐもった男の人の声と共に大きな手が差し伸べられた、私はそれを掴み、ゆっくりと立ち上がった。 「あ、ありがとうございます…」

2018-04-03 21:35:29
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礼を述べて顔を上げる、するとそこには、バケツ…そう、バケツみたいな人がいた。 「ば、バケツのお化け…」 「おいおい、確かにバケツに見えるが、そこまで言う事無いぜ」 バケツ…正確には黒いヘルメット…いや、兜。黒い兜と黒い鎧を着た、ロボのような騎士のような人がそこにいた。

2018-04-03 21:37:28
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戸惑っていると、騎士の人は私の身体についた土埃をパッパと払う。 「怪我はないかい?お嬢ちゃん」 「だ、大丈夫です…ッ!」 肘に痛みが走る、どうやら地面に叩きつけられた時、擦りむいたらしい。 「おっと、ちょっと待ってな…」 すると騎士の人は、何処からか小さな箱を取り出した

2018-04-03 21:38:33
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そしてその人は、手際よく私の傷を消毒 「染みるけど我慢してくれよ…よし。」 手際の良い手当て、あっという間に私の肘にはガーゼや包帯が巻かれた。 「ありがとうございます…」 私は涙を拭いながら礼を述べた、傷が痛いのもそうだが、異国の地で突然襲われ、とても怖かった。

2018-04-03 21:39:33
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そんな私を、騎士の人は慰める様に言った 「怖かったろうな…この辺は治安が悪い、嬢ちゃんみたいな日本人はよく狙われるんだ。」 「はい…でもどうしてここを…」 「通りすがりさ、手を引かれてったの見て、もしやと思って尾けて来たんだ。」 騎士の人はそう言うと、私に背を向けてしゃがんだ。

2018-04-03 21:40:35
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「乗んな、泊地なら安全だから連れてってやるよ」 そういう事らしいが、おんぶされるのは恥ずかしいので私は断った。 「そうかい?良いガッツだ。ならついてってやるよ、危ないからな」 「あ、ありがとうございます…」 「ハハハ、気にしなくて良いぜ、俺も泊地に用があるからさ。」

2018-04-03 21:41:56
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騎士の人は陽気な声でそう言って、私の財布を差し出した。 「これ嬢ちゃんのだろ?中身は無事かい?」 「は、はい、ありがとうございます…」 「よかった、じゃあ行こうぜ。」 彼は振り返り、私の前を歩き始めた。 その人の背中は私の倍以上大きい、とても強そうな背中だった。 〜〜

2018-04-03 21:43:03
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〜〜 泊地の食堂で長門さんを待つ間、私は騎士の人に生姜焼き定食を奢ってもらっていた。 「もぐもぐ…すみません、ご飯まで…」 そう言いながら、私はたっぷりタレのついた豚の生姜焼きと白いご飯をかきこむ、ドッと疲れた為か、いつもよりご飯が美味しく感じる。

2018-04-03 21:44:31
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「良いって事よ、さて、俺も食うかな」 そんな私を見て騎士の人は笑うと、自分も大盛りのたぬきうどんをテーブルに置き、バケツの様な兜を脱いだ。 「いただきます…と、美味そうだぜ」 兜を脱いだ騎士、金髪で少し太った顔つきの男の人は、大盛りのうどんを飲むように平らげていく。

2018-04-03 21:45:29
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「このタウイタウイでは先週料理の大会があったらしい、ここの食堂の料理人も出たそうだぜ。」 「そうなんですか…」 「俺も出るつもりだったんだが、日付を間違えちまってな…結局食べるだけだ、ハハハ」 騎士の人はもりもりうどんを食べ進める、大柄な体型は鎧のせいだけではないらしい。

2018-04-03 21:46:37
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と、それが半分ほど無くなったところで、騎士の人は私の方を見て言った 「そうだ嬢ちゃん、腕の立つ奴知らないか?」 「腕の立つ…?」 キャベツをはむりながら私は聞き返す 「要するに強い奴さ、一緒に化け物退治の仕事をしてくれる奴を探してるんだ。ワタリ艦娘とかだと、適任かもな」

2018-04-03 21:47:38
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そこまで言うと、彼はまたうどんを平らげ始める。強いワタリ艦娘、心当たりならあった。 「心当たり…あります」 「本当かい?是非教えて欲しいな、礼は弾むぜ」 彼がそう言うと、その心当たりがやってきた。 「やれやれ、はぐれたと思ったら全く…」 「す、すみません…」

