140ssログ2月、3月

石かり、薬宗、髭膝ログ
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やまたに @mw_snc

彼の周りにはひとが多い。歌仙君、薬研君は友人だったか。脇差は皆と仲がいいね。打刀の世話になれているのも脇差ならではだろうか。悪いことではないはずなのに、隣を暖めて欲しい時が確かにあって。石切丸は、話し途中のその体を抱きこんだ。返してもらうよ、私のだからね。(石かり)

2018-03-27 12:16:42
やまたに @mw_snc

彼に呼ばれたとき、薬研の顔色はすぐに変わる。怒られれば泣きそうに、誉められれば誇らしげに。それは兄である彼にしか見せない顔だ。見た目相応の、短刀の顔。僕には見せないくせに、と水色の髪を睨んだ。彼は、困ったように笑うばかりだったけれど。(薬←宗)

2018-03-27 17:43:53
やまたに @mw_snc

彼の隣に、宗三は似合う。お伽噺の騎士とお姫様みたいだね、と言った乱の大福は奪ってやったけれど。豊臣で、彼らはどんな話をしたのだろうか。再刃された彼とどんな話をするのだろうか。俺には出来ない話を。恨みがましく水色の髪を見つめる。彼は、呆れたように肩を竦めるだけだ。(薬→宗)

2018-03-27 17:49:37
やまたに @mw_snc

私を挟まずに素直になることですな!(一期)

2018-03-27 17:50:49
やまたに @mw_snc

石切丸の朝は早い。僕も遅いつもりではないけれど、と青江は枕元へ置かれた花と文を見る。それは初めの日から、絶えず贈られているものだ。ただ、平安の作法に慣れない実戦刀に読めるように、内容は簡潔で。おはよう、私の愛しい子。歌でもなんでもないそれが、朝からとても愛しくなるなんて。(石かり)

2018-03-28 12:35:07
やまたに @mw_snc

目覚めたのは昼前。しまった、と膝丸は兄の腕から抜け出した。源氏の重宝が怠けていると思われたくはない。と、枕元の文に気付いた。後朝の歌とは兄らしくない。微笑ましく思えば、花の代わりに鴉の羽が落ちて。朝寝をするには、それじゃ足りないかい。兄が獰猛な獅子の瞳でこちらを見た。(髭膝)

2018-03-28 17:38:57
やまたに @mw_snc

花が開く。その光景に薬研は頬を緩めた。なによりも美しいその花を、見れるものは少ないのだと知っている。それが、一国と引き換えだということも。あなた、僕ばかりじゃなくて桜を見てくださいよ。この花が綺麗なもんでな。もう。呆れる口調で、けれど宗三は穏やかに微笑んだ。ほら、綺麗だ。(薬宗)

2018-03-31 07:15:22
やまたに @mw_snc

花が舞う。待って、待ってよ。青江は慌てて、花弁を掴んだ。無駄だとわかっても、少しでも隠したくて。違うんだ。言い訳も、花に紛れ。どうして。青江は焦る。この体は、嬉しいと花を舞わせるんだろう。どうして、目の前の男の嬉しそうな顔を睨む。君に好きだと言われて、こんなに嬉しいんだ。(石かり)

2018-03-31 07:19:56
やまたに @mw_snc

散らされた花の痕を弟は辿る。ここにも、ここにもと指を這わせて夜の名残を思い出す。楽しいかい。髭切の声に迷わず頷いて。兄者に愛された証を、幸せ以外のなんと呼ぼう。そんな可愛いことを言うものだから、髭切は夕べ散々触れた体を抱き締めた。この春山を花の野にしたいなんていけない夢だ。(髭膝)

2018-03-31 07:37:58

みなもとのそうけん

やまたに @mw_snc

みえないものを見ないということは、実はひどく難しい。人間の裏側を知らないとは、血を浴びる武器にあって奇跡だろう。何故主はこうしたのか。何故こうできるのか、どうしたって考えてしまうから。兄者。笑う君が愛しい。僕がお前をどうしたいと思ってるのか、ちっとも考えてくれなくても。(髭膝)

2018-02-04 09:06:07
やまたに @mw_snc

なんどもなんども繰り返す。俺の名は。えーとね。どれだけ繰り返せば、兄は覚えてくれるのだろう。そのくせ、と膝丸は歪んだ視界に気付かないふりをした。武士の刀が情けないと思うのに、それでも。お前は泣き虫だねぇ、膝丸。こんな時ばかり正解を当てる兄でないと、笑うこともできない。(髭膝)

