日向倶楽部世界旅行編第45話「紅い瞳と疑惑の海」

単身大量の深海棲艦に挑む日向、特に苦も無く戦闘を進めるが、流石にしんどくなってきた頃、天から光が降り注ぎ、扶桑が降り立った。しかし彼女は深海棲艦に対し、敵意以外のものを向けており…?
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三隈グループ @Mikuma_company

「…日向、まだ、来るようです」 「なんだと?」 するとヒューガリアンから通信が入った 「深海棲艦、まだ来ます!」 「げっ」 日向が言われた方を見ると、またもや深海棲艦が大量に出現した。 「この数、昔を思い出すな…」 うじゃうじゃいる彼等に、彼女は思わず顔をしかめる。

2018-05-01 21:34:05
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そんな彼女の前に扶桑は立つ 「日向、貴女は船まで退がって下さい、その状態では戦えないでしょう」 「フッ、見くびるな…と言いたいんだが、まあそうなんだよな」 だが扶桑の言葉を認めつつも、日向は退がる素振りを見せず、ヒビの入った剣を抜いた。

2018-05-01 21:35:18
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「とはいえ、仲間を一人置き去りにするのは嫌なんでな、自分の身は守る、気にしないでくれ。」 そう言ってはにかむ日向を見て、扶桑は目を瞬かせる 「貴女…自分の事は随分怖いもの知らずですね」 「そうかな」 「…まあ良いでしょう、くれぐれもお気をつけて。」 「ああ」

2018-05-01 21:36:35
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日向の答えに、扶桑は呆れ半分頼もしさ半分で微笑む。だがすぐに深海棲艦のいる方をキッと睨み、海の上を飛ぶように駆け始めた。 「速いな」 「置いていきますよ!」 「おう」 日向も彼女の後を追って海の上を駆ける、するとすぐに深海棲艦は見えて来た。

2018-05-01 21:37:56
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「うじゃうじゃ居るな…」 日向はぼやきつつぽりぽりと首筋をかく、すると扶桑が先程と同じように、右手を彼等に向けて突き出した。 「扶桑?」 「しっ!」 日向が話しかけると、彼女は話しかけるなというジェスチャーを取る、武器もないし日向は黙って見てみることにした。

2018-05-01 21:39:13
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少し時間が経った、扶桑の方は特に何もしなかったが、深海棲艦はやっぱりドカスカと容赦なく攻撃を始めた。 「扶桑!来るぞ!」 「…ええ、そうですね…!」 彼等の砲撃を避けつつ二人は散開、日向はやれる事がないので回避に徹する。

2018-05-01 21:40:25
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そこへ深海棲艦の飛行戦力が襲来、二人に攻撃の手を伸ばす。 これに対し、扶桑は右手を空へ突き出し 「晴嵐、波紋群鳥!」 赤い光弾を放った! 光弾は空中で爆ぜ、無数の赤い光の鳥となった! 鳥達は深海棲艦の邪悪な飛行戦力をその翼で切り裂き、次々爆散させていく!

2018-05-01 21:42:05
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そして間髪入れず、彼女は深海棲艦の空母級と、それと群れるようなヒト型深海棲艦に狙いを定め! 「…!」 パァンと両手を打ち!合わせた!彼女の全身が淡く紅色に光る!そして! 「はぁぁぁぁっ!」 彼女は風を切り、海の上を疾走!深海棲艦の一団へ突撃する!

2018-05-01 21:43:12
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神秘的な光景だ!赤、紅、朱、そういった光の筋が、彼女の通り道に新たな水平線を作る! やがて深海棲艦のど真ん中に向け、扶桑は全身を勢い良くくねらせ! 「晴嵐、波紋嵐ッ!」 大回転ッ!!晴嵐の波紋、赤い光が旋風を巻き起こし、強いエネルギーが深海棲艦に叩きつけられる!

2018-05-01 21:44:39
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深海棲艦は消し飛んだ! 「あれが、晴嵐の波紋…」 巻き起された大波が引き、現れる扶桑の姿を見て日向は感嘆の息を漏らす。 するとまたまた深海棲艦が現れた。 「まだいるのか…」 日向は半ばやけくそにその方を見る、まだまだ結構な数がいた、内心扶桑がいれば終わるんじゃないかとか思った。

2018-05-01 21:45:41
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一方の扶桑は険しい表情で独白する。 (…何故、私の言葉が届かないのでしょう…彼等に何かが起きていると…?) 正面には深海棲艦、平和のインテリジェンスなどない、攻撃性を剥き出しにしたもの達がいる。 「…今は、倒さなくてはならないと…」 扶桑はそれに向け、両手を構え戦闘の用意。

2018-05-01 21:46:52
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だが突然!二人が交戦する前に、何者かが深海棲艦へ攻撃を行なった! 「なんだ!?同士討ちか?」 攻撃を行なったもの、それは…晴嵐!波紋とかではなく、艦娘の扱う艦載機である! つまり、艦娘が来たのだ! 「む…パトロール艦隊の到着はもう少しかかるはずだが…」

2018-05-01 21:47:57
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日向が時計とかを見ていると、今度は砲撃がバカスカと加えられた!そして、何者かが深海棲艦の一団へ突っ込み、その真ん中で暴れ始めた! 「なんだ?すごい奴がいるぞ!?」 日向はジッと目を凝らす、その者は艦娘!二丁の主砲を持ち、的確な攻撃を連発し、深海棲艦を次々と撃破していた!

