140ssログ2月、3月

石かり、薬宗、髭膝ログ
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やまたに @mw_snc

つるぎを握る。かつての主を守るために。かつての主の死にゆく様を見るために。そう決めてきたことは、まさしく水の流れに消えた。彼は生きる。花緑青の海を越え、鮮緑の大地を走る。そこに春山の影はなくとも。金色が、触れてくる。よかったね、と頭を撫でる。赤色を視界から消すように。(髭膝)

2018-02-06 17:10:49
やまたに @mw_snc

はらはらと落ちる涙は、自分しか知らなくていい。泣く幼子からは岩融が隠してくれている。死ななかった。小さく届く声。生きている。うんうん、と髭切は頭を撫でて抱き締めて。消え行く赤色を見た。彼が生きている歴史で、曽我の物語は紡がれるだろうか。それに気付くのは自分だけでいい。(髭膝)

2018-02-06 17:19:12
やまたに @mw_snc

もたれたのは少しの間。けれど、忘れることない年月。義経公はすごいのだぞ。弟が語る。このあとの壇之浦ではな、ひゅーんひゅーんと船を越え。楽しげに語る。語る。本当は、彼らと語り合えればいいのだが。そうだねぇ。慰める髭切はこそりと思う。僕にだけ語るお前も悪くないと思ってごめんね。(髭膝)

2018-02-07 06:54:00

攻めに逃げてもいいよって言われたら

やまたに @mw_snc

夢の世界へ逃げ出す前に、早く出て来てくださいな。宗三は、ね、と微笑んだ。伸ばされた細い指が、黒い前髪を擽る。腕の中へしまいたいのなら、今の内ですよ。そういう癖に今度は、とん、と肩を押して突き放すのだ。どんな返事をしてやろうか。薬研は腕を掴むと、浴室にふたり閉じこもった。(薬宗)

2018-02-07 17:49:05
やまたに @mw_snc

逃げていい。それは、彼の優しさだろうか。だとすれば、僕らは本当に価値観が違うのだ。青江は呆れる。逃げるなんて情けないところを見せられる性質ではないのだと、彼は知らない。知られたくない。だから青江は、平気な顔を作って笑う。逃がしたくないと言ってみなよ、恋人のことだろう。(石かり)

2018-02-07 18:00:51
やまたに @mw_snc

逃げる時間を稼ぐようにゆっくりと湯を浴びて、それから髭切は部屋に戻る。さて、弟はいるだろうか。些細な不安は、すぐに吹き飛んで。戻るのが遅いぞ、兄者。ゆらゆらと揺れる瞳。兄者が、俺を嫌で逃げたのかと。落ちる雫。ずっと待っていた冷たい体を、抱き締めた。(髭膝)

2018-02-07 18:09:55

恋然り

やまたに @mw_snc

こころを持った。持ってしまった。痛む心臓を押さえて青江は笑う。体を持った。口を持った。伝えたい言葉は、そこから出ていって。ねぇ、君が好きだよ。御神刀には届かないかもしれないね、そんな予防線を彼はあっさりすり抜ける。私だって、愛しているよ。心が叫ぶように、君は告げる。(石かり)

2018-02-11 09:35:47
やまたに @mw_snc

いしきりまる。愛しい声が呼ぶ。名前で呼ばれるようになったのは、いつからだったか。御神刀、大太刀、三条さん。そこから感じる距離を詰めたくて、随分と空回りしたものだけれど。石切丸。再び声をかけられて、石切丸は応える。なんだい、青江。はにかむ顔が、なお愛らしいと。(石かり)

2018-02-11 09:48:11
やまたに @mw_snc

しずかな夜に、君と密会。楽しいねぇ、とはしゃぐ石切丸は可愛いらしいけれど。と、青江は周りを見回す。なにせ密会なのだ。見つかっては意味がないが、同行者は隠蔽も索敵も低いのだから。青江。手を繋がれる。今は待って。集中できないと告げれば、抱き締められて。私だけ見ていて欲しいな。(石かり)

2018-02-11 09:58:04
やまたに @mw_snc

かみさまが、笑う。お前が戦いに行くと聞いて、大丈夫かと思ったけれど。その言い草に、石切丸は苦笑して。人々のためだからね。そう答えたのに。丸亀の子は可愛いね。見てきたような、いや、位の高い神には見えるとしても、そんなことを言うものだから。私のだよ。知っていると、笑われる。(石かり)