2018-04-03 21:48:37
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心当たりに、長門さんに私は謝罪の言葉を述べる……両手にお箸と茶碗を添えて。 そのやり取りを終えると、騎士の人が空になった丼を置いて長門さんの方を見た 「おお、お連れさん来たみたいだな、良かったぜ」 「連れが世話になったようだな…礼を言おう。」 「良いって事よ、俺だからな」

2018-04-03 21:49:55
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彼はそう言うと、空になった食器を返却口に戻し、戻って来た。 「それで嬢ちゃん、心当たりってのは?」 騎士の人の言葉に、私はご飯を食べながら長門さんの方に目線を向けた。 「もぐもぐ…この人です…もぐもぐ…」 「なるほどこの人か!確かに綺麗で強そうだぜ」 「ん?何の話だ」

2018-04-03 21:50:48
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首を傾げる長門さんに、私は事の次第を話した、勿論手にはお箸とお茶碗…だってご飯が美味しいんだもん。 「…なるほど、詳しく聞かせてもらえるか?」 「おう、じゃあ話させてもらうぜ。」 騎士の人は、長門さんに椅子へ座るよう促しつつ話し始めた。

2018-04-03 21:51:39
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「実は、ここから少し離れた所で怪物が出たという話があったんだ。」 「怪物?」 「そうだ、人を食う恐ろしい化け物だとか言われていた。」 本当なら怖い話 「だがそれを見たっていう村はまあ…田舎なんだ、迷信深い地方のな。だから警察やら泊地やらも相手にしてないらしい。」 「なるほど…」

2018-04-03 21:53:40
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怪物といえば深海棲艦かな…と、私がご飯を食べながら艦娘らしい事を考えていると、騎士の人は続ける。 「でまあ、嘘なら良いが本当なら困った話だ、だから俺が退治してやろうと思ったんだが…」 「一人では厳しいと?」 「ああ、一人だともしやられた時、そいつの事を伝えられないからな。」

2018-04-03 21:54:35
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二人以上いれば、自分がやられても証拠を持って泊地などへ報告出来ると、そういう事らしい、だから探してたんだ… 「艦娘なら深海棲艦…要は化け物の相手も慣れてると思って、こうして泊地まで探しに来たんだ。」 「なるほど」 「どうだ?報酬はそっちにほとんど渡す、手伝ってくれないか?」

2018-04-03 21:55:39
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彼がそう言うと、長門さんは何の躊躇もなく頷いた。 「うむ、良いだろう。正義を為す者としてこの長門が手を貸そう、よろしく頼む。」 「サンキュー、俺も聞いた事のある戦艦娘が味方なら心強いぜ。よろしくなナガト。」 二人は握手を交わし、仕事の仲間となった。

2018-04-03 21:56:44
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「おっと…そうだ、嬢ちゃんの名前は?」 「あっ…野分です、私も艦娘です。」 「ノワキ、カッコいい名前だな、よろしくだぜ!」 ご飯で手の塞がった私に、騎士の人は握手の代わりにガッツポーズを見せた。 「…そうだ、そちらの名前を教えてもらえるか?」 「おお、そうだったな…」

2018-04-03 21:57:31
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長門さんが訊ねると、騎士の人は立ち上がり、左胸に右の拳を当てた 「俺は黒薔薇の騎士、ローズハルト、真の騎士を目指して旅をしている。得物はこのハルバードだ、艦娘ほどじゃあないが、戦いには自信があるぜ、よろしくな。」 こうして私達は、この黒薔薇の騎士と行動を共にする事となった。 〜〜

2018-04-03 21:59:35
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〜〜 その日、私達はローズハルトさんが依頼を受けたという村に向かった。 「怪物は森の奥だ!俺は確かに見た!信じてくれ!」 こんな風に錯乱して訴える村人を宥めつつ、私達は怪物の情報を集める。 怪物に対して懐疑的な人も多かった為、煙たがられながらの情報収集だった。

2018-04-03 22:01:38
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「うむ…情報がなんともあやふやだな」 集めた情報はどれもぼんやりとしたもの、学問の世界に持っていったらバカにされそうなものばかりだ。 「一応話は聞けたが、森の中にいるっつってもなぁ、これじゃあ絞りきれないぜ」 「だが何もしない正義はない、とりあえず近くから探していこう。」

2018-04-03 22:02:38
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私達は長門さんの提案により、とりあえず村の近くの森をぐるりと探索した。 もし見つかればよし、見つからなくとも本腰を入れた捜索の足がかりになる。 だがこの日は特に何もなく、空がオレンジ色になった頃、私達は村へと戻って来た。 「成果無しか…」 「もっと奥に行かないとダメだなこりゃ」

2018-04-03 22:03:42