2018-02-04 09:10:55
やまたに @mw_snc

もみじを一つ、髭切は指で弄ぶ。赤い雨のように降るそれは幽玄なのに、落ちてしまえば小さく可愛い。お土産ですか、髭膝さん。尋ねる短刀の頭を撫でて。その髪に紅葉を飾った。あげるよ。あまり、言いたくないけれど。弟は春が一等似合う。あの薄緑に、梅の花でも贈ろうか。(髭膝)

2018-02-04 09:26:58
やまたに @mw_snc

とっくに、と、髭切は笑う。とっくに僕は、お前にあげたのに。わからない、と顔に描く弟に、教えてはあげないけれど。安綱の刀を兄弟と呼ばず、共に鬼を倒した刀を双剣と呼ばず、ただ実在すら曖昧な伝説を一具と呼ぶ。それが、僕をあげること以外のなんだというの。髭切、僕の選んだ名だ。(髭膝)

2018-02-04 09:36:34
やまたに @mw_snc

のんびりしよう、と兄は言った。今、寝息を立てている兄は。それに抱き込まれた状態で膝丸は、何故、と思う。寝るなら、上掛けだけでも。それに、俺の頭で腕が痺れぬか。おろおろと落ち着かずにいれば、兄がふっと目を開けて。嫌、と尋ねた。それに、否と言えるものか。諦めて、力を抜いた。(髭膝)

2018-02-04 10:41:24
やまたに @mw_snc

そろいの装束は、兄弟だと認められているようで嬉しい。けれど、たまに困る。上着とズボンは黒が膝丸で、シャツと靴下は黒が髭切で。洗濯係からは早々に纏めて渡すことにされた。さて、と、膝丸は忘れっぽい兄を見る。なあに、えっち。とからかうので。あのな、兄者、それは恐らく俺の下着だ。(髭膝)

2018-02-04 10:45:29
やまたに @mw_snc

うえを見上げる。似たような顔の、金色の髪が揺れていた。兄者。うん。昼間だが。駄目かい。駄目とかではなく。いいのかい。そうも言っておらん。我儘だねぇ。俺が悪いのか。押し問答の間にも、兄の指は布を一枚一枚取り除いていて。いつ、嫌だって言うのかな。そんなこと言うと思ったか。(髭膝)

2018-02-04 10:49:35
やまたに @mw_snc

けんを振るう。すぐ背後で弟も。その切っ先は腹の近くを通り抜け、髭切の刀もまた薄緑の頭上を通る。よく出来るな、と言ったのは誰だったか。何故出来ないのかと聞き返したのは弟だった。くるり、弟の背後に回る。ひゅん、と刃が翻る。まるでどちらが自分の太刀わからなくなっていく。一つの剣。(髭膝)

2018-02-04 10:53:28

双子の日

やまたに @mw_snc

ふれたのは、指だったか、体だったか、魂だったか。情欲の痕の残る体に膝丸は考える。なんとなく、離れ離れだと感じてしまうのは、夕べ散々繋がっていたせいか。兄者、さびしい。まだ夢の中にいる兄にこそりと零せば、ぱちりと開いた金色が腕の中に引き込んで。包む熱は、境を再び曖昧にした。(髭膝)

2018-02-06 08:39:57
やまたに @mw_snc

たどたどしく唇を重ねた。お前はいつまで経っても下手だねぇ。兄にそう言われるために。それが可愛いという顔をするものだから。触れ方も、愛の言葉も、表情ひとつすら稚児を装った。この大きい体にいつ飽きられるかわからないから。僕のために装うのが可愛いと、兄が思っていることを知らない。(髭膝)

2018-02-06 08:46:00
やまたに @mw_snc

ごごの微睡みをふたりで過ごす。うにゃうにゃと寝言を言う弟が面白くて、目を閉じるのが勿体ないなぁと髭切が耳を済ませる。にゃにゃ。また猫の子みたいな声を出して。そう思っていたというのに。あにゃにゃ。ふと、気付いてしまった。お前、ずっと僕のこと呼んでるの。早く夢路に行かないと。(髭膝)

2018-02-06 09:00:08
やまたに @mw_snc

のろけるから聞いて欲しい。大真面目に言われて、三日月は勢いに押されるように頷いた。まあ、暇だしな、と。それがまさか八つ時を越え夜に変わるまで終わらないとは思うものか。不意に、影が落ちて。兄者は今日、三日月と話してばかりだな。ほら、ほら、鬼が出るからそろそろ終わりにしよう。(髭膝)

2018-02-06 09:06:30
やまたに @mw_snc

ひめぎみにするように、優しく触れて、甘やかして。それを弟はむず痒いと笑うけれど。幼子にするように、柔らかく抱き締めて。兄者、俺は女子供ではないのだぞ。困ったように言われたから、髭切は違うと告げた。女より子供より大事にしたいの。弟だけに、そうしている。(髭膝)

2018-02-06 09:14:34

強者