2018-02-11 12:09:11
やまたに @mw_snc

りん、と鈴の音。その瞬間、清められる空間に、青江は目を細める。流石だねぇ。青江もね、払ってくれてもいいんだよ。石切丸の拗ねた声に、嫌だと笑う。君の空間が安心するんだよ。そう言えば、少し機嫌がよくなって。気を休めてもいいと思える場所だからね、君の隣は。ほらまた鈴の音が弾む。(石かり)

2018-02-11 12:21:31

魔女♂の子育て

やまたに @mw_snc

蜥蜴の尻尾に蝙蝠の牙、甘草に辰砂。青江は鍋の中に砕いたそれらを入れていく。ああ、そうだ。今日は雷獣の髭でも貰おうか。ゴロゴロとなる空に思いついて家から一歩出れば、子供が一人、倒れていた。ねぇ、君。声を掛けると、紫色の瞳がむくりと顔を出して。食べるものはないかい。不躾に、言った。

2018-02-12 23:59:10
やまたに @mw_snc

その瞳の色も、この森の奥に子供が一人でいることも、彼が人ではない証だろう。もぐもぐとおにぎりを頬張る子供に青江は思う。いや、そもそもが、だ。人間ならたちまち倒れる薬をおにぎりに入れてある。それを五つめだ。間違いないだろう。おかわりはないのかな。子供がこれほど食べること自体が変か。

2018-02-13 00:02:13
やまたに @mw_snc

君はどこから来たんだい。問いかけに子供は首を傾げる。君は何者かな。反対側に首が傾く。じゃあ、君の名前は。子供は暫し考えて。君の名前は。鸚鵡返し。青江だよ。先に名乗ると、こいし、と、とうとう答えた。小石。石の精霊だろうか。ならば無下にするのはまずかろうと、思ったのが、いけない。

2018-02-13 00:54:30
やまたに @mw_snc

鉱石や宝石は術を入れるのに丁度いいのだ。機嫌を損ねてはいけない。だから、優しく青江は尋ねた。君はこれからどうするの。子供はにっこりと笑って、青江のごはんは美味しいから、ここにいたいな。さて、それはどうしたものだろう。笑顔のまま固まった青江に、子供は気付かないようだった。

2018-02-13 00:59:12
やまたに @mw_snc

住処まで送っていくよ。帰り方はわからないね。ごはんの作り方を紙に書こうか。私の読める文字で書けるのかい。親御さんの許可がないとね。私は人や獣ではないんだよ。ええと、あのね。青江。いや駄目だろう。青江。あの。青江。きらきらした子供の目に、魔女も悪魔も勝てるわけがないだろう。

2018-02-13 01:06:31
やまたに @mw_snc

押し掛けた子供との生活は、めまぐるしく過ぎて。いつの間にかすぐ下に来ていた頭は、同じになって、通り越して。青江。低い声が囁く。瞳の強さだけは変わらずに。ねぇ、青江。ずっと、ご飯を作ってくれるかい。使い魔にでもなればいいかな、と、頷いた。森は暗雲に囚われた。

2018-02-13 12:52:56

バレンタイン

やまたに @mw_snc

御神刀なんて、と青江は苛立ちを移すようにチョコを刻む。誰彼構わず優しい彼は、誰彼からとチョコをもらっている。積み上がる山に目を輝かせて。すごいねぇ、とはしゃぐから、青江も凝ったものを渡さなきゃいけない気がして。ああもう。オーブンに火を入れた。誰にも負けないチョコになれ。(石かり)

2018-02-14 07:20:53
やまたに @mw_snc

流れるチョコをバナナに絡める。開けた口に放り込むと、もぐもぐと咀嚼する。薬研、美味しいですか。おう。今度は宗三にマシュマロが。とろけた甘さが美味しいと表情を緩めれば、口の端についていたらしいチョコを薬研が舐め取って。お前も美味い。そんな甘ったるいことをいう。(薬宗)

2018-02-14 07:25:58
やまたに @mw_snc

口付けは甘かった。とろりと溶けたそれをくちゅくちゅと言わせながら這い回る舌は、普段されるがまの弟のもので。珍しいと甘受すれば、唾液の味だけになる頃に顔が離れた。赤い顔、潤んだ瞳、漂う香りはチョコか体臭か。どちらにしろ、与えられた甘味を口にしようと髭切は甘さの残る唇を舐めた。(髭膝)

2018-02-14 23:39:34
やまたに @mw_snc

媚薬か普通のチョコかって選ぶやつやるよー(昨日眠すぎて諦めた)

2018-02-15 06:50:40
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