2018-05-01 21:49:06
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「あれは艦=カタ…まさか横須賀の艦娘か?」 鮮やかな戦闘術に日向は感心する。 「あれは…」 そして扶桑も、彼女と同様に目を見開いていた、正確には艦娘の方に見覚えがあった。 二人がそんな風にしていると、今度は別の艦娘が二人その戦闘へ乱入、深海棲艦がゴミのように倒されていく。

2018-05-01 21:50:18
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その二人の艦娘は日向も見覚えがあった、一人は軽やかに海を蹴り、徒手空拳で深海棲艦を殴り倒す小柄な艦娘。 もう一人は大剣のような甲板を振り回し、深海棲艦を叩き潰す背の高い艦娘。 「あの二人は確か、親衛隊の…」 日向が驚いていると、通信が入った。 ーこちら那智大佐、援護するー

2018-05-01 21:51:28
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「那智大佐…?戦闘大隊のか!?」 日向が二重に驚いていると、今度は三隈から通信が入った。 「ひゅーちゃん、別方向から深海棲艦がね、ヒューガリアンに迫っています」 「何!?」 「…けれど、トラック泊地所属の艦娘が、何処からか迎撃に…」 「…あ?」 日向は困惑した。

2018-05-01 21:52:31
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同時刻、ヒューガリアンからは異様な光景が見えていた。 「一つ!二つッ!」 一人の艦娘…いや、獣といって良いほど激しい者が、深海棲艦の一団の中で暴れているのだ。 「五つ!六つッ!まだ、まだ足りないのよッ!」 その艦娘は爪のついた二丁の主砲で、深海棲艦を狩るように倒していた。

2018-05-01 21:53:47
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「ヘイヘイヘーイ!足柄ー!まだまだイマスヨーッ!」 その後方では、別の背の高い艦娘が紅茶片手に支援射撃をし、愉快に野次を飛ばしていた 「GOGOGO!イェーイ!…ア"ッ!ジャマダ!バカ!」 艦娘は寄って来た深海棲艦を砲撃で吹き飛ばし、一滴も溢れていない紅茶を飲む。

2018-05-01 21:54:48
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その光景に、ヒューガリアンの直掩についていた最上達が目を丸くしていると、船に通信が入った。 「あー…こちらブルネイ泊地、私は武蔵だ。豪華客船ヒューガリアン、現在パトロール艦隊と…その他大勢がそちらへ向かっている。」 「その他大勢…?」 三隈のみならず全員が首を傾げる

2018-05-01 21:55:51
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通信は続く 「…その他大勢というのは…闘技大会に出る為に集まった者達だ。皆肩慣らしが出来るなどと、喜び勇んで向かっている。」 「ええ…?」 「無論、私も混ざるつもりだ。ここまで持ち堪えてくれた主らには感謝している、後は我々に任せ、自衛に徹してくれ。」

2018-05-01 21:56:57
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日向達がリアクションを取る間も無く、通信は切れた。 その直後、ブルネイ泊地の方角から何隻もの船と、無数の艦娘やら何やらが現れた。 「うおおお深海棲艦じゃねえか!」 「早い者勝ちよ!闘技大会の前哨戦と行こうじゃない!」 彼らはまるで群がるように、深海棲艦の元へ突撃した!

2018-05-01 21:58:12
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「稼ぎ時だ!やるぞ野郎共!」「突撃ィィィィッ!!!!」「くたばれうすらナメクジ!」「沈んじゃえよ!」 罵詈雑言と共に弾丸などがぶちかまされる、深海棲艦達はまるで呑み込まれるように攻撃を受け、次々と沈んでいく! 「やっちまえー!」「撃て!撃て!撃て!」「ぶっ飛ばせや!」

2018-05-01 21:59:12
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気が付けば海の上は大乱闘の会場となっていた、海を脅かしていたはずの深海棲艦は、追われるウサギよりも脆弱な生き物として次々消えていく! 「私達は戻って大丈夫そうだな…」 すっかり蚊帳の外になった日向はひび割れた剣を収める、既に深海棲艦の迎撃がどうとかの話ではなかった。

2018-05-01 22:00:11
三隈グループ @Mikuma_company

そんな風にしていると、最初に乱入してきた二丁主砲の艦娘がこちらへやってきた。 「ふぅ、久し振りだな扶桑。」 長いサイドテールの髪に年季の入った顔、紫色のパンツスーツ、その姿に扶桑は声を上げてにこやかに笑う。 「貴女は…那智!やはり那智なのですね?」 「ああ、那智だ。」

2018-05-01 22:01:37
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那智と呼ばれた艦娘は懐かしむように微笑む。彼女は那智、横須賀鎮守府那智戦闘大隊旗艦那智大佐その人であり、彼女は横須賀における扶桑の友人でもあった。 「貴女がここに来ているなんて…一体?」 「うむ、ブルネイに向かう途中救難信号を拾ってな、利根姉妹もいた故、駆け付けたわけだ。」

2018-05-01 22:02:43