甲野善紀さんの剣術における「居つき」についてのお話

9
甲野善紀 @shouseikan

たとえば、かの宮本武蔵が『五輪書』のなかでも「足の踏み方は、爪先を少し浮かして踵を強く踏むように…」と具体的に書いているのだが、現代剣道では、爪先立って立ち、それで床を強く蹴って前へ飛び込む動きを唯一無二の「正しい剣道」としている。

2011-04-09 19:43:00
甲野善紀 @shouseikan

しかし、これは武術においては素人の足捌きだ。現に、こうして思いっきり床を蹴って動く剣道でも、言葉の上では「居つくな」という事はよく知られている。

2011-04-09 19:43:29
甲野善紀 @shouseikan

この言葉を知っていながら、なぜ爪先立って思いきり床を蹴るのだろう。強く床を蹴るという事は、その瞬間「思いっきり居ついている」となぜわからないのだろう。

2011-04-09 19:45:02
甲野善紀 @shouseikan

また、現代剣道では、刀を持つ時、左手は柄の端(柄頭)ギリギリいっぱいに持ち、右手は鍔の近くを持って、左右の手の間を開けて持っているが、この一見合理的、「テコの原理も利いて使いやすい」という持ち方に落とし穴があることに、殆ど誰も気づいていない。

2011-04-09 19:45:29
甲野善紀 @shouseikan

もっとも、私も、大きなことは言えない。この事に、三十年以上も気づけなかったのだから。

2011-04-09 19:45:44
甲野善紀 @shouseikan

とは言え、私のような才能のない者ならともかく、何十万、いや過去をたどれば戦後でも何百万人もいたであろう剣道家のなかで、このことを気づいた人が、すくなくとも剣道関係の書籍、雑誌を通して一人も見出せないのは、どうした事であろうか。

2011-04-09 19:46:17
甲野善紀 @shouseikan

あらためて詳細に観察し直してみれば、江戸時代以前の剣術の伝書や、さまざまな戦闘場面を描いた絵、また『北斎漫画』のような当時の風俗を活写した絵などで、左右両手の間を離して、柄を持っている絵は、全体の二割あるかどうかだ。

2011-04-09 19:46:49
甲野善紀 @shouseikan

『北斎漫画』など、六組十二人の稽古人の全員が、長い竹刀の柄の鍔寄りを、両手を寄せて持っており、そのため、柄の先が左手からかなり余って突き出ている。

2011-04-09 19:47:16
甲野善紀 @shouseikan

こうしたことに注意を払い、研究をしたというものを、私は一例も読んだことがない。

2011-04-09 19:48:01
甲野善紀 @shouseikan

もちろん、昔の人の工夫が劣っていて、現代剣道のほうが研究が進んでいるというのなら、それは結構なことだが、どう考えてもそれが事実とは思えない。

2011-04-09 19:48:22
甲野善紀 @shouseikan

そして、私自身の体験として2008年の5月31日に、この「両手を寄せて刀を持つ」ということに目覚めて、二年三ヶ月近く経った昨年の8月10日、私の長年の夢というか、夢のまた夢であったことが実現した。

2011-04-09 19:48:54
甲野善紀 @shouseikan

それは、「真剣が竹刀に劣らぬ早さで変化させられるように使えないだろうか」という願いを超えて、「真剣のほうが竹刀よりも早く翻転させられるようになった」ということである。

2011-04-09 19:49:23
甲野善紀 @shouseikan

この動きは、4月4日にアップされたメールマガジン『夜間飛行』に動画配信されているので、御関心のある方は、以下のアドレスをどうぞ。http://bit.ly/i6yuVy

2011-04-09 19:49:57
甲野善紀 @shouseikan

現に自分で、それまで30年以上かかって出来なかったことが、刀の柄を両手を寄せて持つようになったことが基盤となって出来るようになり、私は、昔の人が刀を使っている絵が、ほとんど両手を寄せて持っている意味が氷解した。

2011-04-09 19:51:48
甲野善紀 @shouseikan

そして、両手を離して「テコの原理」も利くようにして持っている一見有効な持ち方の裏に限界があることも知ったのである。

2011-04-09 19:52:11
甲野善紀 @shouseikan

それは、両手を離して柄を持つと「腕や手が使いやすいから、使ってしまう」ということになり、そのため体幹部が単に「腕や手をサポートするため程度にしか使われていない!」という事に気付いたからである。

2011-04-09 19:53:13
甲野善紀 @shouseikan

「両手を寄せて刀の柄を持つと、手が使いにくいぶん、体全体が働き、真剣の構造の特性も生かせるため、竹刀よりも真剣の方が速やかに動かせる」という動きを、昨年秋、ある剣道の指導者講習会で実演したところ、その中の、何人かから、まるで幽霊でも見るような顔で見られた。

2011-04-09 21:57:54
甲野善紀 @shouseikan

この動きは、動画としては先ほど紹介したメールマガジン『夜間飛行』に簡単な解説と共に載っているが、詳しい解説は5月に学研から刊行予定の『武道から武術へ』-失われた術を求めて-に書いたので、そちらを御覧頂きたい。

2011-04-09 21:59:01
甲野善紀 @shouseikan

しかし、私の仕事は専従者は私一人。日常は様々な企画の相談や打ち合わせ、それらに関する雑用で、ほとんど稽古するヒマもないような日々を送っている。

2011-04-09 21:59:51
甲野善紀 @shouseikan

しかも、どう考えても武術に関する素質才能があるとは思えない私が、「剣道の専門家に驚きを通り越したような顔をされることが出来るようになった」という事は、現代剣道で言うところの「正しい剣道」に「根本的な問題がある」という事ではないだろうか。

2011-04-09 22:00:39
甲野善紀 @shouseikan

だからといって、もちろん私は自分の動きを「いい」とか「正しい」などとは思っていない。「正しい」という言葉は、私が最も口に出すことを憚る言葉である。

2011-04-09 22:01:09
甲野善紀 @shouseikan

だから、いままでも常に「前よりはマシな動きになった!」と言ってきた。

2011-04-09 22:02:08
甲野善紀 @shouseikan

ただ、それでも現代剣道の指導者の方々に驚いていただくことが可能になった。

2011-04-09 22:02:31
甲野善紀 @shouseikan

とはいえ、古の名人達人は、こんなレベルの動きではないだろう。こんな程度である筈がない!私が仰ぎ見るような古の名人の動きを天井の高さとしたら、私のレベルなど床に転がっていて、足で踏んだら「何かあったかな?」と思う程度のゴミくらいの高さだと思う。

2011-04-09 22:03:16
甲野善紀 @shouseikan

したがって、何か見つけて技が展開しても、その次、その次と、それを土台にそれを越えて進むことを目指している。

2011-04-09 22:03:34